『おわかれのほし』Steam版配信が開始。『ひとりぼっち惑星』作者ところにょり氏が奏でるレクイエム

個人開発者のところにょり氏は5月24日、死者を弔うアドベンチャーゲーム『おわかれのほし』のSteam版をリリースした。『おわかれのほし』はひとがもういない惑星で、動かなくなってしまった機械と、機械の子供がおわかれをしていくアドベンチャーゲームである。

個人開発者のところにょり氏は5月24日、死者を弔うアドベンチャーゲーム『おわかれのほし』のSteam版をリリースした。対応言語は日本語と英語。価格は499円。なお、5月4日に先行してスマートフォン版が各種ストアにて公開されており、こちらは480円だ。

『おわかれのほし』はひとがもういない惑星で、動かなくなってしまった機械と、機械の子供がおわかれをしていくアドベンチャーゲームである。本作の舞台となるのは、自らのこと人間だと思っていた機械たちの村。プレイヤーキャラクターで唯一の生き残りである機械の子供は、機械たちの体を借りて操る能力を使い、彼らが持っていた心残りを代わりに果たしていく。遺体を借りると、それぞれが生前持っていた記憶や記録の類が、モノローグとして映し出される。メッセージを頼りに村を彷徨い、未練を片付けるとおわかれの時がやってくる。降りしきる雨。どこにでも落ちている壊れた機械。未だ弔われていない機械たちの亡骸。それらを通り過ぎながら、村の果て───西のはずれにある湖へ向かい、ひとつひとつ弔っていく。

本作でプレイヤーがすることは、ざっくり言って村の中を彷徨ってアイテムを回収したり、イベントを済ませるだけなのだが、特徴的なグラフィックと情緒溢れるテキストが、機械たちの持っていた思いや生前の様子をセンチメンタルに描いており、繊細な物語として紡がれている。声が出せなかった子供の機械。子供を欲しがっていた妻のことを考え、最後まで悩み続けた機械。とにかく掃除が好きで、夫が散らかしてくれることが幸せで仕方がなかった機械。はっこうしたえきたいが飲みたかったという機械など、機械たちがそれぞれ持っているストーリーはさまざまで、時に切なく、時に微笑ましい。また、そんな彼らと湖でおわかれするシーンには、『おわかれのほし』ならではの体験があるように思う。

本作の音楽はゲーム音楽に加えて、広告音楽や舞台音楽などを手がける作曲家soejima takuma氏が担当。全21曲、操っている機械ごと、シーンごとに用意された感情豊かなBGMが、本作の世界観に彩りを加えている。どこか哀愁漂う美しいサウンドから、楽しげで軽快なメロディーまで。機械たちの性格を巧みに表現したBGMも、本作の魅力を語る上で外せない要素だ。

『おわかれのほし』の作者ところにょり氏は、本作以外にひとがもういない世界観が共通の『ひとりぼっち惑星』『あめのふるほし』など、多数のアプリを公開している。Steam版があるのは『おわかれのほし』だけだが、本作を通じてところにょり氏のセンスが気に入った方には、是非過去作もチェックしてみてほしい。

Keiichi Yokoyama
Keiichi Yokoyama

なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。

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