『あつまれ どうぶつの森』の「時間操作」は個人の自由か否か?著名人の「時間操作者認定スタンプ」ジョークが、議論を巻き起こす

『あつまれ どうぶつの森』における「時間操作」をめぐる議論が再び勃発している。時間操作をするか否かは、はたして個人の自由なのだろうか?

『あつまれ どうぶつの森』における「時間操作」をめぐる議論が再び勃発している。きっかけは、ギタリストJules Conroy氏によるジョークである。YouTubeにてゲーム音楽をメタル風にアレンジすることで人気を集めている同氏は、ゲームファンとして『あつまれ どうぶつの森』のプレイに勤しんでいた。そして、「時間操作者認定スタンプ」付きのパスポート画像をTwitterに投稿したのである。

Conroy氏の投稿した画像では、ゲーム内に存在するパスポートに「100% Confirmed Time Traveler」のスタンプが押されている。Conroy氏は「この要素をパッチで実装してもらうために、署名活動する」とコメント。つまり、時間操作者にはこの「時間操作者認定スタンプ」がつくべきだと言っているのである。この発言はNintendo Lifeなどが取り上げたことにより、拡散されて反響を呼んだ。

Conroy氏はのちに、この発言はジョークであったとコメント。というのも、同氏はYouTuberであるAlpharad氏をからかうために投稿したのである。Alpharad氏は時間操作をしたことをファンにからかわれており、その行為を謝罪するジョークじみた映像を投稿している。ファンコミュニティにて動画いじりが流行しており、そこにConroy氏が乗っかった形。内輪ネタだったのだ。実際に、同スタンプ画像では「Alpharad」の名前が確認できる。ただ、コンテクストがすっぽり抜けてしまったことにより、このスタンプは「時間操作批判」として広まった。コンテクストを補完せず同件を取り上げたNintendo Lifeについては、Conroy氏は不快感を示し、ユーザーからも「タイトル詐欺だ」と批判されている。

https://twitter.com/SavedYouAClickV/status/1254015977357901824

一方、ユーザー間ではConroy氏の投稿意図とは別途、「時間操作の可否」について議論が巻き起こっている。Conroy氏のもとには、「好きなようにさせろよ」「なぜ気にするの?」「時間操作でどんな被害を受けたか知らないけど、ずっと怒ってたら?」「開発者自身、時間操作はズルではないと言っていましたよ。みんなの好きなように遊べばいいじゃないですか」といった反論が寄せられている。中には、文句ばかりを言いながら時間を守るユーザーと、時間操作のおかげで財政豊かなユーザーを比較する風刺画像を投稿する者もいるほど。一方で、時間操作への批判を支持する声や、「時間操作プレイヤーのもとには、その行為を肯定するメッセージを表示させつつ、パスポートタイトルに時間操作者とつけてもらおう」といった皮肉も寄せられている。

https://twitter.com/Kakashi71954198/status/1253974002286166016

『あつまれ どうぶつの森』においては、Nintendo Switch本体の時間を変更することで、時間操作が可能。本作では何を進めるにしても、時間の経過を待つことを求められることが多い。時間を進めることで、ゲーム内のさまざまなことが素早く進行する。季節外の虫や魚を捕まえられるといったメリットもあるだろう。一方で、季節限定イベントについてはアップデートにより解禁されるので、時間変更によって先んじて楽しむことはできない。時間操作するデメリットは、現時点で判明している限りでは前作と同様のもの。雑草が生え、どうぶつたちは長く会えないことを悲しんだり、カブが腐るなど。本作特有の大きな罰則などは存在していないようだ(iMore)。
【UPDATE 2020/4/27 19:55】
時間操作のデメリットについて、本作に実装されていない要素を修正

また開発陣は「時間操作なしで楽しむのが理想的」とコメントする一方で、時間操作の可否そのものについてははっきりしたコメントを避けている。Washington Postのインタビューで、同紙が「ディレクターの京極あや氏とプロデューサーの野上恒氏は、時間操作はズルと考えていない」と描写しているものの、実際インタビュー内で両氏はそのようには発言していない。ただ、京極氏はアップデートによる季節イベントの追加は、時間操作者対策ではないとも語っている。

時間操作者と非操作者が接触することで、一部イベントの発生にねじれが発生するのではないかといった報告も出ているが、事実確認はされておらずはっきりとした弊害は判明していない。一方で、時間操作者は「マナー違反である」との見方も根強く、嫌われている側面もある。

今回のConroy氏のジョークに関しては、マナー違反と批判されがちな時間操作者のフラストレーションを爆発させる、ひとつのきっかけになったのかもしれない。コンテクストが抜けた同氏のジョークツイートに対し「時間操作をして何が悪いんだ」と憤る声が多く投げかけられているのである。ただ、時間操作者が非操作者と無縁であると断言することもできない。というのも、最近配信された更新データVer.1.2.0によって、ゲーム内の預金金利の上限が引き下げられた(関連記事)。あくまで推測の域を出ないが、この仕様変更は、時間操作を用いることで金利によって迅速にお金を稼ぐプレイヤーへの対策であるとされている。この推測が事実ならば、時間操作者の行為によって非操作者は金利が下がるという弊害を受けたとも言えるだろう。

では実際のところ、ジョーク画像の発信者のConroy氏自身はどう考えているのだろうか。同氏は、買ったものをどう楽しむかはプレイヤーの自由であると語っている。ズルか否かに関してははっきりとしたジャッジを避けながらも、もしズルであってもプレイヤー自身が楽しめるなら問題はないだろうとも付け加えた。一方で、自分自身は時間操作に手を出さず我慢しながらプレイしてきたことを誇りに思うともコメント。自分はしないが、他の人は好きにすればいい。それが同氏の時間操作へのスタンスなのだろう。

時間操作については、ゲーム内では可能とはなっておらず、本体レベルの変更で可能であることや、公式による可否判断が曖昧(おそらく意図的)であることを踏まえると、なんとも難しい問題である。ソフト内の機能としては用意されていないが、意図的なお咎めは存在しておらず、容認とも否定とも位置づけられない。ただ、さまざまなメディアでの開発者インタビューのコメントからは「好きに遊んでほしいけれど、できれば時間はいじらないでほしい」という、京極氏と野上氏の想いを察することができる。また、時間操作の可否について議論を交わすことも、禁止されるものでもない。個人の自由を主張するのも、それに対して石を投げるのも自由。結論が出ないからこそ、時間操作に対する議論は定期的に再燃するのだろう。

現時点では曖昧な立ち位置である時間操作であるが、今後金利ナーフのような「時間操作者が存在したことにより、非操作者が弊害を受ける」ような疑惑の仕様変更が続いたり、もしくは時間操作者と非操作者が関わることで起こるトラブルが続出すれば、時間操作者への批判の声は大きくなっていくだろう。フェアネスの問題や、単純に飽きが早くなるという懸念とは別に、『あつまれ どうぶつの森』で時間操作をすることは、開発者の想定しない形でゲームを消費することに等しい。遊び方は千差万別であるが、開発者の推奨する遊び方でプレイをしていくのが、ゲーム本来の魅力を楽しむ方法であることに、疑いはないだろう。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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