『Disco Elysium』Nintendo Switch版が開発中。革新的なナラティブ手法が高く評価された、2019年を代表するミステリーRPG

『Disco Elysium』Nintendo Switch向けに開発中。『Disco Elysium』は、革新的なナラティブ手法が高く評価された2019年を代表するミステリーRPG。

エストニアのゲームスタジオZA/UMは4月7日、BBC Radio 5 liveの「Games On」podcastにて、『Disco Elysium』のNintendo Switch版を開発中であることを明かした。「Games On」に出演したアート・ディレクターのAleksander Rostov氏は、現在Nintendo Switch版のユーザーインターフェイスのデザインドキュメントに取り組んでいるという。またナラティブ・リードのHelen Hindpere氏によると、Nintendo Switch版は早いうちに実現するとのことだ。

『Disco Elysium』は、2019年10月に発売されたミステリーRPG。ディスコ音楽を愛する記憶喪失の中年刑事が、冷戦期東欧風の町の一角で起きた殺人事件の捜査にあたる。革新的なナラティブ手法およびゲームシステム、エッジの効いたユーモア、油絵タッチのアートワーク、英国のロックバンドBritish Sea Powerが関わったサウンドトラックなどが高く評価され、The Game Awards 2019では最多受賞タイトルに。その後もD.I.C.E.アワードのストーリー部門、GDCアワードのナラティブ部門およびデビュー作品部門受賞。英国アカデミー賞ゲーム部門では、デビュー作品・ナラティブ・音楽のカテゴリを制したりと、2019年を代表する作品のひとつとして強いインパクトを残していった。

コミュニストの革命運動が失敗に終わり、より良い未来への希望を喪失した町で物語が展開される『Disco Elysium』。本作はコンピューターRPGでよく見られる「戦闘」パートを排除し、会話とスキルチェックだけで進行する形式を取っている。プレイ時間の大半をテキストの読解に費やすことから、感覚としてはビジュアルノベルに近い。魅力的なキャラクターたち、練り込まれた世界設定、東欧のアーティストおよびアクティビスト集団らしさを感じさせる鋭いブラックユーモア。小説家でもあるリード・ライター兼デザイナーのRobert Kurvitz氏を中心とした8人のライター陣による秀逸なテキストは、本作の要と言えるだろう。

RPGというだけあって、主人公はさまざまなスキルを備えており、レベルが上がると好みのスキルにポイントを割り振っていくことが可能。「論理的思考」や「共感力」といった24種類のスキルは、それぞれ独立した頭の中の声となり、“あれしろこうしろ”と意見を交わし合う。複数の声に分裂した自分自身と対話する、一種の思考シミュレーションゲームでもあるのだ。スキル値によって会話の選択肢が変わることはもちろんのこと、主人公の言動によって相手の返答が細かく変わり、文脈にあった会話になるよう作り込まれている。

『Disco Elysium』は現在Steamにて販売中。PlayStation 4/Xbox One版も予定されていることが昨年時点で判明していたが(USgamer)、このたびNintendo Switch版の存在も明らかになった。同作は現状日本語に対応しておらず、機械翻訳だけでは理解が難しい内容となっている点には注意。テキスト勝負のゲームであるため、まずは日本語対応を期待したいところだ。ZA/UM開発者インタビューを含む「Games On」podcastはこちらから視聴可能。弊サイトの『Disco Elysium』関連記事は以下のとおり:

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Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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