Nintendo Switch本体のハック製品のウェブサイト、任天堂の申し立てにより、イギリス国内からのアクセスをブロックされる

 

イングランド・ウェールズ高等法院衡平法部は9月10日、任天堂からの申し立てを認め、イギリスの主要インターネットサービスプロバイダ(ISP)5社に対して、4つの特定のウェブサイトへのイギリス国内からの接続をブロックするよう命じた。海外メディアArs Technicaなどが報じている。

ブロック対象となったウェブサイトは、いずれもゲームコンソールをハックするための製品を開発・販売しているTeam Xecuterに関連するもの。4つのウェブサイトの内ふたつはTeam Xecuterが運営する公式サイトおよび製品サイトで、残るふたつはその製品をイギリス向けに販売する小売店とのことだ。

Team Xecuterは、Nintendo Switch本体に採用されたNVIDIA Tegra X1ベースのSoCの脆弱性(2018年6月以降に製造された本体は修正済み)を利用した、Nintendo Switch本体をハックするためのUSBドングル・ジグツール「SX Pro」およびカスタムファームウェア「SX OS」を開発。Nintendo Switchにて自作ソフトを実行できるほか、バックアップしたNintendo Switchゲームをプレイできる環境を実現した。ただ、これは海賊版ソフトの利用が可能であることも意味する。任天堂はこれらのウェブサイトについて、知的財産権の侵害を促す製品を開発・販売しているとし、またウェブサイト上にて任天堂の商標権の侵害行為をおこなっているとも主張していた。

今回の評決によると、任天堂はイギリス国外にいると見られるこれらのウェブサイトの運営者を特定できず、代理人を通じて送付された知的財産侵害行為の中止通告書は無視されたという。この中止通告書が送付された直後に、小売店がウェブサイトのURLを変更していた事実についても言及されている。ホスティングプロバイダへのウェブサイトの取り下げ要求も無視されているとのこと。

また、Team Xecuterの製品はイギリス国内にて数多く販売されており、海賊版のNintendo Switchゲームのダウンロードも多くおこなわれているようだとも言及。こうした状況から、任天堂が取り得る手段はISPによるウェブサイトへのアクセスのブロック以外にはなかったとして、イングランド・ウェールズ高等法院衡平法部は任天堂の申し立てを認め、Sky UK・British Telecommunications・EE・TalkTalk Telecom・Virgin MediaのISP5社に対し、各ウェブサイトへのイギリス国内からの接続をブロックするよう命じる評決を出した。

任天堂の担当者は海外メディアEurogamerに対して、イギリスの高等法院がNintendo Switchで海賊版を利用できる製品を違法と判断したとコメント。これによりイギリスのゲーム業界および、Nintendo Switch向けゲームを開発する1800以上の世界中の開発者が保護されるだろうとした。またイギリスのゲーム業界団体Ukieも、今回の評決を全面的に支持するとの声明を発表している。

Nintendo Switch本体のハックについては、任天堂は過去にも代行業者に差し止め命令を出すよう訴訟を起こしており(関連記事)、また違法ROMサイトを訴訟を通じて閉鎖に追い込み、賠償金を勝ち取ったこともあった(関連記事)。今回は、対象者と接触できない難しい状況となっていたようだが、ウェブサイトへのアクセスをブロックさせることに成功。その影響は、あくまでイギリス国内でISP5社がカバーする範囲だけではあるが、権利侵害行為に対して強い態度で臨む同社の姿勢をあらためて感じさせる一件となった。今後、ほかの国でも同様の取り組みをおこなっていくことになるのかもしれない。