『フォートナイト』中毒プレイヤーには『ゼルダの伝説 BotW』を処方する。フランスの心理学者が勧めるゲーム依存症の治療

『フォートナイト』を中毒的にプレイしてしまう未成年の治療に、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』をプレイすることを勧める心理学者がいるようだ。

『フォートナイト』を中毒的にプレイしてしまう未成年の治療に、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』をプレイすることを勧める心理学者がいるようだ。フランスのメディアKonbiniがYouTubeチャンネルに投稿した動画内で、心理学者で精神分析医のMichaël Stora氏が実践している方法について語った。

十代の子供が『フォートナイト』に過度にのめりこみ、日常生活に支障をきたしているという事例はこれまでにも多く報道されてきた。ゲームにハマりすぎて、ほかのことに興味がなくなる。結果として生活サイクルが乱れ、無軌道な課金をしてしまったり、ときには暴力に及ぶといったことがゲーム依存症の症例とされている。とくに『フォートナイト』は世界中で多くの子供が遊び知名度が高いためか、ゲーム依存症と一緒に語られる事も近年は多いようだ(関連記事)。

Stora氏には過去二年間に渡って、子供が『フォートナイト』を中毒的にプレイしていて困っているという親からの相談が後を絶たない。子供が親の目を盗みスキンに課金しすぎてしまう例もあるという。Stora氏は相談者のゲーム以外の広範な家庭の問題も明らかにしつつ、同時に別のゲームの選択肢を提案している。それは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を遊ばせることだ。

Stora氏は十代の子供が馴染んでいるゲームという媒体を使い、暴力とは別の側面を子供が学ぶ機会を作ることができると考える。『フォートナイト』の対人戦(マルチプレイ)による緊張の代わりに、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、広大なオープンワールドが存在しプレイヤーの心を癒す体験を与えてくれるという。敵を撃つことがメインの『フォートナイト』にたいして、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』にはキャラクターたちとの物語的な体験が用意されており、セラピー効果があるとも。つまるところ、自然あふれるゲームの広大な世界にふれることで心が癒やされ、物語に没入することで、他者への攻撃心や勝ち負けへの苛立ちが抑えられるという理屈だろう。

さらに氏はNPCたちとの関わりのなかで心の癒しを得られるゲームとして、『Fable』や『ICO』、そして『ワンダと巨象』を挙げていた。氏は他プレイヤーと競い合うことがゲームの中毒性につながると、研究を重ねて導き出した独自の見解を示している。一方で、シングルゲームにおいてはそうした競争は存在しないことがほとんど。そうした理屈で、ゲームに対してゲームが治療になると提唱しているのかもしれない。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、これまでにも精神病の治療という文脈で語られてきた。ゲームライターのDerek D. Buck氏は、うつ病に苦しんでいたが、同作をプレイすることによって「世界の美しさ」を感じ、心が洗われたと語っていた。まぶしい光にあふれ草木も輝く世界で、自分が呼吸しているという感覚をゲーム内で感じることにより、持病の治療の助けになったと語っていた。また同作のコログを集めたり困難に打ち勝つことで、達成感を得られるとも語っていた(関連記事)。

Michaël Stora氏はフランスの心理学者であり精神分析医。ゲーム愛好家でもあり、自身を「psygamer(心理ゲーマー)」と名乗っている。Electronic ArtsやMicrosoft、Activision、Ubisoftのコンサルタントしての経験もあり、ゲーム業界にも精通している人物だ。またビデオゲームを利用した、行動障害に苦しむ青少年のためのワークショップを20年近く開催してきた。氏の経験から生まれた、未成年のゲーム依存症の治療の際にゲームを禁止するのではなく、より広いゲームの世界を示して見せるという方法はなかなかに面白い試みではないだろうか。ただし、氏が提唱するのは独自の研究による持論。研究結果が発表されていたり、論文が公開されているわけではないので、そうした点はお忘れなく。

Kaisei Hanyu
Kaisei Hanyu

映画とゲームが大好き。オブリビオンからゲーム人生が始まりました。

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