【修正】プレイステーション 5のスペックおよびシステム設計詳細が公開。超高速カスタムSSDや後方互換機能、3Dオーディオへのこだわり

プレステーション 5のシステム設計詳細が公開。次世代機PS5における超高速カスタムSSDや後方互換性、3Dオーディオへのこだわりが紹介された。

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは3月19日、同社が現在開発中の次世代コンソール機であるプレイステーション 5(PS5)の技術解説動画を公開した。同動画は、中止となったGame Developer’s Conferenceで予定していたセッションを収録したもの。PS5のリードシステムアーキテクトであるマーク・サーニー氏が、PS5のシステム設計に関する技術解説を行っている(英語音声/日本語字幕なし)。ゲーム開発者向けのイベントで披露する予定であったセッションであり、内容としても開発者向けのものとなっている。
【UPDATE 2020/03/19 13:35】「下位互換」→「後方互換」に訂正。

以下は更新されたPS5のスペック表:

CPU:x86-64-AMD Ryzen “Zen 2” 8コア/16スレッド、周波数最大3.5GHzまで可変
GPU:AMD Radeon RDNA 2-based graphics engine、レイトレーシング アクセラレーション、周波数最大2.23GHzまで可変(10.28 TFLOPS)
システムメモリ:16GB GDDR6/256-bit、バンド幅 448GB/s
ストレージ:Custom 825GB SSD、読み込み速度 5.5GB/s (Raw)
拡張ストレージ:NVMe SSD Slot
外部ストレージ:USB HDD Support
PS5ゲームディスク:UHD HD Blu-ray (100GBまで)
映像出力:4K 120Hz TV、8K TV、VRR対応(HDMI2.1規格による)
オーディオ:Tempest 3Dオーディオ技術

今回サーニー氏が解説したのは、大きく分けると「SSD」「GPU/CPU」、そして独自のアルゴリズムに基づく3Dオーディオ技術「Tempest 3Dオーディオ技術」の3点である。まずサーニー氏は、単なるパフォーマンスの向上だけでは次世代機としてふさわしくなく、PS5の開発にあたっては、ゲーム開発者とプレイヤーに新しい価値を届けられるようなイノベーションを目指したと冒頭で説明した。それでいて、開発者がとっつきやすい仕様を採用することも重要視されているとのこと。

・カスタムSSDによるロード時間短縮

最初に、ストレージとして採用されるカスタムSSDについて。目指すところは「超高速起動、ロード画面なし、高速ストリーミング(バックグラウンド読み込み)、重複データの削減、パッチデータのインストール時間短縮」である。SSDの採用は、開発者からもっとも多い要望であったという。サーニー氏としては、次世代機のカギを握ると考えているそうだ。現行PS4のHDDは「読み込み速度:50MB/s〜100MB/s、シークタイム:2〜50ミリ秒」であり、1GBあたりのロード時間は20秒ほど。一方、PS5のカスタムSSDではシークタイムをなくし、読み込み速度は5.5GB/s(Raw)。2GBのロード時間はわずか0.27秒になると比較された。ロード時間が100倍ほどの速さになり、たとえばゲーム内のファストトラベルも、ほんの一瞬で完了するようになる。

ただ、SSDを採用した理由はロード時間の短縮だけではない。SSDの採用は、結果として作り手にさらなる自由を与えることになる。現行のゲームでは、ロケーション間を移動する際、新しいアセットをロードする時間を稼ぐために長い階段やエレベーターを配置するといった、技術的な要因から制作が求められる場面がある。それらを考慮せずにゲームをつくれるようになるのだ。

またPS4では、読み込み時間の効率化を図る過程で重複データが無数に発生してしまう。だがPS5はカスタムSSDの採用により読み込み速度が向上。重複データを削減でき、データ構造としての効率化が可能となる。そのほか現状プレイヤーキャラクターの移動速度はロード時間により制約されているが、その制約も大きく取り払われる。作り手・遊び手の双方にとって、変化を実感しやすい部分となるだろう。

現在PS4は一部パッチデータのインストールにかなりの時間を要するが、PS5ではインストール時間も短縮される。PS4ではRAMに次の30秒以内に使うデータを乗せる必要があり、待機状態のメモリが多い。一方PS5では、SSD採用により速度差が縮まり、RAMの有効活用化を実現できる。

・SSDの容量と拡張性

SSDのカスタム・フラッシュコントローラーがアクセスできるチャンネル数は12。そこから導き出された妥当なSSD容量は825GBであったが、本当に825GBで十分なのか、プレイヤーの週末/週間/月間単位でのプレイ習慣から調査したという。結果、再インストールや再ダウンロードから感じる不便さはそこまで大きくないと考えられ、825GBというサイズに落ち着いたとのこと。もちろんストレージを拡張したいプレイヤーに向けた選択肢も用意されている。

