DCコミックスのヒーロー「バットマン」が今年生誕80周年を迎え、さまざまな分野にて記念イベントがおこなわれている。バットマンはゲームにおいても人気の題材であり、近年の高評価作品である『Batman: Arkham』シリーズ3作品はSteamにて75パーセントオフセール中。また、Epic Gamesストアでは『LEGO Batman』シリーズと共に配信開始し、現在合わせて6作品が無料配布中だ(関連記事)。
このうち『Batman: Arkham Knight』について、海外にてにわかに注目が集まっている。Steam版に採用されている「Denuvo」が、Epic Gamesストア版には実装されていないという。海外メディアDSOGamingなどが報じている。
Denuvo(Denuvo Anti-tamper)は、Denuvo Software Solutionsが提供しているコピー防止技術だ。ユーザーのアカウントと購入したゲームを紐付けるDRMを保護し、海賊版の流出を防ぐ目的に使用される。一方で、これを導入するとゲームのパフォーマンスに悪影響を及ぼすとの考えが根強く、一部のPCゲーマーからは忌み嫌われる存在となっている。
SteamやEpic Gamesストアでは、ゲームにDenuvoが使用されていれば上の画像のようにストアページに明記している。そこで『Batman: Arkham Knight』のSteamページを見てみると、Denuvoが使用されていることが確認できる。しかし、Epic Gamesストアの同作のページには記載はなく、Denuvoが削除された状態で同ストアにて配信開始されたようだ。ちなみに、ほかの『Batman: Arkham』シリーズ作品では元々Denuvoは使用されていない。
Denuvoの有無が異なる同一の作品を(正規に)入手できる状態となったため、YouTuberのNeonGaming氏が『Batman: Arkham Knight』のSteam版とEpic Gamesストア版のパフォーマンスを比較している。検証に使用されたPCのスペックなどは上の動画の概要欄をご覧いただくとして、まずはゲーム内のベンチマークを実行する際のロード時間を比較。その結果、Denuvoが使用されたSteam版では11.7秒かかったのに対し、Denuvo無しのEpic Gamesストア版は8.2秒。約3秒短い結果となった。また、ゲームを起動する際のローディングもDenuvo無しの方が速く、より顕著な差が現れたという。
検証ではその後、グラフィック設定を1080pでの最高品質と720pの最低品質に分けてベンチマークを実行。フレームレートについてはあまり有意な差は見られなかった。一方でメモリ使用量については、わずかではあるがDenuvo無しの方が少なかったとしている。
こうした比較検証はこれまでにもおこなわれたことがあり、たとえばModderのDuranteことPeter Thoman氏は、Steam版『ファイナルファンタジーXV』にてDenuvoの使用された製品版と、使用されていない同作の体験版で比較。今回と同じように、フレームレートには大きな差は見られなかったが、Denuvo無しの体験版の方がロード時間が短いという結果を見た(関連記事)。ただ、以下のOverlord Gaming氏による検証動画のように、Denuvoはフレームレートにも悪影響を及ぼしているとする指摘も多い。この辺りは作品によって変わってくるのかもしれない。
Denuvoの役割について開発元のDenuvo社は、ゲームの発売直後の売り上げを守ることであるとしている(関連記事)。いつかはクラックされるかもしれないが、それを可能な限り遅らせることで、海賊版によるメーカーの利益の損失を減らそうということだ。そのため、発売からしばらく経ったゲームで、すでにクラックされているものの中にはDenuvoを削除する動きも一部で見られる。
ゲームのクラック状況をまとめているCrackWatchによると、『Batman: Arkham Knight』のDenuvoは発売日のうちにクラックされていたようだ。同作は2015年の作品であり、Epic Gamesストア版にDenuvoを使用しなかったということは、同作にはもうDenuvoは不要であるとメーカーは考えているのだろう。今回の検証結果を受けてユーザーの声が高まれば、Steam版からもDenuvoが削除される流れとなるかもしれない。