SFアダルトRPG『Subverse』開発中。アダルト界のハードコア・クリエイター集団が、熟練の乳揺れ物理を引っ提げてゲーム業界に殴り込み

StudioFOWが開発するSFアダルトRPG『Subverse』が、Kickstarterにてプレッジ額1億円を超える人気ぶりを見せている。アダルト界のハードコア・クリエイター集団が、エロもゲームも高品質の作品を目指すという野心作だ。一方で「Subverse」という名称を巡ってトラブルも発生している。

アダルトCGアニメーションのクリエイター集団StudioFOW。少数精鋭のハードコアHENTAIフィルムメーカーとして知られ、2018年12月にPatreonから追放される前には、同サイトのトップ25グローバルクリエイターリストに名を載せるほどの強固な支持基盤を確立していた。そんなアダルト業界の猛者が本気でゲームをつくるという『Subverse』プロジェクトには、ド熱いまなざしざ注がれている。

現在実施中のKickstarterキャンペーンは、本稿執筆時点で出資者数なんと2万7000人以上。目標額10万ポンド(約1450万円)を大幅に上回る83万6000ポンド(約1億2000万円)を集めることに成功している。

 

銀河ハーレム革命

『Subverse』は、セクシーなエイリアンたちと一緒に銀河を駆け巡る、おバカでおエロいSFアダルトRPGである。太古の昔から人類は、光り輝く星々を眺め、広大な宇宙に想いを巡らせてきた。我々はこの宇宙で唯一の知的生命体なのだろうか。銀河の彼方には何があるのか。そして何より、我々は宇宙のどこかにいるかもしれない異星人と、はたして性交できるのだろうか。そうした人間としてしかるべき好奇心から生まれたのが『Subverse』プロジェクトである。

プレイヤーは宇宙船メアリー・セレスト号のキャプテンとして、広大な銀河系「プロディジウム」を探索する。この銀河系は、エロいことが大嫌いな、禁欲的種族に支配されている。ここまで話せば、成すべきことはおのずとわかるだろう。そう、脳殺必至のセクシーWaifu軍を率いて現体制を転覆(subverse)し、ハーレム革命を起こすのだ。

旅路をともにするのは、銀河系でもっともセクシーかつ卓越した戦闘能力を有するエイリアンWaifuたちだ。なぜかそろって胸元を強調するような服装をしている。もちろんStudioFOWらしいヘンタイ精神も忘れておらず、恒久的な強直状態にある六睾丸体のインプが宇宙船のメカニックとしてお供してくれる。

 

タクティカルRPGと全方位シューティング

エロではなくゲームのジャンルとしては、ターン制のタクティカルRPGと全方位型シューティングゲームのハイブリッドとなっている。グリッドベースのターン制バトルでは、それぞれ固有のアビリティを有するエイリアンWaifuたちによる戦闘部隊を編成し、宇宙海賊や賞金稼ぎ、セックスボットたちを排除していく。敵勢力は約10種類。それぞれ異なる戦略や攻撃手段で攻め込んでくる。公開されている画像からは、巨大な電気マッサージ器を抱えた兵士や、四足歩行型ディルドメックが確認できる。なお自軍で戦ってくれるのはWaifuたちだけではない。冒険中に集めたDNAサンプルから、MANTICORESと呼ばれる生物兵器を生み出すことができる。

シューティングパートでは、戦闘機F3N1Xを操縦。さまざまなアップグレードを活用しつつ、全方位からやってくる敵機を撃破していく。こちらのパートでは、Waifuが副操縦士としてプレイヤーを支援してくれる。戦闘機に乗ってもらうWaifuによって、異なる補正効果が発生するほか、異なる特殊武器を使用できるようになる。なおStudioFOWいわく、Hentaiゲームにおいてはプレイヤーが失敗することで色気要素が解除されるケースが多いが、『Subverse』においては戦闘結果が良いほど、そしてWaifuに話しかければ話しかけるほど、優れた報酬を得られるという。

 

Waifuの戦闘と性交

会話パートでは、Waifuたちの生い立ちを知り、交友を深め、信頼を得ることで、彼女たちと戦闘だけでなく性交を通じてつながり合えるようになる。Unreal Engineを用いたフル3Dモデルの乳揺れ物理は、Waifuたちの感情表現に不可欠な要素だという。とはいえ、主人公の身体だけで全てのWaifuを悦ばせることは困難。そこで生物兵器MANTICOREたちが誇らしげに持つ別の兵器を使い、Waifuたちを満足させるのだ。なお作品の肝となるWaifuたちは計10体。3Dアーティストとして活躍しているDzung Phung Dinh氏の手により、さまざまな種族、さまざまな属性のWaifuが生み出される。

