『サイバーパンク2077』CD PROJEKTは、『Half-Life: Alyx』を脅威には感じていないとコメント。「VRは非常にニッチ」


『サイバーパンク2077』などを手掛けるCD PROJEKT REDを傘下に持つCD PROJEKTグループが、2019年第3四半期の業績を先日発表した(関連記事)。これに続き同社は電話での記者会見もおこない、その録音が公式サイトにて公開された。会見では同期の業績を報告したのち、各社のアナリストとの質疑応答がおこなわれた。この中では、Valveが発表した新作『Half-Life: Alyx』やVRに関する質問があり、同社の回答が海外で話題となっているようだ。

『Half-Life: Alyx』は、『Half-Life 2』のヒロインであるアリックス・バンスを主人公に『Half-Life 1』と『Half-Life 2』の間の出来事を描く作品で、VR専用タイトルとして11月22日に発表された。ナンバリングの続編ではないものの、Valveが手がける『Half-Life』シリーズの新作であるため、非常に大きな注目を集めている(関連記事)。

CD PROJEKTグループの決算会見では、同作の発売に脅威を感じているかという質問が投げかけられた。というのも、『Half-Life: Alyx』は2020年3月発売予定と発表されており、その1か月後の4月16日には『サイバーパンク2077』のローンチが控えている。わずかな期間の間に複数の大作が発売されるとなると、お互いにプレイヤーを食い合いかねないため、業績への影響を問うた形だ。たとえば昨年には、『Call of Duty: Black Ops 4』と『レッド・デッド・リデンプション2』の発売日に1週間間隔で挟まれた格好だった『Battlefield V』が、その発売を1か月延期したこともあった(公式にはゲームの調整にさらに時間をかけると説明)。

*ジョニー・シルヴァーハンド役を演じるキアヌ・リーブス氏が、E3 2019にて『サイバーパンク2077』の発売日を発表。

この質問に対してCD PROJEKTのシニアバイスプレジデントMichal Andrzej Nowakowski氏は、まず『Half-Life: Alyx』の発表はサプライズではあったが、『サイバーパンク2077』と絡めて驚きを感じることはなかったと述べる。その理由として、VRは依然としてとてもニッチな存在で、市場としても非常に小さいものであるとの考えを示している。この中では、「very, very, very, and I could add a few verys here」と何度も「very(非常に)」と繰り返しながら、VRのニッチさを強調していることが印象的だ。そして、いくつか成功したVRタイトルが存在することは知っているものの、VRで実際に堅固なビジネスを築いている例は聞いたことがないともコメントしている。

一方で同氏は、こうした状況は今後数年の内に変わる可能性はあるとし、Valveはその将来を見据えて『Half-Life: Alyx』にて先手を打ったのかもしれないとも述べる。また、Valveは自身でVRハードウェアを手がけていることが、VRに注力している背景にあるだろうとも。とはいえ、そうした変化は来年の前半に起こることはないとし、大きな市場をターゲットにしているCD PROJEKTとしては、現時点では『Half-Life: Alyx』を脅威には感じていないとした。

なお、同じアナリストからは、CD PROJEKT REDの過去作をVR対応させる可能性についても質問があった。これについて同社は、VRをサポートするにはあらかじめVRを念頭に開発する必要があるとコメント。そして、Nintendo Switch版『ウィッチャー3』のような例はあるものの、過去の作品に取り組むより新たな作品を届けるよう努めているとし、質問の内容について暗に否定した。

今回の質疑応答では、『サイバーパンク2077』のマルチプレイに関する質問もあった。本作はシングルプレイゲームとしてローンチするが、発売後に何らかのマルチプレイモードを追加する計画となっている。マルチプレイの詳細は一切が不明だが、追加的なマネタイズ手段が導入されることが予想され、その点についての質問である。

これについて同社CFOのPiotr Marcin Nielubowicz氏は、同作のマルチプレイでのマネタイズは懸案事項ではあるものの、マルチプレイは開発の初期段階であることから具体的に話せることはないとコメント。CD PROJEKT REDにとって初めてのマルチプレイゲームとなるため、研究を重ねてさまざまな可能性を検討している段階とのこと。ただ、ゲーマーとの関係における基本的なポリシーを変えるつもりはないため、支払うお金に見合った価値が常に提供される、賢明(wise)なマネタイズとなることを想定してほしいと述べている。

また、2020年のホリデーシーズンに発売予定とされているPS5と次世代XboxであるProject Scarlettについて、『サイバーパンク2077』はこれらの次世代コンソール向けにも発売するのかという質問もあった。これについて前出のNowakowski氏は、同社として次世代コンソール向けにゲームを発売していく方針を明らかにしており、各プラットフォームホルダーとも密に情報をやり取りしているとしながら、『サイバーパンク2077』のリリースを含め具体的な計画については話せる段階にないとした。また、何らかのタイトルをリリースするにしても、両コンソールのローンチ時期に発売することはないと明言している。同作はGoogle Stadia向けにも配信予定だが、こちらも2020年4月16日の発売と同時に提供することはしないとのこと。

一方で、CD PROJEKT REDタイトルは常に最先端のテクノロジーを導入しており、パワフルなPC上において常にベストな体験を提供してきたとし、より高いスペックの環境への準備はできているともコメント。そのため技術的な側面からいうと、次世代コンソールへの対応は可能だろうとも述べている。

『サイバーパンク2077』では、『ウィッチャー3』のようにDLC配信にてコンテンツを拡張していく計画となっている。そのため、将来のAAAタイトルはそれらのDLCをすべてリリースした後にならないと発表されないのかという質問も。これに対しては、同社はサプライズを好むため、どの時期に次回作を発表するのかは話すことはできないとした。次世代コンソール版『サイバーパンク2077』についても、もしかするとサプライズとして温めているところなのかもしれない。