『デス・ストランディング』赤ちゃんポッドを作るパパあらわる。新型コロナ対策をうそぶくユーモアの影に「アンブレラ社」の闇

Image Credit : The_bai_ying

中国・上海のコスプレイヤーThe_bai_ying(白影研发部)氏の作品が話題を呼んでいる。同氏は「我が子を病院に連れていくため」として『デス・ストランディング(以下、デススト)』に登場するBBポッドそっくりの装置を作成。防護服姿のコスプレと合わせて中国版TikTokにアップし、3月11日時点で25,000件以上の反響を得ている。投稿には新型コロナウイルスにまつわるハッシュタグもつけられており、あたかも感染症対策のように見えるが実用性は不明。また、さりげなくスーツにあしらわれた『バイオハザード』のアンブレラ社ロゴにも注目が集まった。

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Image Credit : The_bai_ying

BBポッドは『デス・ストランディング』作中で主人公サムが身につける、内部に赤ちゃんを封じ込めたデバイス。The_bai_ying氏は、リュックサックを改造することで装備を再現したようだ。さらにオリジナルの要素としてポッド内の空気状態を示す小型モニターも取り付けられている。またグローブ付きの穴を通して内部の赤ちゃんの位置を調整可能。ゲームのポッドは液体で満たされていたが、こちらは代わりにフカフカの毛布があつらえてあるようだ。初回の投稿から数日後には続報もポストされており、「前回はパワー不足で二酸化炭素濃度が高くなってしまったため、送風機を取り替えた」との旨を述べている。こちらの動画の最後では「空気問題が解消したので、これでお出かけできそうだ」とも述べている。

当然だが、絶対にご家庭のベビーを密閉容器に閉じ込めてはいけない。The_bai_ying氏も、実際に我が子をポッドで病院に連れていく動画を上げたわけではない。本当に新型コロナウイルス対策として制作したのではなく、パフォーマンスとして作品を公開している可能性がある。なお3月11日には赤ちゃんの兄君と見られるキッズを連れて病院を訪れる動画を発表している。なんとここでは父子おそろいの防護服コスプレでお出まし。坊やはワクチン接種を受けて涙目になったり、防護マスクごしにパパとキスしたりとキュートな姿を見せる。彼がまとうミニ防護服は雨ガッパのようなポンチョ状のデザインだ。通気性はよいと見られ、やはりコスプレ以上の実用性はないのだろう。The_bai_ying氏はハンドルネームの「研发部(R&D)」にちなんで化学モチーフのDIY作品を多数アップしている。今回のBBポッドもこうしたジョークの流れにあると見ていいかもしれない。

ところで今回の件はお手製BBポッド以外にもゲームファンの関心を集めるポイントがある。それはThe_bai_ying氏が身にまとう防護服の胸元だ。よく見るとそこには『バイオハザード(以下、バイオ)』シリーズに登場する元凶、製薬企業アンブレラ社のロゴマークがあしらわれている。『デススト』のブリッジズじゃないんかい、と突っ込みたくなるところだが、これには理由がある。同氏は、すでにコロナウイルスが猛威をふるっていた今年2月頭にも同じ防護服姿でクリップを公開。動画は「ウイルスの解毒薬を見つけました!」とのテロップから始まり、「実はウイルスはアンブレラ社が秘密裏にばらまいたものだったのです」と続く。社内でひそかに開発された薬を奪取するため、The_bai_ying氏は同社製のスーツを着込んで潜入。「じゅうたんの下で発見した」というキーコードで見事にワクチンを手にいれる。そののち具体的な場面は示されないものの、レーザートラップや大ボスの追撃をかいくぐり、からくも生還したとのこと。最後は「流行病の終息をお祈りします」との一言で締めくくられる。つまり、おおもとは『バイオ』と新型コロナ騒動をからめたパロディ動画があり、その衣装を流用したのがBBポッド動画だったというわけだ。

アンブレラ社と新型コロナウイルスを結びつけるのは、実はすでにインターネット上の一部で広まっていたネタだ。背景には次のような騒動がある。今年1月アメリカのYouTuberであるUndoomed氏は、自身のツイッターで「新型コロナウイルスの発生源である武漢市に、アンブレラ社そっくりのロゴを掲げたバイオテクノロジー企業がある」と伝えた。同氏が添えた画像には、確かに八角形のシンボルマークをそっくりそのままカラーチェンジしたような企業ロゴが掲載されている。さらに同氏は「“corona”というスペルをアナグラムすると“racoon”になる」とも指摘。ラクーン、すなわち『バイオ』シリーズおなじみの都市「ラクーンシティ」もまた新型コロナウイルスを示唆しているというのだ。このツイートは65,000件以上のいいねを集め話題となった。

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アンブレラ社といえば表向きは医薬品会社の大手。そのフロント企業の一端が、まさか武漢市ウイルス汚染の影に……と想像力を働かせたくなるが、残念ながら誤報である。まず画像に掲載されている企業は、武漢にあるわけではない。実在こそしているものの、その所在地は800km以上離れた上海にある。次にアナグラムの話も間違いだ。「ラクーンシティ」のつづりは正確には“Raccoon City”となる。“corona”のアナグラムとするには“c”が一文字足りないというわけだ。最後に根本的な誤りとして、このようなロゴマークは存在しない。実は新型コロナウイルスが騒ぎになる前、2019年6月にも同じ企業が話題になっていた。当初は実際にロゴを使用した企業サイトまで見られ信憑性を集めていたものの、のちにWeiboで「仲間内の冗談」だったことが言及される。信頼ソースだったWebサイトも、「本物の」企業公式サイトがリリースされる前に作られたフェイクだったようだ。現在同様の名前の会社を検索しても、まったく異なる外観のホームページがヒットする。アンブレラ社のマークはシンプルで汎用性が高く、いかにも「ありそう」と思わせるデザインだ。もともとの意匠がもつ力が騒動を引き起こしたのだろう。

なお似たような出来事は2017年にも発生。ベトナムはホーチミン市に赤と白の八角形マークを掲げた皮膚科クリニックが存在すると騒がれた。こちらは色まで完コピなうえ本当にロゴが用いられていたようだが、現在では変更されてしまっている。

つながりの強い世界ではウイルスやデマが蔓延する。外を歩く、という恐怖でこの惨劇に喰われることなく、The_bai_ying氏のようなユーモアと創意工夫で事態の終息を願う姿勢が望ましいだろう。なお3月11日時点で中国における新型コロナウイルス拡大は収まりつつあると報じられる。その影に、同氏が手にいれた解毒薬の力があったかは不明だ。

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