『ノーマンズスカイ』の快進撃は続く。プレイヤー数は大型アップデート“1週間後”も減少せず、Steamのランキング上位も譲らない

 

『No Man’s Sky(ノーマンズスカイ)』の快進撃は止まらない。PC/PlayStation 4/Xbox One向けに販売中の同作は、7月25日に大型アップデート「NEXT」が実施された後、Steamの同時接続プレイヤー数が急上昇し全世界売上ランキングの上位に躍り出た。大型アップデートやセールがおこなわれた際は、一時的にプレイヤー数や売上が上がり、すぐに下降するというのが通説である。今回特筆すべきは大型アップデートから1週間が経過しても、プレイヤー数が減少していないという点だ。

Steamのプレイヤー数を計測するデータベースサイトSteamChartsを見てみよう。『ノーマンズスカイ』の「NEXT」アップデートが実施されたのは日本時間25日。これまではピークタイムの平均プレイヤー数が1500人だった本作は、25日になりピークが約4万人へと到達。その後順調に数字を伸ばしていき、週末にはピークタイムのプレイヤーを約9万6000人まで伸ばす。その後数字はやや落ち着いたものの、8月2日から3日にかけてのピークプレイヤー数は約6万6000人。アップデート実施から1週間経過した後も高い水準を記録している。そしてプレイヤー数ランキングでも、トップ10圏内をキープし続けている。

Steamの売上の推移を示す「全世界売り上げ上位」でも予約販売中の『モンスターハンター:ワールド』と首位を争い続けている。こちらの好調さは、当初1週間を予定していた半額セールが延長されたことが、影響しているとみられる。セール終了後は売上に関する勢いは落ち着くだろう。いずれにせよ、Steamでのプレイヤー数・売上のランキングともに上位に君臨している。

 

メディアとストリーマーを再び引き込む

好調の理由としては、やはり本格的なマルチプレイが導入されたことがあげられそうだ。ゲームジャンルは異なるが、『Human: Fall Flat』はマルチプレイが導入された途端に売上が大きく伸びたという前例がある(関連記事)。MMOと呼べるほど大規模ではないが、リアルタイムで友人と冒険や建築を楽しむことができる、“正真正銘”のマルチプレイだ。他者を巻き込めるマルチプレイが、多くのプレイヤーを引き込んでいる点に疑いはないだろう。また、アップデート自身のクオリティが高く評価され、クチコミで評判が広がっていることが大前提として存在することも忘れてはならない。

そのほか大型アップデートにより、メディアおよびストリーマーをうまく引き込んでいる傾向がある。同時接続数と同様に、人気とは言えなかったTwitchの視聴者数は現在『Warframe』や『レインボーシックス シージ』と並ぶほど。多くの実況者が宇宙を探索し、視聴者もその冒険を見守っている。マルチプレイが導入されてことにより、「一緒にどう?」と視聴者に呼びかける場面も見かけられる。

8月3日20時時点でのTwitchの視聴者数。錚々たる面々と並ぶ

さらに『ノーマンズスカイ』はメディアでの熱も再び高まっている。2018年に入っては同作を主題とした記事を5本のみ投稿していたPolygonは、アップデート実施から現在までにすでに19本の記事を投稿済み。毎日2本以上の『ノーマンズスカイ』を主役とした記事を掲載している。Polygonはもっとも顕著な例であるが、PC GamerやKotakuでも同様に高い頻度で取り上げられており、露出の機会は間違いなく増えている。

ちなみにメディアの取り上げ方としては「こんな惑星を見つけた」「こんな生き物がいる」という報告が多くなってきている。惑星の構造や生物などが自動生成される『ノーマンズスカイ』の持ち味が出ているといえる。新たな事象がプレイにより発見できる作品は、取り上げやすいわけだ。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』も新たな遊び方が見つかるたびに取り上げられ、海外メディアの間ではぷちフィーバー状態であった。発売直後より惑星や生物の生成メカニズムの根本的な刷新が進められていたが、環の導入など新たな要素が導入されたことにより、バリエーションがさらに増加。大型生物なども増加し、新鮮な景色に遭遇しやすくなった。アップデートにより深化された“発見”が、メディアでの露出機会を増やすという良い循環に入っているといえる。

凝った基地も建設可能 Image Credit : Peelpar

 

愛されるタイトルになれるか

そのほか、三人称視点が導入されたことにより写真映りが向上したことも、画像のシェアにつながっている。redditで盛り上がりを見せるNoMansSkyTheGameにおいては、ほとんどのスレッドが画像投稿で占められている。三人称視点が実装されただけでなく、アバターをカスタマイズしたり、ポーズを決められることで、写真撮影とシェアの楽しさが高まっているわけだ。特に「座る」モーションを選び撮影をすれば、寂しさと美しさが両存する印象的なスクリーンショットができあがる。スナップモードという昨今のゲームのトレンドと、自動生成のシステムが、三人称視点が導入されたことにより高い次元で融合されているのだ。こうしたユーザーの撮影したゲーム内写真を見て『ノーマンズスカイ』の興味を抱いたプレイヤーもいるのではないか。さらには、コミュニティの盛り上がりに呼応し、Modコミュニティも再び活性化中(PC Gamer)。既存のModの改修が進められているほか、新たな作品も続々と投稿されている。開発元のHello Gamesも今後アップデートを実施していくことを公言しているが、ユーザーによるコンテンツ追加も進められていくだろう。

良い連鎖が生まれている『ノーマンズスカイ』であるが、ネガティブなニュースも生まれてきている。アップデート直後からユーザーからのクラッシュ報告が続いているほか、セーブデータが削除されるという問題もまた取り上げられている(Variety)。Hello Gamesは即座に対応したが、依然としてクラッシュもしくはセーブデータにトラブルが生まれたという声は届き続けている。また好意的なレビューはかなり増えたものの、序盤から不親切でありユーザー任せなゲーム構造を批判する声も一定数存在する。ゲーム構造についてはともかく、まだまだ取り組むべき課題は残されているのだ。

大型アップデートの実施直前に、ディレクターであるSean Murray氏は、発売直後『ノーマンズスカイ』が激しく批判された時期に、ユーザーとうまくコミュニケーションをとれなかったことを反省していると述べた。それにちなんで、今後はユーザーの声を聞くコミュニティ主導のアップデートを続けていくことを発表している(関連記事)。Steamのマルチプレイタイトルの競争は極めて熾烈で、平均プレイヤー数も徐々に収縮していくだろう。ただし、現在の高い評価と継続率、Murray氏の姿勢を考えると、根強いプレイヤーにこれまで以上に愛され遊ばれ続けるタイトルになっていくという、明るい未来が実現されるかもしれない。