ゴアFPS『Serious Sam 4』のハーピー、乳首出てるか出てないか問題。有翼獣の乳房をめぐり激論勃発

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今年8月に発売を控える人気FPSシリーズ最新作『Serious Sam 4』。まずPC(Steam/Stadia)向けにリリースされ、Stadiaの時限独占期間終了後にPS4/Xbox Oneでも発売されることがアナウンスされている(関連記事)。過激なゴア表現に定評のある同シリーズだが、夏のリリースを控えた今、「ある描写」についてバトルが繰り広げられている。槍玉に上がっているのは、過去作から継続して登場している敵キャラクターの「Scythian Witch-Harpy(スキタイ魔女のハーピー、以下ハーピー)」だ。有翼の女性のような異形のモンスターで、シリーズを通して露出度の高いデザインを特徴としている。議論が白熱しているのはずばり「『Serious Sam 4』でハーピーの乳首は出てるのか、出てないのか」という問題である。

ことの発端は5月20日、Steamの『Serious Sam 4』ディスカッションページに投稿されたとあるスレッドだ。そのタイトルは「Did they seriously censor the Harpy?(ハーピーってマジで規制されたの?)」というもの(現在のスレッド名は変更されている)。投稿者はふたつの動画リンクを貼り、『Serious Sam 3』と『Serious Sam 4』におけるハーピーのデザインの変化について触れている。『3』のハーピーは双腕に翼をそなえる反面、胴体部分に羽毛がほとんどなく胸部が露出した状態だった。その際、乳輪ははっきりそれとわかるように描かれている。一方『4』の映像としてユーザーがYouTubeに投稿した動画のハーピーは、胸や胴が羽毛(あるいはウロコ)らしきものに覆われている。カップは完全に隠され、乳首は存在しないかのようなデザインだ。

Image Credit : Albert Appiah
『Serious Sam 3』におけるハーピー。(乳首の部分は弊誌にて自主規制)
Image Credit : FireDragon
『Serious Sam 4』のものとされるハーピー。


ハーピーのデザイン変更にまつわる議論はまたたく間に大きな反響を呼び起こした。集まったレスの中には「殺戮も流血もアリなのに、おっぱいだけ規制されるのはおかしい」といった反応も見られる。特に「SJWの仕業だ」と憤るユーザーの声が目立って多い印象で、「SJW」とは「ソーシャル・ジャスティス・ウォリアー」の略。ざっくりといえば、社会進歩的な考え方を広めようとする人を侮蔑的に指して示す言葉である。ハーピーの乳首規制問題については、性表現の規制に対して反感を抱くユーザーが強く反応している様子がうかがえる。

レスが過熱するなか、5月20日のうちに状況は大きく動く。『Serious Sam』シリーズ開発元であるクロアチアのCroteamスタッフからコメントが寄せられたのだ。投稿したのは同スタジオでマーケティング・コミュニケーションマネージャーを務める「IIIIDANNYIIII」ことDaniel Lucic氏だ。同氏は「スレッドの全部は見ていなくて、ごめんなさい。ただ、乳首を見るならゲームより適した場所があると思いますよ」と述べている。この皮肉を交えた投稿はスレッド主を含め、多くのユーザーに「公式が乳首を規制したことを認めた」との認識を抱かせた。

大きくスレッドがどよめいたのち、Lucic氏がふたたびレスを寄せたのは21日のことだった。同氏はまず「どこでこれが規制だなんて言いました?」と、息巻くユーザーらをいなすようにコメント。続けて、今回の変更はあくまでキャラクター・アーティストがデザイン面で選択したものに過ぎない点を強調し、乳首のオミットが性表現規制にまつわるものではないという態度を示した。また、このときユーザーから「露出/非露出を選択できるようにしてはどうか」と提案する声が出たものの、これに対してLucic氏はキャラクター担当者が2名しかおらず、余力がないことからハーピー単体のために労力を割くことが難しい旨を回答している。

Lucic氏の癖の強い言い回しもあって依然スレッドが荒れるなか、23日にまたしても状況は一変する。Discordの『Serious Sam 4』公式チャンネルにて開発者に直接ハーピーの規制について問いただすユーザーが現れたのだ。ここで新たに登場したのがCroteam側のSolais氏だった。もと『Serious Sam』シリーズのMod制作者で、現在は同シリーズのゲーム/レベルデザイナーを務める人物だ。Solais氏はユーザーとのやりとりで、これまでの議論を覆す内容の発言をする。渦中の「胸を隠したハーピー」のモデルは、ゲーム開発者会議Game Developers Conference(GDC)に出展するために用いられた2年前のモデルだという。つまりパブリックな場に出すための一時的なモックであって、実際のゲーム中に登場するモデルとは異なるというのだ。Solais氏は、直近で公開されたシネマティック・トレイラーでは最新の「乳首のある」ハーピーが確認できるはずだとコメントしている。

Solais氏が言及するシネマティック・トレイラーよりキャプチャー。確かにハーピーの姿は確認できるものの、非常にブラーがかかった一瞬のカットで、トップレスかどうか判断することは難しい。


開発元のスタッフも巻き込み、大きな論争となった「ハーピー乳首問題」。Lucic氏の発言やSolais氏の証言のみから実像を把握することは難しく、結局のところ彼女らがどのように描かれるかは製品版のお目見えを待つよりほかなさそうだ。ゲームにおける性表現の規制問題は根深く、乳首つながりでいえば『アサシン クリード オリジンズ』の「ディスカバリーツアー」にて女性の彫刻の胸元が貝殻で隠されるという珍妙な出来事もあった(関連記事)。また『シヴィライゼーション VI』公式アナウンスメント トレーラーでは「民衆を導く自由の女神」のはだけた胸元にわずかにボカシがかかっていることが確認され、「過剰な規制ではないか」との声も上がったことがある。性表現規制についての問題は、多文化への配慮といった繊細な面をもちながら、ときにゲームの本来の表現を規制するという点で激しい反感を呼ぶこともあり、非常に難しいトピックであり続けている。

今回のハーピー描写にまつわる一悶着も、改めてこうした議題の難しさが浮き彫りになった例のひとつといえるだろう。すべての発端となったスレッドの投稿者も、はじめはハーピーの描写に違和感を覚えてスレッドを立てたものの、予想外のヒートアップぶりには狼狽したようだ。現在、スレッドは投稿主によりタイトルが変更され、「閉じました。コメントしないで、みんな落ち着こう」とのメッセージとなっている。

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