Nintendo Switchは特許侵害と主張し続ける周辺機器メーカー、その訴えを受け米国国際貿易委員会が調査へ


アメリカのゲーム周辺機器メーカーGameviceが、任天堂に対して特許権の侵害を訴えている件について、アメリカ国際貿易委員会(USITC)は4月29日、委員による投票の結果、関税法337条に違反する不公正行為が存在するかどうか調査を開始することとしたと発表した。USITCは今年3月にGameviceからの申し立てを受理しており、これに基づいて実際に調査をおこなうことになるのかどうかが、ひとつの焦点とされていた。

Gameviceは、モバイルデバイス向けのゲームコントローラー製品を手がけるメーカーで、スマートフォン/タブレットを挟み込むような形で装着してプレイするスタイルが特徴だ。同社は関連するアイデアについて複数の特許を取得しており、Nintendo Switchが発売された2017年から、そのコントローラーであるJoy-Conは同社の特許権を侵害しているとの主張を続けている。ただ、これまでに連邦地方裁判所やUSITC、特許公判審判部(PTAB)に訴えてきたものの、裁判については自ら訴えを取り下げ、前回のUSITCへの申し立ては調査のうえ棄却。そこで上訴したPTABでも棄却されており、同社の主張が一向に認められない中で、今回ふたたび挑戦する形となった(関連記事)。

上述したように、GameviceはUSITCには2018年に一度申し立てをおこなっているが、今回はまた別の特許を根拠に任天堂の関税法337条違反を訴えているという。今年3月の受理時点ではどういった特許なのかは明らかでなかったが、今回のUSITCからの発表の中で「Game controller with structural bridge」と題された特許(特許番号10,391,393)であることが公表された。大まかな内容としては、モニタを有するコンピューティング装置と、その対向する側面に配置しコンピューティング装置と通信する入力装置を組み合わせるためのデバイスのアイデア。また、一対の入力装置をブリッジ構造にて固定すると共に、コンピューティング装置を保持するものとしている。要するに、Gameviceが現在販売している製品の構造を表すものだ。

USITCによると、Gameviceは、任天堂および米国任天堂がこの特許を侵害しているため、特定の“携帯型コントローラーを装着可能なポータブルゲーミングコンソール”およびその部品を米国に輸入し販売することは、関税法337条に違反していると主張しているとのこと。発表では明示されていないが、Nintendo Switchのことを指しているのは明らかだろう。米国関税法337条では、輸入における不公正行為によって国内産業に被害が生じると判断された場合に、その輸入品の排除および不公正行為の差し止めを命じることができる。ただし、米国内にその産業が存在することが要件とされており、Gameviceは訴状の中で、自社製品に関する産業が存在するとも主張しているという。

現時点では、USITCが調査に乗り出すことになったという段階であり、Gameviceの主張に対しては何の判断もまだ下されていない。USITCは、証拠の審問を含む調査の開始後45日以内に、いつまでに調査を終えるのか目処を設定し、可能な限り早く判断を下すとコメントしている。また、仮にUSITCが差し止め命令を下した場合には、米国通商代表部が政策上の理由から不承認とすることもでき、これはUSITCが命令を発行してから60日以内に判断されるそうだ。

関税法337条に基づくUSITCによる調査は、通常は15か月以内に最終判断が下るとされているため、本件がどのような結末を見ることになるのかは、これから1年ほどかかると思われる。調査においては、Nintendo SwitchがGameviceの当該特許を侵害しているのかどうか、またGamevice製品は米国内の産業と呼べるものなのかどうかが焦点となりそうだ。

これまでの経緯から考えるとGamevice側の方が分が悪いように思えるが、同社がここまで執念深く食い下がるのは、それなりの自信があるからなのだろう。どのような調査結果が出るのか注目される。もし仮に任天堂による不公正行為が認められた場合には、任天堂は連邦巡回区控訴裁判所に控訴することができる。なお本件については、両社からは特にコメントは出されていない。