Twitch Interactiveが6月14日、同社が運営するライブ配信プラットフォームTwitchの『Artifact』カテゴリを荒らしたユーザーたちを被告人とする訴状を、カリフォルニア州の地方裁判所に提出していたことがわかった(SCRIBD訴状リンク)。身元不明の被告人たちは、商標権侵害・利用規約違反・詐欺・プラットフォームの不正利用の罪に問われている。
『Artifact』はValveが開発・運営するカードゲーム。同社が開発する久しぶりのビッグタイトルということもあって注目を浴びていたが、2018年11月の発売以降プレイヤー人口は下降の一途をたどっており、現在は同時接続ユーザー数100人台にまで落ちている(Steam Charts)。
プレイヤー人口の縮小にともない、同作を配信するストリーマーも視聴者も極めて少ない状態が続いた。Steamを運営しているValveの注目作とは思えない失速ぶりから、悪意あるユーザーに目をつけられ、5月下旬にTwitchの『Artifact』カテゴリが荒らし行為により無法地帯と化す。映画の違法配信やハードコアポルノ、さらには今年3月に起きたクライストチャーチモスク銃乱射事件の映像など、『Artifact』と全く関係のないコンテンツで埋め尽くされていった(関連記事)。
Twitchは訴状の序文にて「Twitchコミュニティの安全を守ることは、我々にとって最優先事項です。そのため、Twitchではわいせつなコンテンツや、暴力・脅迫描写のあるコンテンツを禁止しています。利用規約では、違法、中傷、わいせつ、ポルノ、嫌がらせ、脅迫、濫用、扇動的その他の不快なコンテンツの作成、アップロード、送信を禁じています」と記載している。Twitchは違法コンテンツを削除し、配信者のアカウントをBANすることで対策を取っていたが、荒らし行為を行っていたユーザーはすぐに新しいアカウントを作成し、動画配信を再開。Botを使うことで視聴者数を人工的に増やす者もいたという。そのため違法コンテンツがユーザーの目に触れやすい状態となっていた。
荒らしコンテンツを意図せず視聴してしまったユーザーに不快な思いをさせ、Twitchの利用頻度を下げる、もしくは利用しなくなる要因になったと主張。また被告人の中には「www.artifactstreams.com」というサイトや@TwitchToSというツイッターアカウントを通じて違法動画を拡散する者もいた。これらのサイト/アカウントではTwitchのGLITCH/TWITCHマークが許可なく利用されており、Twitch公式が違法コンテンツを紹介しているように見せていたと主張している。
アカウントBANだけでは制御できなくなり、Twitchは5月28日、新規アカウントでの動画配信を制限するイレギュラー措置に踏み切った。その後は配信を行うアカウントに対し2段階認証を要求するよう変更。それでも被告人たちは作成済みにアカウントや、他ユーザーから購入した別アカウント(第三者からのアカウント購入も利用規約違反)などを駆使して荒らし行為を続けたとのこと。Twitchの主張によると、被告人たちはGoogleやDiscord、Weeblyなどの外部コンテンツにて連携しながら荒らし行為を行っていたため、取り締まりに時間がかかったという。
取り締まりの効果もあって荒らし動画は激減しているが、今でも『Artifact』カテゴリで『PUBG』を配信したり、映画「地獄の黙示録(Apocalypse Now)」を「Artifact Now」との配信名で流したりと、本来の使い方から外れた配信が散見される。一方、実際に『Artifact』をプレイしている配信者はほとんどいない(視聴者数も2桁~3桁どまり)。
Twitchは、法的強制力のあるアカウントの永久BANや損害賠償、裁判費用の支払いを要求。現時点では被告人の身元が特定されていないが、氏名が判明した場合には訴状を修正するとのこと。こうした継続的な荒らし行為は、対策に相当な時間や費用を要するものの、身元特定に至れない場合もあり、損害賠償の請求が困難。それでも、訴状を提出することで他ユーザーに対する抑止力としての働きは期待できるだろう。