SSDの拡張性については、後方互換性のあるPS4タイトルを遊びたいだけであれば外部HDDで済むが、PS5タイトルを遊びたい場合はSSDの追加が好ましいと伝えられた。そこで一部の市販M.2 SSDをサポートする予定だという。ただし、PS5のカスタムSSDよりも転送速度が速く、かつ形状としてPS5のベイにおさまる必要がある。どの市販SSDに互換性があるのか、将来的にテストを実施するとのことだ。なお現行のM.2 SSDは、PCIe 4.0規格であれば読み込み速度が4〜5GB/sとなっており、今年中に7GB/sほどにまで伸びるだろうとサーニー氏は推測している。

フラッシュコントローラーは4レーンのPCIe 4.0を通じてメインカスタムチップに接続。カスタムチップには専用i/oがあり、DMAコントローラーによってチェックインのボトルネック化を軽減。そのほか2つのi/o コプロセッサー、オンチップRAM、コプロセッサーの補助役「Coherency engine」による統合性の問題解消などが図られる。

データ圧縮は、PS4で採用していたzlib形式ではなく、比較的新しいKrakenを採用。アルゴリズムは類似していながらも、圧縮率が10%ほど向上するという。まだ登場して数年しか経過していないが、すでに業界標準になりつつあるとのこと。PS5ではi/oユニットにカスタム解凍機能を積んでおり、5GB/s以上でKraken形式データを扱えると説明された(解凍後は8〜9GB)。

・消費電力/発熱量と周波数のバランス

CPU/GPUについては、レイトレーシングやプリミティブ・シェーダーといった機能の対応だけでなく、電力消費の効率化が目標として掲げられていた。電力/発熱量とパフォーマンス。そのバランスが注目されるところだ。過去のPS機では、消費電力や発熱量の予測は勘に頼らざるを得ない部分があったという。PS4は負荷に応じて消費電力・発熱量が変動するが、PS5は「可変周波数」を採用することで、消費電力や発熱を抑えながら高いパフォーマンスを発揮。シリコンダイの実際の温度ではなく、GPU/CPUのアクティビティをもとに周波数を決めるとのこと。そこから、費用対効果の優れた高パフォーマンスの冷却方法を探り出したという。発熱量が一定であり、どのような冷却性能が必要なのか予測しやすいというメリットがある。冷却性能に関する詳細は、後日発表。

PS5では、TFLOPSやCU数だけをパフォーマンス測定の基準にするのは好ましくないとも説明された。PS5のGPUは小さめだが(36 RDNA 2 CUs)、柔軟かつ俊敏。TFLOPSから予想される以上の高パフォーマンスを発揮できるという。GPUの周波数上限は2.23GHz(36CUs を2.23GHzで使用=10.3TFLOPS)。CPUの周波数上限は3.5GHzで、大半のゲームはその上限に近いGHzで遊べるはずとのことだ。仮にクロック周波数を落とす必要が生じても、大幅なパフォーマンス低下には繋がらないと説明されている。

・後方互換機能について

PS4タイトルに対する後方互換性を実現する方法としては、PS3のように前世代機のチップセットを次世代機に載せるという手段もあるが、それではコストが高くなりすぎてしまう。そこで、前世代機のロジックとの差分を取り入れたチップセットにすることで、コスト上昇を避けての後方互換性を実現。この方法であれば、低価格版のPS5を将来的に出すにしても、後方互換性を失わずに済む。ゲームによっては、周波数が増大した最新機ではゲームを走らせるのが難しい場合もあるが、PS4でもっとも遊ばれている100タイトルで検証したところ、ほぼ全てがローンチ時点でプレイアブルになる見込みとのことだ。

・3Dオーディオへのこだわり

最後に3Dオーディオについて。PS4のCPU(8x Jaguar Cores)では、オーディオに割ける割合が低くなりがちであった。PS5での目標は、周辺機器に頼らない、臨場感溢れる(かつ数百単位の高度な音源に対応する)3Dオーディオの実現。音が立体的で、実在感と定位感によってゲーム内の世界に実際にいるかのような感覚にさせてくれる3Dオーディオだ。雨粒がさまざまな異なる表面に当たる音や、敵が具体的にどの方向に潜んでいるのか聞き分けることが可能に。その実現を目指して作られたのが、独自アルゴリズムのTempest 3Dオーディオ技術。ただしHRTF(頭部伝達関数)を使うと演算が煩雑かつ高負荷になってしまう。そのためAMDのGPUテクノロジーを基にした「Tempest Engine」をハードウェア・ユニットとして設けている。

高品質3Dオーディオの実現としては、やはりヘッドホンが現状最適。ただTV/スピーカーでの体験もヘッドホンと同等レベルにまで引き上げるべく、バーチャル・サラウンド・サウンドにも力が注がれているという。オーディオへの取り組みは、PS5のローンチ後まで続く長期的なプロジェクトとなるようだ。

さまざまな情報が公開された今回の技術解説動画。そのほかPS5については、最大8K解像度出力に対応することや、感触フィードバックの向上をもたらすハプティック技術と、L2/R2ボタンに抵抗力を感じさせるアダプティブトリガーを搭載した新コントローラーの開発などが判明している。PS5は2020年ホリデーシーズンに発売予定。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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