PS4『Marvel’s Spider-Man 2』のリークはフェイク濃厚。しかしユーザー同士は疑心暗鬼化、煽りレスバトルで泥沼続く
先週末、海外掲示板Redditの「ゲームのリーク・噂」板(r/GamingLeaksAndRumours)は荒れていた。それ自体はいつものことだが、とりわけひとつのトピックが注目を集めていたのだ。ことの発端は今月17日、throwawayquarantine8を名乗る人物が投げこんだ投稿だった。そこに記されていたのは『Marvel’s Spider-Man』の続編にまつわるすっぱ抜きと思わしき情報。同作といえばInsomniac GamesとMARVEL Gamesのタッグにより開発されたPS4向けオープンワールドアクションだ。「スパイダーマン」の世界を鮮やかに再現する世界観や、爽快な移動・戦闘が好評を博し、2019年7月末時点で1320万本以上の売り上げを誇っている。かような人気作の続編情報とあっては、もちろん多くの人々が食いついた。
ところが18〜19日にかけて、不審にも当のリーク投稿はユーザーアカウントごと削除されてしまう。周囲で「Insomniacの圧力により消されたのでは」といった推論が飛び交うなか、19日には新たなアカウントが現れる。今度現れたユーザーthrowawayquarantine9(前出ユーザーとは数字が違う)は、「先日のリークは私のでっち上げだった」と告白。これをして解決、多くのフェイク同様この件もネット上のジャンクとして葬られるはずだった。ところが一部のユーザーは「告白したユーザーこそが偽者だ」と疑念の火を絶やさない。これに対し告白者throwawayquarantine9が煽りとも見られる発言を繰り返しており、もはや誰に信頼性を置けばいいのかわからない状況が続いている。
冬のNYでブラックコスチューム化するスパイディ?
発端となった4月17日の投稿は、先述のとおりアカウントごと削除されており、すでに確認することができない。各メディアが報じるところによれば、当初のリークには次のような情報が述べられていた。
物語はピーター・パーカーとメリー・ジェーン・ワトソンの会話から始まり、デイリー・ビューグル社にピーターとJ・ジョナ・ジェイムソンが復帰することが語られる。このときニューヨークは冬であり、雨や雪といった天候がゲーム内でも描かれるようになるとされる。作中のサイドミッションとして、ミステリオとの対決やデアデビルとの共闘、さらにはヒューマン・トーチとのレース対決といった華々しい面々の登場が伝えられた。さらに大きな示唆は、シンビオートが果たす役割。はじめはハリー・オズボーンの病を治すために共生しているものの、やがて彼のもとを離れ、ピーターと結びつくようになるという。新たに宿主となったスパイディは黒と白のスーツを獲得し、よりアグレッシブな戦闘スタイルでプレイが可能となる。また前作の終盤でスパイダーパワーを獲得したマイルズ・モラレスがプレイアブルキャラクターとして登場する可能性も伝えられた。
一連のリークには、シリーズファンの心をつかむ要素が綿密に練りこまれている。さらに信憑性を高めたのは、リーカーthrowawayquarantine8がこれらの情報を「InsomniacがZoomで行ったミーティングから入手した」と主張したことだ。実際まさにその当時、同社のオンライン会議が行われていたことがコミュニティ・ディレクターのJames Stevenson氏によるツイートで明らかになっていた。もちろん同様の情報は誰でも入手可能であり、リークの信頼性を高めるものではなかったものの、トピックはまたたく間に注目を集めることとなった。
If you went by shirts on our call right now, you'd think this was a @Naughty_Dog team meeting instead of an @insomniacgames one. 😂 pic.twitter.com/z09XpgWOCN
— James Stevenson (@JamesStevenson) April 17, 2020
リーカーは“奴ら”に消されたのか
投稿が削除された正確なタイミングについては定かではない。同様に不確かだとささやかれているのは、リークが「誰に」消されたのかという点だ。Redditでは、当該ポストがあまりにも真に迫っていたために、Insomniacの圧力によって削除されたのではないかと疑うユーザーも存在する。とはいえ少なくとも掲示板の管理者によって消された可能性は低そうだ。管理権限をもつユーザーが証言して曰く、「リーク・噂」板では「誤報」のタグづけがされることはあっても投稿自体が消されることはないという。またそもそもRedditのシステムとして、管理者権限で投稿が削除された際には[removed]との表示が現れる。対して投稿者本人が自身の発言を取り消すことは“delete”と呼ばれ、現状における元投稿の状態を見るに、本人が削除したと見るのが妥当だろう。
謝罪から一転、疑心暗鬼と煽りの泥沼
そして19日、新たなアカウントthrowawayquarantine9による謝罪が投稿された——とされている。歯切れが悪いのは、実はこの謝罪文も奇妙なことに削除されてしまっているからである。別のユーザーが投稿したスクリーンショットによれば、throwawayquarantine9は次のようなポストを寄せていた。
「24時間楽しませてくれてありがとう」。こう書き出して曰く、17日に投稿したリークは、“quarantine”すなわち防疫の外出制限で退屈を持て余して生まれたものだったという。しかし、事態はあっという間に予想を超えて手に負えなくなってしまった。だから被害を最小限にするために、前回の投稿を取り消しに現れたのだと語る。一介のスパイディ・ファンであると同時に「熱意のあるライター」でもあるというthrowawayquarantine9は、自らが作ったストーリーや構造、コンセプトでどれだけ人々を楽しませられるかを試してみたかったと釈明。そして、「でも大丈夫です。Insomniacは何百倍も良いものを届けてくれます。信じています」ともコメントを続けている。
一見この投稿は、悪ふざけを反省したリーカーがそれなりの誠意をもって投稿した謝罪文にも思える。ところがRedditには疑い深い——あるいは信心深いユーザーも少なくない。一部の投稿者は、最初のリーカーthrowawayquarantine8が告白者throwawayquarantine9と同一人物である証拠はない、と主張。さらにあるコメントは、別のユーザーが「お前がリーカーだという証拠はないだろう」と詰め寄るのに対しthrowawayquarantine9が煽りともとれる返信をしているスクリーンショットを上げ、反省文そのものの信頼性に疑問を呈している。
こうした流れに対しthrowawayquarantine9は挑発的な発言を連発している。最初のリーカーとの同一性を疑う声を受けては「草。8と9の違いもわからないんですかね、クソども」。謝罪文の証拠画像に対しては「throwawayquarantine9と、throwawayquarantine10と、(中略)throwawayquarantine19がフォトショ職人を集めにやってきましたよ」などと、かなり口汚いレスをかましている。したがってRedditではthrowawayquarantine9を単なる「荒らし」とみなす人々もおり、いよいよ誰を信ずるべきかわからない混沌に陥ってしまっている。
『Marvel’s Spider-Man』は熱い人気が支える作品であり、続編にまつわるリークが現れることも、それにまつわる議論が巻き起こることも何ら不思議ではない。しかし今回の件に関しては、誰がどこまで真実を語っているにせよ、関わった人々みながヒートアップしてしまっている。Insomniacから一切の公式発表がない以上、現時点で確証をもっていえることはひとつもない。愛すべき作品の続編を待ち望むなら、もう少し隣人への親愛を思い出して冷静に構える必要があるだろう。