『Fallout 76』が発売するまで生きられないかもしれない。悲しむ末期がんの少年に、Bethesdaがプレゼントを届ける

シリーズ最新作『Fallout 76』は、ファンから大きな期待を集めている。アメリカ・バージニア州に暮らす12歳の少年Wes君もそのうちのひとり。しかし、Wes君は神経芽腫と呼ばれる小児がんを患っており、『Fallout 76』発売までは生きられないかもしれないという不安を抱えていた。

Bethesda Game Studiosは9月21日、『Fallout 76』をイメージしたカスタムデザインのXbox One X本体のチャリティオークションの案内を公式SNS上に投稿した。これは、難病を抱える3歳から18歳未満の子どもたちの夢をかなえる事業をおこなう非営利団体Make-A-Wishとマイクロソフトが実施している取り組みで、賛同企業のひとつとしてBethesdaも協力している。

そして、このツイートに対してあるファンから、末期症状の難病患者に『Fallout 76』を発売前にプレイさせてあげてはどうかと提案する声があり、同社のマーケティング部門を統括するPete Hines氏は「つい最近おこなったところだよ」と回答している。それは、アメリカ・バージニア州に暮らす12歳の少年Wes君のことのようだ。

Wes君は、神経芽腫と呼ばれる小児がんを患っている。彼が最初に神経芽腫だと診断されたのは5歳の頃。それからニューヨークにある病院に通いながら治療を続けるも、5回の再発を繰り返し、いまや人生の半分以上をがんと付き合っている。彼のがんは脊髄周辺にも転移し、身体が成長するに従って麻痺を引き起こすおそれがあるため、腫瘍摘出手術などの治療もおこなわれたが、現在もっとも症状が進行したステージ4だと診断されているという。

Wes君は放射線治療を続け、医学的には一定の効果が見られていたものの、彼の身体への負担は大きかった。そして今年9月初旬、主治医はこれ以上の治療はWes君を助けることよりも、むしろ傷つけてしまうことになるとして、治療を中断したいと彼の家族に提案する。そして、打ちひしがれながらも提案を受け入れた家族がそのことをWes君に告げると、彼は「No no no」と言って涙を流したそうだ。家族は、これまででもっとも酷いことを彼にしてしまったが、そうせざるを得なかったとし、自分たちが置かれた状況を受け入れるのが辛かったとその時のことを振り返る。ただ、7年半通った病院から家に戻ったWes君は、もう怒ったり怯えたりはせず、家族のために笑顔を絶やさないで過ごしているという。

Fallout 76: Power Armor Edition

それから数日後、Wes君は『Fallout 76』が発売される11月まで生きていられないかもしれないことに気づき、家族に泣いて伝えたという。彼は、同作が発表されるやいなや限定版の「Power Armor Edition」を予約するほどの大のFalloutファンで、同作をプレイすることが叶わないかもしれないことは、それから毎日のように口にしていたそうだ。

そして、このことが仲介者を経てBethesdaの耳に入ることとなる。アシスタントディレクターのMatt Grandstaff氏が、同社のあるメリーランド州から車を4時間飛ばして、Wes君の家をサプライズで訪問したのだ。その手には、『Fallout 76』を手がけるTodd Howard氏のサインが入ったPower Armor Editionの試作品があった。Grandstaff氏はさらに『Fallout 76』のゲームも持参しており、Wes君は数時間にわたって同作を楽しんだという。まだ開発途中のバージョンだったため、Grandstaff氏は一家とその日を過ごしたあとゲームだけは持ち帰ることとなったが、わずかな時間だけでも『Fallout 76』をプレイできたことで、Wes君はとても幸せそうだったとのこと。

家族が公開した写真には、プレゼントされたVault BoyのTシャツを着て、Power Armor Editionに同梱されている原寸大のT-51パワーアーマーヘルメットで遊ぶWes君の様子が収められている。ちなみに、写っている青と黄色のFalloutカラーのヘッドフォンは、Wes君が普段から愛用しているSteelSeries製の公式モデルである。彼が『Fallout』シリーズの大ファンであることがうかがえるアイテムだ。

左端の男性がBethesdaのMatt Grandstaff氏 Image Credit: Wes’ Fight Against Neuroblastoma
海外では、17歳以上対象の『Fallout 76』を、12際の子供がプレイすることについて指摘するコメントが一部で見られる。ただ余命短い子供の希望で、また親が見ている前であり、咎めるべき事ではないのではないだろうか

今回、Bethesdaの訪問を受けたWes君の家族は、同社と仲介者に対して感謝の言葉を述べ、そしてWes君の望みのひとつを叶えてあげられたことは、とても大きな意味があることだと綴っている。そして、ニューヨークでのWes君の治療は中断したが、今は一緒に家で過ごしながら、何か別の手立てはないか模索しているところだという。一方のWes君はというと、これからやりたいことを書き留めており、そのひとつは海を綺麗にして海洋生物を助けることだそうだ。家族は、これに賛同し行動してくれる人がいるならば「#InspiredByWes」というハッシュタグを使ってほしいと呼びかけている。

日本では目にする機会は少ないかもしれないが、欧米では冒頭で紹介したようなチャリティ活動が頻繁におこなわれている。それはゲーム会社が主導するだけではなく、メディアやゲーマーもゲームプレイ配信などを通じて視聴者から寄付を集めて、慈善団体に贈る運動が当たり前のようにおこなわれており、Twitchなどで見かけたことがある方もいるのではないだろうか。先日、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』の発売日まで生きられないかもしれないというスマブラファンの末期がん患者に、米国任天堂が同作をプレイさせてあげる機会を設けたという話題を紹介した(関連記事)。Bethesdaや任天堂が見せた素晴らしい行動力は、こうした文化が根付いていることの表れだと言えるだろう。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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