Steamサマーセール開始以降、低価格インディーゲームのウィッシュリスト削除件数が急増。「Steamグランプリ2019」が原因か

Steamサマーセール開始以降、低価格インディーゲームのウィッシュリスト削除件数が急増。Steamウィッシュリスト内のゲームをプレゼントする「Steamグランプリ2019」の仕組みが不明瞭であったことが原因ではないかと推測されている。

Steam夏の大型セール「Steamグランプリ・サマーセール」が開幕し(関連記事)、欲しいゲームの整理や物色を始めた方も多いだろう。今回のサマーセールでは「Steamグランプリ2019」というチーム対抗戦のイベントも実施されている。期間中にゲームを購入したり、ゲームを遊んでグランプリ・クエストを完了することでチームに貢献。デイリー1~3位およびグランプリ全体の優勝チームの貢献ユーザーからランダムで、Steamウィッシュリスト内のゲームが無料付与されるという内容だ。

大型セールを盛り上げ、ユーザーの参加を促すイベントではあるが、イベントの仕組みが分かりにくく、思わぬ影響を及ぼすことになった。複数のデベロッパーが、サマーセール開幕以降、自社作品のウィッシュリスト登録削除件数が急増したと報告し始めたのだ。理由が特定できているわけではないが、多くは「Steamグランプリ2019」に原因があると考えている。Steamウィッシュリスト内にあるゲームを無料付与するというイベント内容から、ウィッシュリスト内に高価格のゲームだけを残しておいた方が得と考えたユーザーが、価格の低いゲームをウィッシュリストから削除し始めたというわけだ。

村づくりタワーディフェンス『Rise to Ruins』開発者のRaymond Doerr氏は、過去5年間で、セール期間中にウィッシュリスト削除数が新規登録数を上回ったのは今回が初めてだと報告。スチームパンク飛空挺設計ストラテジー『Airships: Conquer the Skies』開発者のDavid Stark氏も、セールスの4倍のウィッシュリスト削除件数が確認できていると伝えている(該当ツイート)。『Descenders』や『Not Tonight』などのパブリッシャーNo More RobotsのMike Rose氏は、ウィッシュリストから合計で約1500件ほど削除されたと反応している(該当ツイート)。

7月に発売を控えた『Lost Ember』のTobias Graff氏は、発売直前になってウィッシュリスト登録数が減ってしまったことを嘆いている。ステルス2Dアクション『Wildfire』を開発中のDan Hindes氏は、ウィッシュリスト登録件数はローンチ時のストアプレイスメントに影響を及ぼすため、打撃は大きいと指摘(該当ツイート)。Grey Alien GamesのJake Birkett氏は、ウィッシュリスト登録者への通知も、全登録者ではなく登録者の20〜25%ほどにしか送信されなくなったと付け足している。

セール開始にともないウィッシュリストを整理しただけのユーザーもいると思われるが、デベロッパーたちの反応を見るに、削除件数の増加は顕著のようだ。GamingOnLinuxも、複数のデベロッパーから証言を取っている。

こうした混乱を受けてValveは、TwitterおよびSteam Blogにて「Steamグランプリ2019」の仕様を説明した。まず「様々な数字とルールを使った非常に複雑なものであり、もう少しわかりやすくすべきだった」と謝罪。そして「Steamウィッシュリストのアイテムがランダムで当たった場合、トップのアイテムが付与されます。 一番欲しいアイテムをウィッシュリストのトップに移動しておけばOKです。 他のアイテムをウィッシュリストから削除する必要はありません」と明示した。

また現在コーギーチームが独走気味のイベント内容にも、以下の変更を適用している。

・プレイ方法をわかりやすくするため、ドライバーダッシュとマニュアルを改善
・最初の2日間のレースで、チームコーギーの短い足での逃げ切りにつながった雪だるま効果を軽減するために、バックエンドを変更
・異なるチームサイズに対応し、ボード全体でのバランスを調整するために一部のコードを変更
・ドライバーが受け取れるブーストに「ブースト奪取」と呼ばれる新しいランダムドロップを追加。 別のチームが大きくリードしている場合、この攻撃を使って自分のチームのためにブーストを奪取して、差を縮めることが可能

Valveがブログで仕様を説明したからといって、ユーザーが削除したタイトルをウィッシュリストに再登録するとは限らない。Steamでゲームを販売している小規模デベロッパーにとっては、苦い思いが残るサマーセールとなりそうだ。なおSteamでは昨年より大型タイトルの優遇や、アルゴリズム変更による小規模タイトルのトラフィック減が報告されており、厳しい話題が続いている(関連記事)。

ちなみに6月28日時点での「ウィッシュリストから授与されたゲーム」上位に入っているのは『サイバーパンク2077』『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』『OCTOPATH TRAVELER』『Total War: THREE KINGDOMS』。イベント参加者の多くがフルプライスのAAA級タイトルや、それに近い価格帯のゲームをウィッシュリスト上位に登録していることがうかがえる。

(追記 2019/06/28 15:25)
Valveが「Steamグランプリ2019」の仕組みを説明するにあたり、『My Friend Pedro』のウィッシュリスト優先順を下げる様子を動画として利用した点には、パブリッシャーのDevolver Digitalが反応。冗談交じりに、皆は真似するなよ、手を出すぞと警告している。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

記事本文: 1953