『Call of Duty: WWII』の賭け試合から始まり死者を出した「Swatting」実行犯に、懲役20年の判決が下される
『Call of Duty: WWII』での、たった1.5ドル(約170円)の賭け試合を発端に引き起こされた「Swatting(スワッティング)」の結果、アメリカ・カンザス州ウィチタに暮らすまったく無関係の人物が警官に射殺された事件について3月29日、Swattingを実行した26歳の男に懲役20年の判決が下された。AP通信などが報じている。
事件の発端となったのは、『Call of Duty: WWII』のマルチプレイだ。海外では賭け試合をおこなうコミュニティがいくつも存在し、そのひとつに参加していたCasey VinerとShane Gaskillとの間で試合中にトラブルとなる。ふたりは知り合いだったようで、VinerはGaskillから自宅の住所を聞いていた。そして、Vinerは賭けに負けた腹いせに、Tyler R. BarrissにGaskillへのSwattingを依頼したのだ。このBarrissが、今回判決が下った被告である。
Swattingとは、犯罪行為をほのめかす虚偽の通報をして、他人の家や公共施設などに警察部隊を出動させる行為のこと。通報を受けた警官や特殊部隊は、当然犯罪行為が進行中であることを前提に武装しており、強行突入することもある。Swattingは、そうした様子を楽しむ悪戯目的もあれば、何らかの報復や脅し目的でおこなわれることもあり、著名なゲーム配信者が生配信中にSwattingされた例もある。被告Barrissは、数々のSwattingや虚偽の爆破予告をおこなっていた常習犯で、依頼を引き受けてお金を稼いでいた人物だった。
Vinerからの依頼を受けてSwattingを実行したBarrissだったが、伝えられたGaskillの住所に住んでいたのはまったく無関係のAndrew Finch氏だった。武装した警察の突然の訪問を受けた彼は、不用意にも腰のあたりに手を伸ばしたことで、銃を取り出すと判断され射殺されてしまった。これを受け、Barrissを含む関係者3人は逮捕される。Barrissについては本件を含む51件の連邦法違反により、昨年11月に有罪が確定(関連記事)。そして今回、10年以上という量刑ガイドラインを超える、最低20年の懲役に処する判決が下された。
*今回の判決を伝えるABC Newsのニュース映像
法廷にてTyler R. Barrissは、28歳という若さで2人の子供を残して亡くなったAndrew Finch氏の家族に謝罪。そして、取り返しのつかないことをしてしまったとし、事件の全責任を取ると述べたという。またBarrissの弁護士は、彼が“Serial Swatter”になった背景として、幼くして父親を亡くし母親に捨てられた過去や、ゲームコミュニティに依存していた生活に言及している。なお、今回の事件の大元となったCasey VinerとShane Gaskillは無罪を主張していたが、Vinerはその主張を変更するという。そしてGaskillの公判については、4月23日におこなわれる。
今回の判決を受けてFinch氏の家族は、Barrissには相応の処分が下されたと評価する一方で、ウィチタ市とFinch氏を射殺した警官を訴えており、警察の責任も追求する姿勢を見せている。ただ、検察は警官に対しては不起訴処分にしたとのことだ。
Barrissに下された最低20年の懲役刑は、あくまでこれまで重ねてきた51件の関連する犯罪行為を合わせて判断されたものであるが、特に銃社会のアメリカなどにおいて、Swattingはその被害者にとって、そして首謀者にとっても冗談や悪戯では済まされない重大な結末をもたらすことを知らしめることとなった。