韓国にて、宗教的兵役拒否者の判断基準に「FPSゲームのプレイ履歴の有無」が追加される。宗教への信仰深さを確かめるため
韓国検察が、宗教的兵役拒否者を判断する基準のひとつとして、FPSゲームのプレイ履歴の有無を調査しているようだ。複数の韓国メディアが同情報を報道している。
韓国では兵役法が定められており、満19歳のすべての成人男子を対象に、最低でも18か月の兵役義務が課せられる。基本的には19歳の時点で入隊することになり、大学への進学や何らかの活動などやむを得ない事由がある場合、28歳までの入隊が義務づけられている。国のためにも早めに兵役を済ませておくべきという考えから、兵役を済ませていないと就職において不利になるという側面もあるようだ。
兵役が免除されるのは非常に稀なケースで、検査によって兵役が不可能であると判断された場合のみだ。つまり芸能人であっても28歳までには兵役による活動休止を強いられる。もちろん、eスポーツシーンにおいても大会で優秀な成績を収めるなどして兵役免除された前例は存在しない。中には兵役を逃れるため、国籍を破棄するなどして不当に兵役を拒否する「兵役逃れ」をする者もいるようだ。
兵役を拒否する理由の一つに「良心的兵役拒否」というものがある。これは決して逃避的なものではなく、その者が戦争を悪と断じていたり、自己の政治的・思想的な信条に従って兵役につくのを拒否することを指す。宗教上の理由により兵役を拒否した者も同様である。1950年以降、約1万9000人が良心的兵役拒否により実刑判決を受けている。しかし昨年11月1日、韓国の最高裁判所は良心兵役拒否者58名に無罪判決を下し、刑務所から仮釈放されたと報道された。これは前例を覆す判決であり、現在進行中の良心的兵役拒否をめぐる裁判にも影響が及ぶと予想された。
良心的兵役拒否をめぐって進行中の裁判は930件にものぼり、これら全てに公正な判決を下すことは極めて難しいと言えるだろう。こういった状況を深刻に受け止めた検察は、昨年12月に信念の信憑性を確かめるための判断指針を10項目設けた。その中でも具体的な指針となるのが、「被告が教理を熟知して徹底的に従っているのか」、「被告人の信仰期間と実際の宗教的活動」、「被告人の家庭環境、成長過程、学校生活、社会経験など全般的な生活の様子」だ。
しかし、これらの判断指針を設けても、信念がどれだけ深くしっかりとしたものなのかを判断するのは困難であるという。そこで検察は一つの判断要素として、兵役拒否者がFPSゲームへアクセスしていないかを確認しているようだ。FPSゲームは一人称視点で銃器を用いて戦闘するというゲーム性で、代表的なFPSタイトルは『Counter-Strike: Grobal Offensive』などが挙げられる。その派生として、最後の1人まで生き残ることを目的としたバトルロイヤルである『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』や『フォートナイト』なども流行している。そういったゲームをプレイするのは、銃を扱うことを拒否する宗教的な信条に反しているという検察側の考えである。韓国メディアNews1の報道によると、済州地方検察庁は宗教的兵役拒否者12名に対し、韓国国内のゲーム会社への会員登録状況を確認しているようだ。
さらに韓国メディアchosunの報道によれば、済州地方検察庁の関係者は「ゲーム会社に対して事実確認の申請を送った」「もしも拒否者が『PUBG』をはじめとするFPSタイトルを毎晩楽しんでいるならば、信憑性は認められないと見ざるを得ない」と話しているとのこと。FPSタイトルで銃器を用いて戦闘するのはあくまでゲーム内の表現だからこそであり、これはゲーマー共通の認識と言える。しかし韓国の法で定められた兵役を拒否するための厳格な判断基準を定めるとなれば、このような決定も避けられないのだろう。