プロダクトキー業者G2Aとゲーム開発者たちの「対話」に進展あり。ただし依然として否定的な声強し

ゲームやソフトウェアのプロダクトキーのマーケットプレイスを運営するG2Aは7月12日、「キーブロッキングツール」を開発者向けに提供すると発表した。G2Aとゲーム開発者らの対立に進展があったようだ。

ゲームやソフトウェアのプロダクトキーのマーケットプレイスを運営するG2Aは7月12日、「キーブロッキングツール」を開発者向けに提供すると発表した。

これは、メディアレビューやゲーマーへのプレゼント企画を目的にメーカーが発行したゲームのプロダクトキーが、G2Aのマーケットプレイスにて転売されることを防ぐためのシステム。メーカーがこのツールを使って配布するキーをあらかじめ登録しておくと、何者かが複数のキーを出品した際に照合がおこなわれ、3本以上該当していた場合は出品が取り消される仕組みだという。ただし、8月15日までに最低100人のデベロッパーが登録した場合にのみ稼働させるとしている。

 

逆風のG2Aによる新提案

G2Aを巡っては、G2Aが運営するマーケットプレイスに出品されるキーの出所が不透明な場合があったり、上述の転売行為や、盗難クレジットカードにて不正購入されたキーの流通が指摘されるなど、インディーデベロッパーを中心にグレーな市場だという認識が広まっており、批判の声を上げる開発者も少なくない。先日には、パブリッシャーのNo More Robotsの代表Mike Rose氏が、メーカーに何の利益ももたらさないG2Aで購入し同社や出品者にお金を払うくらいなら、海賊版をダウンロードしてほしいとゲーマーに訴え話題となった(関連記事)。

このRose氏の発言をきっかけに、G2Aは対応策を打ち出している。まず、メーカーのストアにて盗難クレジットカードを使って購入されたキーがのちにG2Aで販売され、そしてクレジットカード会社のチャージバックによってメーカーが返金を余儀なくされた場合、調査をおこなったのち、G2Aは被害額の10倍をメーカーに支払うとした。

しかしRose氏はチャージバックについては問題にしておらず、根本的な対処としてG2Aはインディーゲームの取り扱い自体をやめるべきだと主張し、Change.orgにて5000人を超える賛同者を集めている。この背景には、インディーゲームの取扱量は全体の8パーセントに過ぎないとG2Aが述べたことにある。そして、G2Aが次なる対応策として開発者向けに打ち出したのが今回のキーブロッキングツールだ。

こうしたG2Aの動きに対しては多くのデベロッパーが意見を発しており、『Factorio』の開発元Wube Softwareも、7月12日の公式ブログへの投稿の中で言及している。同スタジオは、G2Aに対するスタンスとしてはMike Rose氏とまったく同じで、G2Aで『Factorio』を購入するなら海賊版を勧めるとしている。一方で、チャージバックでの被害額の10倍を支払うとしたG2Aの申し出に対しては、受けても良いという考えを示している。

 

正規のキーはどこからきているのか

2016年に『Factorio』がSteamにてリリースされた直後、公式サイトのストアでは300本以上のSteamキーが盗難クレジットカードで不正購入され、同スタジオはチャージバックにより約6600ドルを支払うことになったという。そうした被害にお金を払ってくれるというなら、利用してみようということなのだろう。実際に、無効化したキーをチェックしてもらうためにG2Aに送ったそうだが、これまでのところ返答はないとのこと。

なお、この不正購入事件をきっかけに、同スタジオでは公式ストアの販売システムをHumble Bundleが提供するHumble Widgetに切り替えており、それ以降は不正購入は見られなくなったという。

Image Credit: Steam Database

『Factorio』においては、キーの不正購入がなくなり、また同作はセールをおこなわない方針をとっているため、キーを転売して利益を生むことはできない。しかしG2Aでは依然として、Steamギフトの形で『Factorio』が出品されている。では、出品者はどのようにして利益を出しているのだろうか。開発元Wube Softwareは、ふたつの予想を示している。

ひとつ目は、国ごとの価格の違いを利用したもの。Steamでは、同じゲームでも国によって価値が異なることがあり、たとえば『Factorio』はアメリカでは30ドルだが、日本での価格3000円は約27.8ドルに換算できる。国によっては10ドルを切る場合もあり、安く買える国でSteamギフトを購入し、G2Aで販売して差額を利益にするという手法だ。

もうひとつは、値上げ前のゲームを大量に購入しておき、値上げされた後に売りさばくというもの。特に早期アクセスタイトルの場合、正式リリース時の値上げを予告することがよく見られる。例としては、『Factorio』は2018年4月に定価を20ドルから30ドルに引き上げている。10ドルの価格差がある。いずれにせよ、Wube SoftwareはG2Aがグレーマーケットだという考えは変えておらず、『Factorio』を購入するなら正規の方法で入手してほしいと呼びかけている。

https://twitter.com/RaveofRavendale/status/1149637068101832704

今回G2Aが発表したキーブロッキングツールに対し、前出のMike Rose氏は一定の評価を示している。ただ、本当の問題は“怪しいSteamギフト”がG2Aで販売されていることだと指摘。Steamギフトは不正購入や支払拒否されると、ゲームを有効化されていても受領者のライブラリから削除される。これを悪用すれば、G2Aでの売り上げは丸々出品者の儲けとなる。『Factorio』の開発元は、G2Aで販売されているSteamギフトのほとんどは真正なものだろうと述べているが、Rose氏はBOTをも活用しSteamギフトのシステムを悪用した出品をかねてより問題視しており、これに対応しようとしないG2Aを批判してきた。

キーブロッキングツールについては、『Thomas Was Alone』などで知られるBithell GamesのMike Bithell氏もコメント。出所のはっきりしないキーを購入する消費者を守るのはG2Aの仕事であって開発者ではないとし、上述のSteamギフトの問題についてもRose氏に同意を示す。そして、グレーマーケットに協力する気はないと突き放している。また、『100ft Robot Golf』などの開発元No GoblinのDan Teasdale氏も、事前にすべてのキーをG2Aに送らなければならないという、キーブロッキングツールの仕組みについて驚きの声を上げている。こうした開発者のコメントからは、基本的にG2Aを信用していないことがうかがえ、両者の溝はなかなか埋まることはなさそうだ。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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