『Ooblets』のEpic Gamesストア移行発表への批判は嫌がらせに発展。正当な批判と悪意が入り混じり議論は泥沼に


Epic Gamesは8月6日、Epic Gamesストアでの時限独占販売が決定したモンスター育成&農業ゲーム『Ooblets』およびその開発元Glumberlandに関して声明を発表した。

まず、Glumberlandが本作のPC版をEpic Gamesストアにて時限独占販売すると発表したのは8月2日のこと。その際に同スタジオは、Epic Gamesからの前払いの資金提供のオファーを受け入れたことを明かしており、小規模なインディースタジオの選択として、この点については多くの海外ゲーマーが理解を示していた。ただ、何かと批判を受けるEpic Gamesストアを擁護したり、同ストアや同ストアでの独占販売を決めたデベロッパーを批判するゲーマーに対して口撃もしていたため、ゲーマーからは大きな反発の声も上がった(関連記事)。

こうした強気の発表内容からか、同スタジオはゲーマーからの批判の声に晒されていた。そうした批判はエスカレートし、同スタジオのゲームデザイナーBen Wasser氏のコメントを捏造する者まで現れた。Wasser氏とゲーマーのDiscordでのやりとりを収めたと主張する、フェイクのスクリーンショットやビデオがネット上に拡散されているという。中には、Wasser氏が「ゲーマーにはガス室の中がお似合いだ」などと暴言を吐いたという捏造もあり、同氏はユダヤ人としてこうした発言は絶対にしないし、これが拡散されていくことには耐えられないと述べる。

もはや批判の域を超えたゲーマーの行動が見られたため、Epic Gamesは今回声明を発表するに至ったのだろう。同社はまず、ゲームコミュニティにはEpic Gamesやその製品、ストアに対して、批判を含め自由に発言する権利があり、同社としてもそれを支持すると表明。しかし、今回の『Ooblets』の時限独占販売の発表後には、意図的に作成された上述したフェイク情報や、異なる意見を持つ人への恫喝や嫌がらせなど、不穏な動きが見られると指摘。

同社は、現在多くのデベロッパーと協力し、複数のストアが健全でより競争力を持って存在できる将来を目指しており、その取り組みを続けていくとした。また、この挑戦においてはパートナーをしっかりサポートすることを約束。そして、健全で誠実な姿勢で議論をするすべての人に対して感謝するとしている。

Ben Wasser氏も、8月7日に声明を発表している。同氏はまず、開発ブログやSNSへの投稿は『Ooblets』の雰囲気に合わせた皮肉交じりのトーンで普段からおこなっており、今回の発表にて上から目線でゲーマーを口撃したと受け止められたなら、それは誤解であると述べる。そして、これまではフレンドリーで理解のある身近なコミュニティとだけやりとりしていたため、それ以外のコミュニティが発表をどう受け止めるかについて、十分に考えが及ばなかったと自らのミスを認めている。また、そうしたコミュニティと対話する中では、ジョークを言ったり怒り交じりに返答してしまい、非常に愚かだったと振り返った。

一方で、この数日間には非常に多くのメッセージを受け取っており、その大部分がWasser氏と妻Rebecca Cordingley氏へのハラスメントだったそうだ。『Ooblets』を手がけるGlumberlandは、このふたりだけで運営している。声明の中では、ゲーマーからのメッセージの一部を引用して掲載。その内容はというと、差別的な言葉を用いながら本作を中傷したり、Rebecca 氏を売春婦呼ばわりしたり、また暴行の予告などの脅迫や、自殺するよう求める者までさまざま。そのまま訳すことを躊躇うほど酷い言葉のコメントが多数並ぶ。

開発元Glumberlandの最初の発表は、PRの観点から見ると思慮に欠いた内容だったと言え、それにより批判だけでなく、こうしたハラスメントへと繋がってしまったようだ。中には自業自得だとWasser氏らに言う人もいるそうだが、気に入らない意見だからといって、その人の人生を破壊するような行動は許されるのだろうかと同氏は疑問を呈す。また、そうしたゲーマーは自身の作品の消費者ではなく貸しがあるわけでもないとコメント。そして声明の最後では、サポートし続けてくれているファンと、Epic Gamesに対して感謝の言葉を綴った。

Epic Gamesは今回の声明の中で、これまでの取り組みを続けていく考えを示しており、今後も独占タイトルを獲得していくことだろう。Steamにて発売予定だったものにも、また触手を伸ばすかもしれない。ただ今回の一件では、特にプロのPR担当者のいない小規模なインディースタジオの場合、難しい状況に直面する可能性があることが露呈した。Epic Gamesにとっても、また同社と提携するデベロッパーにとってもこうした状況は避けたいはずで、学ぶべきことの多い事例となったことだろう。