PC版『シェンムー3』Epic Gameストア時限独占は変わらず、Steamでは1年後にリリースへ。希望する出資者には返金に応じる


シェンムー3』を開発中の鈴木裕氏率いるYs Netは7月2日、「PC版リワードについてのご報告」を、本作のクラウドファンディングをおこなったKickstarterページに投稿した(日本語版)。

PC版リワードとは、出資者に提供される本作のPC版のダウンロードキーのこと。本作をめぐっては、Kickstarterキャンペーン時にPS4とSteam向けに販売する旨を説明して出資を募っていたが、今年6月に開催されたE3のタイミングで、PC版をEpic Gamesストア独占販売に突然変更したため、出資者から大きな批判を受ける形に(関連記事)。そしてYs Netおよび販売元Deep Silver、Epic Gamesの3社は、「現在の状況を鑑みた上で、皆さんから私たちにいただいている信頼に見合う方法を探ります」と、とりあえずの声明を出していた。

今回発表された“報告”では、まず『シェンムー3』のPC版がSteamからEpic Gamesストアに変更された経緯について説明している。それによると、Ys Netがパブリッシングパートナーとして選んだDeep Silverは、販売マーケティングの面だけでなく、ゲームのスケールアップにも大きく貢献しているとしたうえで、パブリッシング・販売戦略としてDeep Silverと協議した末にEpic Gameストアとの提携を決断したとのこと。

また、本作の開発ではUnreal Engine 4を使用していることもあり、Epic Gamesからもさまざまなサポートを得ていたことにも言及している。ちなみに、Unreal Engine 4採用タイトルをEpic Gamesストアにて販売する場合、売り上げに対するそのライセンス使用料が事実上免除される仕組みになっている。

そして出資者に対しては、本作の発売日にSteamキーを提供することを検討したという。しかし、関係各社の販売ポリシーとの調整が困難だったため実現できず、結果的にKickstarterのリワードであったSteamキーは提供できなくなったとしている。これについては「我々としても想定していなかった」と述べ、Steamキーを希望していた出資者に対して謝罪している。

結果的に、『シェンムー3』のKickstarterキャンペーンにてPC版を希望した出資者は、Epic Gamesストアでのダウンロードキーを発売日に受け取ることで確定した。ただし希望すれば、Steamにて発売される1年後にSteamキーも受け取れるとのこと。また、PS4版へのプラン変更や、返金についても受け付けるとしている。

報告の最後には、鈴木裕氏からのメッセージが掲載されている。

いつも変わらぬご支援をいただき、心から感謝いたします。
公開する情報については、関係各所との調整の兼ね合いもあり、バッカーの皆さまへのご報告がタイムリーに出来ずにすみませんでした。
今回、ようやくEGS独占配信に対してプロジェクトチームで検討した結果のご報告が出来ました。                                            

現在、プロジェクトチームは、ゲームの発売に向けて仕上げの作業に集中しております。お約束した発売日に少しでも良いゲームをお届けできるように頑張っております。
この度の大幅な企画変更に伴い、当初の想定から変更された部分も多々ございますが、全体を通してゲームは強化され、Shenmue IIIは確実に良い方向に変貌を遂げたと確信しています。

今回の報告の中ではこのほかに、Kickstarterキャンペーンにて達成したストレッチゴールについて、その開発状況も伝えている。『シェンムー3』は、PS4/PC向けに11月19日発売予定だ。

【UPDATE 2019/7/3 10:50】

Epic GamesのCEO Tim Sweeney氏は7月3日、『シェンムー3』のPC版がEpic Gamesストアの時限独占販売になることが確定し、Kickstarterキャンペーンの出資者への返金対応などが発表されたことにコメントした。同氏よると、希望者への返金にかかるコストはEpic Gamesが全額負担するとのこと。つまり、本作を手がけるYs Netには負担はなく、『シェンムー3』の開発に影響を与えることはないという考えを示している。

また本作と同様に、ほかのPCゲームストア向けのダウンロードキーの提供をクラウドファンディング時に提示して出資を受け付けながら、のちにEpic Gamesストア独占販売に変更するタイトルが将来現れた場合についてもコメント。Epic Gamesは、そのストアと協力して事前にキーを確保するか、今回のように返金にかかるコストの負担を保証するとのこと。

Tim Sweeney氏は先日、ストア側がゲームの売り上げの3割を持っていく業界標準の収益配分を根本から変えるには、独占タイトルを持つしか方法はないとコメント。Epic Gamesストアよりも多くの機能を持つストアは数あれど、いずれもSteamの規模の5%にも及んでいないことが、独占タイトル戦略を取るに至ったのだという。同氏の今回の発言は、開発元や消費者に配慮しながら、今後もEpic Gamesストア向けに独占タイトルを確保していく姿勢を示した形だ。