我が子のために『フォートナイト』のコーチを雇う親が増えつつあるとの報道。「親の敵」扱いから一転、子供を伸ばす手段に
人気バトルロイヤルゲーム『フォートナイト』のeSports展開が進むにつれて、我が子のためにコーチを雇う事例が増えつつあることを、Wall Street Journalが報じている。日本でも子供を習い事に通わせたり、指導者のいる部活動に参加させる家庭は珍しくないと思うが、ゲームの腕前を磨くためにコーチを雇うケースは稀だろう。
コーチを見つける手段としては、SNS経由で直接コンタクトするほか、ゲーマーとコーチを繋ぐGamer Senseiや地元のプロにサービスを依頼するBidvineといったプラットフォームが利用されている。Wall Street Journalによると、これらのサイトでは今年3月以降、1000人以上の『フォートナイト』コーチが採用されたとのこと。指導料は人によって異なるが、相場は15~20ドル/時間、50ドル/3~4時間だという。
必ずしもプロ育成を目的としているわけではなく、『フォートナイト』が下手で負けてばかりの息子に指導者をつけて勝てるようにするという狙いの依頼もある。なかには親自身にも指導者をつけて学習するケースもあるとのことだ。Twitch Interactiveに勤務しているAdrian Luff氏もその一人であり、「最初の2分で死ななくなるのはありがたい」とコメントしている。
Epic Gamesは今年5月、『フォートナイト』の競技シーン向けに2018~2019年シーズンだけで賞金総額1億ドル(約110億円)を出資すると発表。7月から8週間にわたり開催されている「Fortnite Summer Skirmish Series」の賞金総額は800万ドルとなっている。そうした競技シーンだけでなく、人気配信者を目指すという道もある。今年3月にはTwitch配信者のNinjaが月間50万ドル稼ぎ出しているとCNBCにコメント。ただこの場合も、ハイレベルのゲームプレイを視聴者に提供できることが成功要因のひとつであるとNinja氏が語っているように、一定のプレイヤースキルが求められる。
ゲーマーとして成功さえすれば儲かるが、そのためには上手くなる必要がある。『フォートナイト』がお金になることがわかった今、子供の趣味に投資する親が現れ始めるというのは、それほど不思議な話ではないだろう。カナダのライアソン大学の調査では、近い将来プロゲーマーの収入はプロのアスリートと同等レベルに達すると予測されている(Ponderwall)。eSportsシーンにおける視聴者数や広告主の増加傾向から導き出された予測だ。仮に『フォートナイト』の人気が複数年に渡り継続すれば、本格的な指導が施された子供がプロシーンで活躍するというケースが増えていくかもしれない。
『フォートナイト』の人気が急上昇した今年2~3月時点では、海外のマスメディアからは『フォートナイト』のせいで子供たちがゲーム中毒になってしまうという批判的な取り上げ方がされていた。英国のトーク番組「The Morning」では、「I Lost My 10-Year Old Son to Fortnite(『フォートナイト』のせいで10歳の息子を失いました)」というタイトルで息子のゲーム中毒を懸念する母親が出演。北米の情報番組「Good Morning America」も『フォートナイト』の中毒性を懸念視する特集を組んでいた(関連記事)。同時期にはChicagoTribuneが「I almost lost my son to ‘ Fortnite ‘(『フォートナイト』のせいで息子を失いかけました)」、The Washington Postが「How I lost my child to Fortnite(いかにして私が『フォートナイト』に子供を奪われたか)」というタイトルの記事を掲載したように、『フォートナイト』のせいで子供を失うという趣旨の企画が集中した。今後は子供の『フォートナイト』愛を肯定的に捉える親たち、という切り口でメディアに取り上げられる機会が増えてくるかもしれない。