『スマブラSP』ディレクター桜井政博氏の健康を心配する声が、海外から大量に寄せられる。その理由とは

画像は「【スマブラSP】ベレト / ベレスのつかいかた」より

『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズの生みの親であり、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』ディレクターである桜井政博氏の体調を心配する声が、海外より大量に寄せられているようだ。任天堂系メディアであるGoNintendoやNintendo Lifeなど、各海外メディアのTwitter投稿や記事コメント欄に、桜井氏の身体を憂う声が寄せられている。「彼は大丈夫なのか」「休んだほうがいいんじゃないか」「休養をとってほしい」言葉はそれぞれ異なるが、心配する意図は同じ。なぜこうした事態が起こっているのだろうか。それは桜井氏の連載するコラムでの文章が、海外向けにやや異なるニュアンスで伝わったからかもしれない。

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桜井氏は週刊ファミ通にて、「桜井政博のゲームについて思うこと」なるコラムを連載している。実力派人気クリエイターの桜井氏が、どのようなゲームを遊んでいるか、ゲームについてどのように考えているか、伺い知れるコラムである。すでに599回連載されており、書籍化もされている人気コラム。週刊ファミ通でしか読めない、魅力的なコンテンツのひとつと言えるだろう。一方で、こちらのコラムはその人気あまりか、しばしば“引用”されている。桜井氏が何を考えているかという関心は、国の枠を越えている。桜井氏の言動を追いかけ続けているSource Gaming関係者や日本の任天堂情報を追いかけるJapanese Nintendoより、その内容の一部が英語化して発信されている。そしてその投稿は、前述した規模の大きいメディアにも引用され記事化され、シェアされている。そうした記事が心配を生んでいるわけである。

具体的には、このたび海外メディアは、週刊ファミ通 2020年3月19日号の141ページに掲載されている「桜井政博のゲームについて思うこと」599回の内容を取り上げている。たとえばGoNintendoが「SAKURAI SUFFERS A HEALTH SCARE, PASSES OUT WHILE AT THE GYM」という記事タイトルをつけていたりと、そのタイトルが危惧を呼び込んでいる。「Sakurai Passed Out」、つまり「桜井氏が失神した」と報じているのだ。

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まずこの情報を最初に英訳したSourceGamingのPushDustln氏の記述は見てみよう。「桜井が数週間前にジムで倒れたようだ。疲労していて、脱水症状だった。彼は低炭水化物ダイエットをしていて、たくさんの肉を食べていたようだ。(It appears Sakurai mightve passed out at the gym a couple of weeks ago. He was fatigued and dehydrated. He’s been doing a low calorie diet, but eating lots of meat.)」。この記述を見ると深刻そうな話である。それゆえに、ファンが心配を寄せているのだろう。なお上の原文には「low calorie diet」とあるが、PushDustln氏はのちに「low carbohydrate diet(低炭水化物ダイエット)」のことだったと訂正している。

しかし、実はこの文は間違いではないのだが、コンテクストが抜けていることで桜井氏の意図するニュアンスとは違う受け取られ方をしているかもしれない。どのように違うか、詳細は誌面を確認していただくとして、ニュアンスだけを把握したい。まず前提として、桜井氏は読者からの健康に関する質問に答えるように、この回答を寄せている。健康が重要であるとコメントしつつ、軽い糖質制限をしていることを報告し、筋肉がなくなりつつあるかもしれないと言及。そして「ところで」と話題を切り替え、その上で先日ジムの入浴でブラックアウトし、数秒意識を失い転倒した事例を紹介している。また「疲れや水分不足など悪い条件が重なった」とも付け加えており、危険なので気をつけなければいけないと自戒し、文を締めている。

流れとしては、読者に対して、健康が重要であることを強調し、軽い糖質制限をしていると回答。そのうえで、危なかった事例として直近のジムの入浴中の出来事をあげている。後者の危ない事例については、健康について強く意識する上でのコメントだと解釈できる。このように、前後の文脈を補足するだけで、英語の説明とは印象が異なるのではないだろうか。翻訳はミスリード的ではなく、大げさに書いているわけではない。しかしながら、Twitterという文字数に制限のある媒体で発信されたがゆえに、より深刻度を強めたニュアンスになり情報が広まっていることは否めない。そうした経緯があり、桜井氏のもとには健康を心配するツイートが大量に寄せられているのだ。

桜井氏のコラムが引用および翻訳されたのは今回が初めてではない。ヒットタイトルを作り続ける桜井氏の人気は世界規模であり、その意見ひとつひとつに情報価値がある。PushDustln氏(もしくはSource Gaming)の翻訳は、海外ファンにとっては人気コンテンツのひとつなのである。しかしながら、その情報の出どころか週刊ファミ通の誌面であったり、もしくはその週刊ファミ通を先行入手したブロガーによる報告であったりと、なかなかグレーな部分があることは否めない。

週刊ファミ通はこれまでにもこうした被害を受けており、いくつも例がある。たとえば今年に入り、桜井氏が『十三機兵防衛圏』について称賛したことが一部話題となった。その発信源のひとつは、前述の週刊ファミ通を先行入手しその内容を報告するブロガーの記事を引用した、ゲームブログの記事であった。同記事のはてなブックマークは360まで伸びている。桜井氏の人気は国内外で大きくなっており、その結果としてコラムの内容が個人ユーザーに引用され拡散されたり、翻訳されるということが頻発しているわけだ。

『十三機兵防衛圏』 ©ATLUS ©SEGA All rights reserved.

週刊ファミ通はもちろんのこと、桜井氏とて、引用され尾ひれのついた言葉ではなく、自分で書いた言葉を読んでほしいはず。常々桜井氏は『スマブラ』を開発することが大変であると強調しているが、このように話が伝わるのは意図せぬものだろう。国内ユーザーは週刊ファミ通を購入し同氏の言葉を聞くのが筋であり、一方そうした人気コンテンツを世界に発信する海外向けサービスが用意されても、面白いのかもしれない。いずれにせよ、人気すぎるコンテンツということで、こうした事例は止むことはなさそうだ。

週刊ファミ通 2020年3月19日号は、本日3月5日より発売中。同誌面には12ページにわたり任天堂の宮本茂氏のロングインタビューが掲載されており、読み応えばっちり。そして何より、桜井氏が自分自身の言葉で想いを語った「桜井政博のゲームについて思うこと」599回が掲載されている。桜井氏の意図をより正しく理解するためにも、雑誌もしくは電子版を購入してほしい。

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