『ボーダーランズ3』のリーク情報を扱っていたYouTuberが突如活動停止。販売元がYouTuber宅に調査員を送り込む


自身のYouTubeチャンネルにて『ボーダーランズ』関連コンテンツを扱っているSupMattoことMatt Somers氏。2015年から同シリーズに関連した動画を投稿しており、最近ではシリーズ最新作『ボーダーランズ3』のリーク情報も発信していた。これまでコンスタントに動画をアップロードしていたSomers氏であったが、直近2週間ほどは活動を休止していた。そして8月7日、久しぶりに動画を投稿。『ボーダーランズ3』販売元から動画のテイクダウン措置を受けたほか、自宅に調査員が訪れてきたことを報告している。

https://www.youtube.com/watch?v=gRR-C1OCIWM

Somers氏によると、『ボーダーランズ』シリーズのパブリッシャー2K Gamesより複数の動画に対する著作権侵害通告が届いたほか、Take-Two Interactive(2K Gamesの親会社)から依頼を受けたという民間調査会社の者がSomers氏宅を訪ねてきたという。後述するように、2K Games自身、Somers氏の調査にあたっていたことを認めている。

そして調査員が去ってから数十分後に、彼のDiscord ServerおよびDiscordアカウントが停止。Discordからはメールにて「チート、ハック、もしくは不正入手したアカウントの販売・販促・流通に関わっているため」とアカウント停止理由を説明されたという。こちらについては、Take-Two/2K Gamesが停止要請を行ったのか、Discordの独自判断で行ったのか不明である。Somers氏はチートやハックの販売を否定しているが、IGNは独自のソースをもとに、Somers氏が一時期プライベートDiscordチャンネルの参加特典として、『ボーダーランズ3』のリーク情報を5ドルのメンバーシップ費用と引き換えに提供していたと伝えている。現在そのような記述は見受けられず、事実かどうか定かではない。

IGNやKotakuは2K Gamesの声明文を伝えており、Take-Twoと2K GamesがSomers氏の活動を調査していたことを認めている。同社の声明によると、今回の一件は『ボーダーランズ3』に関連した情報リークの調査の一環に過ぎず、家宅訪問も突発的なものではなく、10か月におよぶ調査を踏まえて決行したものとのこと。そして2K GamesはSomers氏の活動はときとして違法なテリトリーに入り、『ボーダーランズ』コミュニティにとって有害なものであったと伝えている。Somers氏は2K Gamesの商品に関する機密情報をリークすることで収益をあげ、著作権を侵害していたとして、行動に出たという。「彼の行為はただ違法であるだけでなく、ほかのコンテンツクリエイターやファンの新作への期待に対しネガティブな効果を与えていました」。

具体的にどのような情報が問題視されていたのかは明かされていない。ただSomers氏は「匿名の情報提供者」もしくはコミュニティから仕入れた情報をもとに、公式からは発表されていない話題を取り上げたり、考察動画を制作したりしていた。公式発表前から、操作可能なキャラクターが4体となること、放射能汚染のステータス効果が追加されること、『ボーダーランズ2』の新DLCが制作されていることなどを発信してきた。ゲームコードの分析により、『ボーダーランズ2』にレインボーレアリティ武器が追加されることも事前に発見していた。

今回の報告動画にてSomers氏は、未公開情報の多くはゲームのプロモーション動画に含まれていた情報をもとに発掘していったものだと説明している。具体的には、Twitch拡張機能「ECHOcast」を紹介する公式動画の52秒地点に映りこんでいるTwitchユーザー名は実在するアカウントであることがredditユーザーやコンテンツクリエイターなどの手により突き止められ、そのアカウントのアーカイブ動画に紐づいていた『ボーダーランズ3』の映像から、キャラクターのスキルツリーといった未公開情報を拾い出すことができたという。ただ2K Gamesによると、それらの情報は一般公開されていたものではなく、Twitchのセキュリティの抜け穴を悪用することで仕入れたものであると反論している。

また今年7月には、Gearbox SoftwareがTwitchでの『ボーダーランズ3』テスト配信を行った際、プライベート公開のため映像こそ一般公開されなかったものの、サムネイルとして映ったFL4K(ビーストマスター)のスキルツリーがredditや一部動画配信者を通じて広まっていったという事例もある。

そうした公になった映像まで機密情報として取り締まるのか。そう考えたくはなるが、2K Gamesは今回のSomers氏の報告動画について「説明が不十分であり、事実ではない口述も含まれている」とコメントしている。Somers氏が語っていない部分でも、2K Gamesが問題視している活動があるのだろう。2K Gamesは、「Take-Twoと2K Gamesは、セキュリティおよび取引における機密情報の取り扱いと真剣に向き合っています」としたうえで、「情報のリークやIP侵害に対しては、私たちのビジネスおよびパートナーに及ぼす悪影響もそうですが、なにより私たちのファンと消費者の体験を損なわないよう、必要な措置を取らせていただきます」と述べている。

一方、Somers氏は動画制作をしばらく停止するつもりであり、今後の活動予定は未定であると説明している。ひとまず気持ちを落ち着けるため『ボーダーランズ』からしばらく身を引き、『ボーダーランズ3』が発売される9月になってから、そのときの自分の状態にあわせてどうするか考えるとのことだ。

2K Games/Take-Twoが行き過ぎた取り締まりを進めているのか、それともSomers氏が自身にとって不利な情報を伏せているのか。明らかになっていない事項が多いため、なかなか見解を出しづらい。ただ動画のテイクダウンや調査員の手配などは、一部ユーザーの反感を買ったようで、SNS上では『ボーダーランズ3』の購入をボイコットしようという「#BoycottBorderlands3」運動がささやかに始まっている。

Gearbox Software/2K Gamesに対する一部ユーザーの反抗的な姿勢は、今回のテイクダウンだけでなく、Epic Gamesストア時限独占発表や、Gearbox SoftwareのCEOであるRandy Pitchford氏の従業員暴行疑惑(PC Gamer)など、ここ数か月のうちに加熱しやすい話題が続いたことも影響しているのだろう。

なお企業がリーク情報の取り締まりを行った最近の例としては、今年のE3開催前に新作発表を大量にリークしたTwitterユーザーSabi氏が任天堂より停止通告を受けたケースが挙げられる(Nintendo Life)。今回の『ボーダーランズ3』の一件に関して、Take-Two/2K Gamesがさらなる法的措置を検討しているのかどうかは不明である。