難航中のAtari新型ゲーム機「Atari VCS」の開発から離脱した設計担当者、Atariを提訴


新型ゲーム機「Atari VCS」を開発中のAtariが、そのプロジェクトにかつて携わっていた人物から賃金不払いを理由に訴訟を起こされたようだ。原告はRob Wyatt氏。同氏は、マイクロソフトにてDirectXや初代Xboxなどの開発に携わった人物で、その後自身の会社Tin Giantを設立。PS3のグラフィックアーキテクチャや、MRデバイスMagic Leapの開発に参加し、またGPUハードウェアや3Dグラフィックスの専門家として、Steam版『イースVIII-Lacrimosa of DANA-』の最適化作業に協力したこともある。

Wyatt氏は、Atari VCSのシステム設計担当として2018年6月に招聘されるも、2019年10月に辞任。同氏は当時、Tin Giantを通じてAtariに請求していた報酬が、過去6か月にわたって支払われてこなかったため、辞任する以外の選択肢がなかったと理由を語っていた(関連記事)。

海外メディアVentureBeatによると、Wyatt氏は地元コロラド州の連邦裁判所にて、Atariによる契約不履行と名誉毀損を訴えて提訴。同氏は、契約に基づいて仕事をこなし、Atariに対して26万1720ドル(約2840万円)を請求したものの、一切の支払いがおこなわれなかったという。

当時Atari側はWyatt氏に対し、Tin GiantがAtari VCSのプロジェクトに遅延をもたらし、契約が履行されなかったためだと報酬の支払いを拒否した理由を説明したそうだが、Wyatt氏は真っ向から反論。Atari VCSのローンチが延期となったのは、実際にはAtari自身のプロジェクト管理の不手際せいであると主張している。また、Atariの最高執行責任者Michael Arzt氏が、Tin Giantについて誤った声明を公に発表した点についても批判している。

Atari VCSは、Atariのクラシックゲームをプレイできるゲーム機で、さらにウェブブラウザ、ストリーミングサービスの利用などPCライクにも使用できるデバイスとして、クラウドファンディングサイトIndiegogoを通じて1万人以上の出資者から資金を調達して開発中だ。サンドボックスモードでは任意のOSをインストールすることが可能で、Steamも利用できるという。

当初は、2018年春には一般販売するとしていたものの何度も延期を重ねている。直近では2020年の春にはローンチすると表明していたが、今年3月20日になって、そのスケジュールは“新型コロナウイルスの犠牲になった”としてさらなる延期を強く示唆。Atari VCSは、中国国内にて製造テストが続けられている。また、今後のイベントへの出展もすべて未定になったとのこと。ただ予約販売は現在も続けられている。

プロジェクトにおける重要人物だったRob Wyatt氏からの今回の訴訟が、Atari VCSのローンチスケジュールに影響を与えることになるのかどうかは不明だ。一方、上述したこれまでの経緯により不安視されている開発状況の背景が、裁判を通じていくらか明らかになる可能性はありそうだ。なおAtariは、本件について特に公にはコメントを出していない。