現在公表されているものでいうと、違法セックスボットのDEMIは、宇宙船のメインフレームアンドロイドとして、宇宙船のメンテナンスから異星人間の通訳まで、あらゆる面でキャプテンを支援してくれる。闇医者のLILYは、遺伝子操作実験によりMANTICOREを生み出す。ただし実験体の「耐久力テスト」中には、研究所にこっそり入らないよう要注意だ。宇宙海賊の女王KILLISONは、破壊欲あふれる好戦的なWaifu。そしてサイバー犯罪により名を馳せた天才ハッカーFORTUNEは、無礼ながらもその確かな実力により、諜報員として貢献してくれる。そのほか銀河を旅するなかで、煩悩を呼び覚ます個性豊かなWaifuたちと出くわすことになる。

Kickstarterのキャンペーンページでは、公表済みのWaifuたちの色気あるサンプル台詞を音声付きで確認できるので、気になる方は要チェック。主人公であるキャプテンの「彼女はめちゃくちゃ怖いんだけど、それがまためちゃくちゃそそるんだ!」という台詞サンプルからは、彼の性癖が垣間見れる。

エロだけでなくSFコメディとしても力を入れており、キャラの濃い変態や常軌を逸した悪党たちが登場する、メタ視点ジョーク炸裂の物語が展開される。またメインストーリーだけでなくサイドストーリーをこなすことで戦利品を入手。宇宙船をアップグレードしたり、ポルノ雑誌を購入できる。物語の舞台となる銀河系プロディジウムは5つの区域に分かれており、それぞれイベントが発生する何百もの惑星が存在している。ワープゲートを使いつつ銀河系を旅し、戦利品を集め、仲間を増やしていくのだ。

 

多彩なラブシーン

Kickstarterキャンペーンのプレッジ額はすでに83万6000ポンド(約1億2000万円)にまで達していることから、ストレッチゴールはほぼ全て達成済み。ゲーム本編は10チャプチャー/30時間相当のコンテンツとなり、追加Waifuとしてキャットガールとイカ娘(正式名称未定)、そしてStudioFOWの看板キャラFow-Chanの実装が決定している。

また全Waifuを対象としたフルアニメーションのラブシーン増加、ラブシーンを含むフルボイス対応、StudioFOWの代名詞でもあるエイリアンとWaifuとの絡み、Waifuのキャラクターを掘り下げるロイヤリティクエストの実装、StudioFOWスタイルのシネマティック映像、宇宙船メアリー・セレスト号のカスタマイズ機能、そして同人作家によるコミカライズまで、ストレッチゴールとして達成している。ラブシーンにおける「ふたなり」オプションは確定、「妊娠」オプションについてはKickstarterの結果と予算次第とのこと。
2019/04/20 10:40 追記:「ふたなり」オプションはいくつかのラブシーンにて提示されるもの。永続的にふたなりであり続けるかどうかは、まだ検討段階)

Fow-Chan

Kickstarterキャンペーンのバッカ―には、10ポンド以上の出資でゲームの早期アクセス版、50ポンド以上でデジタルアートブック、175ポンド以上でゲーム内のナイトクラブ「Studio 69」へのアクセス権といった風に、さまざまなリワードが用意される。750ポンド以上出資すると、ゲーム内のラブシーンをひとつデザインできるということで、妄想たくましいフェティッシュ全開のコンテンツが期待できそうだ。

 

全てを注ぐ「プレミアム・アダルトゲーム」

マネタイズ手段については、Pay to Winやルートボックス(StudioFOWは「Gacha$hit」と表現している)を採用せず、コスメティックアイテムの販売に限定するという(本作にはWaifuの外見をカスタマイズする機能が用意される)。販売プラットフォームに関しては、「このままゲイブについていく」ということで、Steamでの販売が予定されている。Steamは現在成人向けの性的コンテンツを容認しており、そうした背景を汲んでいるのだろう。

StudioFOWはこれまで4年間でアダルトフィルム16本、ショートフィルム30本をリリースしてきた。そんな彼らが「これまでに学んだ全てを注ぐ」という野心作『Subverse』は、今夏Steamにて早期アクセス販売を開始する予定だ。

 

「Subverse」の商標登録を巡るトラブルも

ただ全て順調というわけでもない。米国では「Subverse」という名称は、ジャーナリストのTim Pool氏が運営する独立ニュースサイト(subverse.net)およびインタビューを中心とした動画コンテンツを扱うYouTubeチャンネルSubverseとして商標登録されている。そのためStudioFOWが米国にて『Subverse』という名称のまま作品をリリースする場合には、訴訟に持ち込む可能性があると、Tim Pool氏は説明している。

現にPool氏が4年間運営してきたSubverse.netは、SEO面でかなりのダメージを受けている。これまで構築してきた「Subverse」というブランドイメージが崩れ、インタビューを申し込んでも断られるケースが増えているという(インタビュアーであるSubverseがどういうサイトかGoogle検索しても、アダルトゲームの情報しか出てこなくなったため)。仮に法廷闘争に持ち込み、米国における商標登録に基づく主張が通ったとしても、このまま「Subverse」というブランド名で活動を続けるかぎりジリ貧。厳しい未来が待っている。Pool氏自身、「アダルトゲームには勝てないと、認めざるを得ない」と語っていた。氏はStudioFOWに直接交渉を持ちかけたものの、無碍に突き放すような返事が返ってきたということで、穏便な解決は見込めなさそうだ。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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