Nintendo Switch版『シヴィライゼーション VI』が発表されるも、後に発表ページごと消滅。Nintendo Direct延期をめぐる複雑な一幕


2K GamesとFiraxis Gamesは9月7日、Nintendo Switch版『Sid Meier’s Civilization VI(シヴィライゼーション VI)』を、公式ホームページを通じて発表した。ナンバリングタイトルとしては初のコンソール発売となるNintendo Switch版『Sid Meier’s Civilization VI』では、これまでのアップデートの内容を含むほか、4つのDLC「Vikings Scenario Pack」「Poland Civilization & Scenario Pack」「Australia Civilization & Scenario Pack」「Persia and Macedon Civilization & Scenario Pack」を搭載。海外向けには2018年11月16日の発売が予定されていた。PC版は日本語字幕と音声に対応しており、日本発売についても大いに期待が持てる。しかし、一晩明けたのち、ホームページからNintendo Switch版発表の告知は跡形もなく消えてしまった。

画像はPC版『シヴィライゼーション VI』

そもそも、Nintendo Switch版『シヴィライゼーション VI』の発表は、かなり変則的であったとされている。メディアにプレスリリースを送ることもなく、プレスページに掲載することもなく、SNSで告知することもなかった。挙げ句はページ内のYouTubeのトレイラーはリンク切れ、Nintendo Switch版のスクリーンショットなども公開されていない。ビッグタイトルとは思えない、極めて中途半端な形で発表されていた。そしてその後、該当ページが消滅した。一連の流れから察するに、本来出す予定がなかったページを、出してしまったと考えるのが自然だろう。こうした特殊な形でNintendo Switch向けタイトルの告知がなされた作品は、『シヴィライゼーション VI』だけではない。つながりをたどっていくうちに、ひとつの“延期”が背景に絡んでいることが見えてくる。

 

Nintendo Directの延期

任天堂は9月6日に、日本時間9月7日7時放送予定であったNintendo Directを延期したと発表した。北海道で発生した大規模な地震の被害状況を考え、決断したという。同DirectではNintendo Switchやニンテンドー3DSのソフトに関する情報が、約35分にわたって伝えられる予定であった。Nintendo Directは、日本だけでなくアメリカやヨーロッパなどでも、それぞれ現地向けにアレンジされ放映される世界的なビッグイベント。さらに、任天堂だけでなくサードパーティによる発表が予定されていることも多い。Nintendo Directの放映が延期されたことにより、9月7日の発表を予定されていたであろうNintendo Switch向けタイトルのいくつかは、やや不思議な形で新情報が公開されることになった。

https://twitter.com/Nintendo/status/1037596396910592000

ファイナルファンタジーXV ポケットエディション HD』は、そのうちのひとつ。壮大な物語を抽出しデフォルメした作品は、これまでモバイルおよびWindows 10向けに配信されていた。9月7日にはコントローラーに対応したコンソール版を発表。PS4やXbox One版が発表されたと同時に配信開始されたが、Nintendo Switch版のみ近日配信予定とされていた。真相は不明であるが、Nintendo Directの延期が絡んでいるのではないかと考えるのは不自然ではないだろう。

また『ロックマン11 運命の歯車!!』の体験版についても、7日早朝にニンテンドーeショップで突如配信が始まったのち、15時過ぎにカプコンよりコンソール向けの体験版の配信を開始したと発表された。ブロックマンステージを楽しめる体験版もまた、Nintendo Directの放送にあわせて配信される予定があったのではないかと見られている。Ubisoftも7日に『Starlink Battle For Atlas』の新情報を公開。コラボレーションが発表されている『スターフォックス』のフォックス・マクラウドが登場するプレイ映像もGameSpot経由で解禁されており、こちらもNintendo Directに合わせた情報公開を予定していたことをうかがわせる。

『ロックマン11 運命の歯車!!』

いずれのタイトルも『シヴィライゼーション VI』のように慌ただしくトラブルを感じさせる発表ではないが、どこか不思議さを感じさせるものではある。ゲーム会社は一般的にはスケジュールを緻密に練り、計画的に情報公開を進めていく。会社規模が大きければ、その発表の規模や意味が大きくなり、そのスケジュールの重要性は増す。前日のNintendo Directにあわせて情報公開を予定していたならば、各社への影響は小さくないだろう。

Nintendo Switch版『シヴィライゼーション VI』の公式ホームページによる発表があったのは、日本時間7日の夜。Nintendo Directが朝に放送予定であったので、時差を考えても12時間以上時間があく点はやや違和感がある。この点については、おそらくNintendo Directで独占的に発表したのち、7日夜に改めて発表するという形式であったと予想できる。いずれにせよ、Nintendo Switch版『シヴィライゼーション VI』はほぼ間違いなく、誤って出てしまった情報だと考えられる。

 

延期した意味

いくつかのサードパーティにとって調整が大変であったことがうかがえるが、調整が大変なのは任天堂も同じのはず。用意していたプログラムを、そのまま日程をずらして使えるかどうかはわからない。たとえば、『ロックマン11 運命の歯車!!』の体験版についてはすでに配信されており、もし「ダイレクト終了直後から配信予定」という告知が用意されているならば、そのまま流用することはできない。今年の3月9日に放映されたNintendo Directでは、大部分の告知においてナレーションが用意されていた。最悪、録り直しすらあるはずだ。東京ゲームショウ前とあって、延期のスケジュールについても、サードパーティからのプレッシャーは強いだろう。その負担の大きさはうかがいしれない。

※北海道の震災の前には、関西にて深刻な暴風被害が発生しており、これにより任天堂の社屋の「N」の文字が飛んでいってしまったのではないかと、日本に滞在していたフランスのTwitterユーザーが報告している

任天堂も、延期する意味を理解していたに違いない。それでも延期することを決めるには、並々ならぬ覚悟があったはずだ。Nintendo Direct配信時はTwitterなどでも、関連キーワードがトレンドを席巻する。一方、被災しTwitterにて情報を収集しているユーザーにとっては、その影響力は障害になりえる。自粛することが正しいかはわからないが、一部の人々にとって実害になることは、任天堂にとっても避けたかったはず。

今回の延期の波紋は大きく、任天堂の国内アカウントだけでなく、ニンテンドー・オブ・アメリカのアカウントにも、落胆の意を表する声が届けられている。しかし一方で、理解を示す声も多いほか、今回の延期の決断を介して、北海道の震災の被害が深刻であることが認識されており、応援や支援を呼びかける声も散見される(reddit)。延期による影響は存在する一方、延期したことで守れたものもあるだろう。

Nintendo Directの延期は残念ではあったが、延期するに値するほど、日本で深刻な被害が生まれていると言い換えることもできる。ゲームは、衣食住といった生活の基盤が存在しているからこそ、楽しめる娯楽であるはず。一刻も早く、多くの人々がゲームやゲームのイベントを楽しめるような生活に戻れることを祈るばかりだ。