『レインボーシックス シージ』表現規制後のとある発表が波紋を呼ぶ。一部ビルドを分岐することを明かし、不満の声が殺到

アジア地域への展開を視野に入れ、ゲーム内の一部表現に調整を加えることが発表された『レインボーシックス シージ』。当初は単一ビルドとして運営していく旨がアナウンスされていたが、後日開発陣より一部リージョンにてビルドを分岐することを検討しているとの説明がなされ、コミュニティ内で不満の声が殺到している。

Ubisoftは先週、公式ブログにて『レインボーシックス シージ』のアジア地域への展開を拡大するべく、ゲーム内の一部表現に調整を加えることを発表した。しかし、その後Redditにて一部のビルドをいくつかに分割し、特定地域は別のクライアントで運営することも視野に入れている旨を明かした。これに対し、「何のための表現規制だったのか」とUbisoftを批判する声がUbisoft公式フォーラムやRedditなどに多く集まり、大規模な騒動へと発展している。

『レインボーシックス シージ』のマップやアイコンから取り除かれた暴力、ギャンブル、性的表現などは、中国のゲーム販売において禁止されているコンテンツ(参考:Niko PartnersアナリストDaniel Ahmad氏のツイート)と一致している。よって公式ブログで発表された表現規制についての見解は、『レインボーシックス シージ』を中国をはじめとするアジア地域に展開する準備として、ゲームの販売に関する厳密なガイドラインに準拠するための処置だと思われていた。これに併せて「本作の単一ビルドを維持してグローバルバージョンのゲームとして運営していく」という旨も記載されており、それによって開発チームの負担軽減やゲームに生じた問題の早期解決を図れるなどのメリットも生まれるとされていた。

しかし、この表現規制に対してコミュニティはあまり良い反応を示さなかった。Ubisoft公式フォーラムやRedditでは、『レインボーシックス シージ』のゲームプレイへの影響を懸念する声や、Ubisoftの運営方針を疑問視するユーザーの声が溢れた。同作の中国への展開を見据えて視覚的表現の調整に踏み切ったことで、「既存のプレイヤーの意見よりも新規地域の開拓が優先される」と不満を持つユーザーが多く現れた。

その後、それらの不満を和らげるため、同作のコミュニティマネージャーがRedditに投稿した内容がさらに波紋を広げることとなる。内容は「ゲーム内のいくつかの要素に関しては、今後は単一ビルドとして維持することが難しいことを認識しているので、一部リージョンでは少し異なるビルドとして運用していくことになる。分岐したビルドは可能な限り平行に保っていく。現在のゲームの中核やゲームプレイの品質を損なうことはない。」といったものだが、これが火に油を注いでしまう形となった。

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inRainbow6

「単一ビルドを維持してグローバルバージョンで運営する」といった当初の発表内容からすると、一部のユーザーからの批判は呼んでいるとはいえ、中国の規制に準拠するための表現規制は順当なものと思える。しかし、その後Redditで発表されたように「一部のコンテンツがいくつかのビルドに分割される」のであれば、そもそも何のために『レインボーシックス シージ』の表現規制に踏み切ったのかは疑問が残る。わざわざ既存プレイヤー全体に影響を及ぼす形で表現規制を実施するのではなく、現行ビルドで問題が生じる地域にのみ別バージョンを提供すれば良いのではないか、という声が殺到している。

地域ごとにゲームクライアントを分割して提供する理由のひとつとして、課金を伴うルートボックスをはじめとするギャンブル性を伴う有料コンテンツが規制されている国に対し、それに該当しない公平なサービスを提供するためといった見方もある。しかし、表現規制直後にビルド分岐を発表したことを考えても、Redditでの発表がルートボックスなどの課金システムについての言及だと捉えるのは困難である。一連の流れから『レインボーシックス シージ』の表現規制の意図がまるで見えず、コミュニティが動揺しているというわけである。

直近の『レインボーシックス シージ』におけるSteamのユーザーレビュー欄は、否定的な意見が圧倒的に増加している。やはり今回の表現規制の件が大きく影響していると考えられるが、これらの意見はゲーム自体の運営体制への言及にまで発展している。チートをはじめとする不正行為をおこなうプレイヤーへの対策が十分に講じられていないことや、バグ修正に対して大々的なコンセプトは何度か発表されたものの、長時間経った今も解決に至っていないことなど、このタイミングでユーザーの様々な不満が露わになっている。事の発端である「表現規制」自体が、同作のチート問題に何かと関わり合いになることが多い中国に向けた変更であるという点も大きいだろう。

『レインボーシックス シージ』は2015年のリリース以降、今なおユーザー数を増加させ続けており、現在の累計プレイヤー数は4,000万人を超えている(PCGamesN)。プレイヤー層を広げること、ましてやサービス地域の拡大は、ゲームタイトルのさらなる発展を助長するものだ。しかし、今回の中国をはじめとするアジア地域への展開によるコミュニティへの反響は、良くも悪くも大きいものだ。まずは表現規制の意図をハッキリと示したうえで、単一ビルドでのグローバルサービスへの移行を慎重におこなってほしいところだ。プレイヤーにとって不満の少ない環境が整うまでそれなりの日数を要するだろうが、『レインボーシックス シージ』プレイヤーが納得できる形で議論が収束することを願いたい。

Akinori Matsushita
Akinori Matsushita

PCゲームをジャンル問わずプレイ。あらゆるタイトルを興味本位で追い続けた結果、好きが高じて個人ゲームメディアを運営するまでに。主にニュース全般を担当。

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