『The Last of Us Part II』には、約60ものアクセシビリティオプションがある。Naughty Dog史上もっともアクセシブルなゲームに

『The Last of Us Part II』には、約60ものアクセシビリティオプションがある。高コントラストモードからテキストの読み上げ機能まで。『The Last of Us Part II』はNaughty Dog史上もっともアクセシブルなゲームに。

Naughty Dogの最新作『The Last of Us Part II』は6月19日の発売を控えており、先月末には最新のゲームプレイ映像が公開。6月に入ってからは各種メディアによるプレビューが解禁され、進化したグラフィックや、前作よりも多彩かつ暴力描写の悲痛さが増したゲームプレイに焦点を当てた情報発信が続いている。Naughty Dogは、ゲームの主要部分を広く発信しつつ、メディアの個別インタビューを通じてゲームの違った側面も紹介。そうした宣伝活動の中で、同作に約60ものアクセシビリティオプションが備わっていることが明かされた。

開発元のNaughty Dogは、ディレクターのNeil Druckmann氏がダイバーシティ/多様性を強く意識しているほか、アクセシビリティにも力を入れているスタジオとして知られている。同スタジオが2016年にリリースした『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』では「アクセシビリティ」という設定項目が設けられ、取り組みの意図を開発陣が説明していた(Polygon)。そしてこのたび、海外メディアThe Vergeのインタビュー記事により、最新作『The Last of Us Part II』には約60ものアクセシビリティオプションが用意されていることがわかった。

アクセシビリティオプションの充実化は、色覚特性モード、文字の読み上げ機能、キーバインドの変更(キーの割り当て変更)など、視聴覚情報の伝達やゲームの操作に関わるオプションを備えることで、ゲームが招くバリアを減らす取り組み。身体的制約や各自が置かれた環境に関係なくゲームを遊べるようにすることが目標だ。より多くのプレイヤーに遊んでもらえるよう、SIEやマイクロソフトなど積極的に取り組んでいる企業は多い。

先述した『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』においては、右スティックをそれほど使わなくてもクリアできるよう、オプション以前の設計段階からアクセシビリティを考慮。またエイムや視点移動のアシスト機能、「ボタン連打」が求められるイベント時の操作を「ボタン長押し」に変更するオプションなど、過去作以上にアクセシビリティを意識したゲームになっていた。ボタン連打とボタン長押しの切り替えオプションは、採用するゲームが増えつつある。最近の大作でいうと、『バイオハザード RE:3』が当てはまる。

*『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』アクセシビリティに関する取り組みをフィーチャーした動画

『The Last of Us Part II』においては、さらに広い分野にわたりアクセシビリティオプションを用意しているという。ゲーム操作、視聴覚情報、移動・探索・戦闘の補助機能。視覚面では、UIのサイズ変更や字幕、色覚オプションといった一般的なものから、タッチパッドを使って画面の特定部分にズームインする拡大機能、敵と背景のコントラストを上げる高コントラストモードまで。高コントラストモードでは、背景を灰色/黒色、敵を赤色、味方を青色で表示することで、低視力の場合でも状況を把握しやすくしている。

聴覚情報による補助としては、メニューや読み物アイテムといったテキストの読み上げ機能、近くにアイテムやよじ登れる箇所がある際に音で合図してくれるオーディオ機能が例として挙げられている。そのほかコントローラーのボタン割り当て変更もあり。どのようなオプションが求められ、どのような形で実装するのが好ましいのか、スタジオとして入念なテストおよび議論を重ねてきたという。

Naughty DogのゲームデザイナーMathew Gallant氏は、デザインプロセスの初期段階から各種機能の実装を計画していたおかげで、ここまで多くのオプションを入れることができたと語っている。特にテキストの読み上げや高コントラストモードは、技術的なリソースを多く割く必要がある。そのため、最初から優先事項として計画に組み込んでいなけれれば、実現できなかっただろうと伝えている。アクセシビリティを意識したゲームをつくる上で、開発初期の段階からオプション実装を視野に入れておくことの重要性がわかる事例だ。

『The Last of Us Part II』は暴力のサイクルを描く作品であり、「比類ない緊張感と豊富な選択肢」の両立を目指していると説明されてきた。物語を伝える上では、そうした作品のトーンを維持することが重要。先述したGallant氏は、アクセシビリティオプションの適用によって作品のトーンが崩れないよう、できる限り配慮したと語っている。ゲーム本来の魅力を損なわず、それでいて幅広いプレイヤーが遊べるように、入念に計画されてきたことがうかがえる。

*5月28日に配信された「State of Play」。動画後半に約8分間のゲームプレイ映像あり

同作のような認知度の高いAAA級タイトルには、業界スタンダードとしての役割も期待される。『The Last of Us Part II』をきっかけに、採用例が増えるアクセシビリティ機能が出てきても不思議ではないだろう。Naughty Dogにとってもっとも野心的かつアクセシブルな作品となる『The Last of Us Part II』は、PlayStation 4用タイトルとして6月19日発売だ。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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