報じられ続ける『フォートナイト』の中毒性と青少年への悪影響。つくり手が用意する「ゲームをやめさせない」技術と付き合っていくための「やめさせる」術

『フォートナイト』にハマりすぎた子供たちをカウンセリングやセラピーにつれていく。ゲームの中毒性は、『フォートナイト』に限らず繰り返し報じられてきたトピックであるが、つくり手によるゲームをやめさせない技術が向上するにつれて、やめさせることは難しくなっていくのではないかと、考えさせる一面もある。

子供たちが『フォートナイト』にハマりすぎてしまうことを問題視する報道は、同作の人気が急上昇した2018年2月~3月ごろから海外メディアにて顕著になり始めた。先日にも経済・金融誌Bloombergが、『フォートナイト』に熱中しすぎて学校の成績が落ちた、日常生活に支障をきたしているといった理由により子供たちをカウンセリングやグループセラピーに連れて行く親がいることについて報じている。ゲームの中毒性と青少年への悪影響という、何度も繰り返されてきたテーマではあるが、ゲームを遊び続けてもらうための工夫・技術が発展するにつれて、徐々にゲームにハマり過ぎやすくなってきているのではないか、という可能性について考えさせる一面もあった。

Bloombergにて例としてあげられているのは、17歳の息子が1日12時間を『フォートナイト』に費やしているせいで、学校の授業中に居眠りしたり、成績が下がったりと実生活上の悪影響が出ているといった、ゲームの中毒性を問題視する際にはありがちな内容となっている。このようにひとつひとつの事例の概要を抜き取るだけでは、これまでに同様の理由で問題視されてきたゲームとどう違うのか、あまりピンとこない。むしろ記事内で注目したいのは、精神科医として中毒的なゲーマーを患者として受け持ち、長年にわたり問題と直に触れ合ってきたPaul Weigle氏の言葉である。氏はゲームが持つプレイヤーをやみつきにさせる力が増すにつれて、ゲームの中毒性の問題は徐々に大きくなっていくと語っている。ゲームの「やめさせない」技術が上がっているから、「やめさせる」ことが難しくなっていっているというわけである。

一方で、遊びを通じたコミュニケーション、問題解決、状況把握、創意工夫など、ビデオゲームから学べることは多い。米国の情報番組「Good Morning America」が同作の中毒性を問題視する特集を今年3月に流した際も、番組に出演した臨床心理士Jonathan Fader氏が、『フォートナイト』で求められるコミュニケーションの多さを、ゲームを遊ぶメリットとしてあげていた(関連記事)。別件で子供のために親が『フォートナイト』のコーチを雇うという事例が報告されているように(関連記事)、親目線でゲームをポジティブに捉える動きもある。

とはいえ、なんであろうとはまりすぎれば何かを犠牲にすることに変わりはない。過去には『フォートナイト』にはまりすぎた事例として、バンクーバー・カナックスのプロアイスホッケー選手が『フォートナイト』に熱中しすぎてチームミーティングやディナーに参加しなくなったことが報じられていた。結果としてカナックスでは、シーズン中に『フォートナイト』をプレイすることをチームとして禁止した(USAToday)。

この一件を踏まえたインタビューにて、NHLトロント・メープルリーフス所属のZach Hyman選手は、「『フォートナイト』そのものが問題だとは思っていません。人は何にだって中毒になってしまう可能性があります」とコメント。1日12時間ゲームをプレイしていればゲーム中毒だと言えるし、毎晩オールナイトでパーティーに出かけているのであればパーティー中毒だと言えると語り、チームとして『フォートナイト』を禁止する必要は感じないとの意見を述べていた。一方で、同チームのJake Gardiner選手は、遠征中はチームメイトと時間を過ごすべきであり、ビデオゲームは手に負えないためチームとして禁止されてもかまわないというコメントを残している。

「ビデオゲームは手に負えない」。ビデオゲームの中毒性は長年にわたり問題視されてきたものであり、『フォートナイト』固有のものではない。はまりすぎないよう管理するのは本人の責任であり、親の役割でもある。ただし、テクノロジーやデバイスの進化にともないゲームにアクセスしやすくなったり、頻繁なアップデートにより遊び続けてもらうための工夫が巧みになったりと、つくり手による「やめさせない」技術は向上していっている。それはゲームとして良い一面ではあるものの、ゲームに熱中しすぎないために自身をコントロールすることが、より難しくなっているということでもあるのかもしれない。そのように、個人や親の力でコントロールすることが難しくなっていくからこそ、リハビリテーションやカウンセリングといった第三者による手助けの需要が高まっているのだろう。先述したBloombergが一例として挙げているのは、米国カリフォルニア州で子供たちを対象としたカウンセリング活動を行っているMichael Jacobus氏。子供たちにテクノロジーデバイスのない状態で生活してもらい、健康的な食生活、規則正しい睡眠、そしてグループセラピーを使って改善を試みているという。

ビデオゲームは手に負えないと欧米国で繰り返し報じられている中、中国の業界大手テンセントが未成年者を対象としたゲームプレイ時間の制限を発表。公安データベースとの照合や顔認証を使った対策として、12歳以下のプレイヤーには1日1時間(午後9時~午前8時までのプレイは禁止)、13歳から18歳までのプレイヤーには1日2時間という制限を課すよう、段階的な規制が計画されている(Wall Street Journal)。半ば強制的にプレイ時間を制限する取り組みである。つくり手による「やめさせない」技術の向上のカウンターとしての、「やめさせる」ための技術。これは極端な例であるが、個人の力でコントロールできないのであれば、今後そうした「やめさせる」ための対策がある程度は求められていくのかもしれない。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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