『Fallout』の料理を再現したレシピ本が登場、終末世界の味をご賞味あれ。先行公開中のあの定番料理のレシピをチェック

ネット上では、ゲームや漫画に登場する料理を再現したレシピがひとつのジャンルとなっている。ゲームや漫画に出てくる料理を、食べてみたいという思いを誰しもにあるだろう。『Fallout』シリーズのような終末世界での料理ならなおさらだ。

ゲームや漫画に出てくる料理を食べてみたい。そう思う方はどれぐらいおられるだろうか。ネット上ではゲームや漫画に登場する料理を再現したレシピがひとつのジャンルとなっており、クックパッドでも『ファイナルファンタジーXV』の再現レシピを見つけることができる。このたび、そんなゲームの再現料理を数多く手掛ける一人、Victoria Rosenthal氏が『Fallout』シリーズのレシピ本「Fallout: The Vault Dweller’s Official Cookbook」を出版することが明らかになった。書籍の紹介によると本書は“Vault居住者公式”のレシピ本となっている。

本書について、まずは著者であるRosenthal氏からご紹介しよう。Rosenthal氏はゲームに登場する料理を再現する活動を続けている人物で、過去にも数多くの再現料理を公開している。Rosenthal氏のウェブページには一世を風靡した『Cookie Clicker』に登場するクッキーや、『ダークソウル3』のエスト瓶、そのほか『ファイナルファンタジーXV』や『GUILD WARS 2』、『オーバーウォッチ』などさまざまなゲームに登場する飲食物が再現されている。『オーバーウォッチ』は特にお気に入りとのことでRosenthal氏の熱量はとどまるところを知らず、「オーバーウォッチ リーグ」のチームカラーをイメージしたアイスキャンディーまで制作されている。なかには、よくそんなところに料理があることに気づいたなと驚くような細かいものまで再現されており、Rosenthal氏の再現料理にかける情熱は疑いようがない。そんなRosenthal氏によるVault居住者公式レシピ本の、気になる中身を現在わかる範囲で覗いてみたい。

いうまでもなく『Fallout』本編には、誰もが愛してやまない“ヌカ・コーラ”をはじめ、多様な飲食物が登場する。今回のレシピ本にはヌカ・コーラはもちろん、“ヤムヤム・デビルエッグ(旧ヤムヤムの宅配卵)”や“マイアラークケーキ(旧ミレルークケーキ)”、“デスクロー・ウェリンガム”といったおなじみの料理に加え、いくつかのゲーム本編には登場しないRosenthal氏によるオリジナル・メニューが、あわせて72種紹介されている。Amazonのサンプルページで公開されている“バラモンと野菜のローストスープ”も、そういったオリジナルのメニューのひとつと思われる。「作品内にも野菜スープがあるぞ」というご指摘もあるかと思うが、ゲーム中の野菜スープはテイトにニンジン、汚れた水を加えたものであり、見た目もグリーン・カレーのようなもので明らかにRosenthal氏のスープとは別のものだ。

ちなみに本書によると“バラモンと野菜のローストスープ”は「サンフランシスコのチャイナタウンでは極めてポピュラーなスープと思われる」と紹介されている。アメリカの料理文化に詳しくない筆者にはそれが事実かどうか判別できないのだが、記述が事実だった場合、中身はおそらくバラモンの肉ではなく、牛であると推測される。サンフランシスコで双頭の牛を料理しているという話は、寡聞にして知らない。

では、他のメニューはどうだろうか。サンプルページとして公開されているもうひとつのメニューが、おなじみ“ヤムヤム・デビルエッグ”である。ヤムヤム・デビルエッグといえば、プレイヤーにとってはウェイストランドのキッチンに頻繁に転がっていることで馴染み深い食品のひとつだ。ゲーム中のヤムヤム・デビルエッグは、箱に純粋乾燥全卵と記載されていることからわかるとおり、ヤムヤム社が製造販売していた卵の保存食品である。食べるとわずかに体力を回復し、同時に放射線に汚染されてしまう悩ましい食品でもある。

筆者は知らなかったのだが、デビルエッグとはもともと、アメリカでイースターなどに食べるメジャーな家庭料理であるらしい。今回のレシピ本ではヤムヤム社製造の保存食ではなく、あくまで家庭料理のデビルエッグのレシピとして紹介されているようだ。では、本のサンプルページに記されているヤムヤム・デビルエッグのレシピを見てみよう。

1,卵を鍋に入れた後、卵が十分つかる量の水を入れる。蓋をしたら中火で加熱。水が沸騰したらタイマーを8分にセット。

2,タイマーが鳴ったらすぐにコンロから鍋を取り、冷たい水にさらす。中身を氷と水の入ったボウルに移す。卵の殻を慎重に剥く。

(※筆者注:ここまではただのゆで卵の作り方だ。ゆで卵は急速に冷やすと殻が剥きやすくなるのでお勧めのテクニックといえるだろう。)

3,卵を半分に切る。マヨネーズと味噌とともに、卵黄をボウルに入れ、滑らかになるまで混ぜる。コリアンダー、クミン、ターメリック、マスタード、カイエンペッパー、フェンネルを加える。お好みで塩と胡椒を適量。

4,黄身を混ぜたものを卵の白身にスプーンで乗せる。最後に新鮮なあさつき(ねぎの一種)を添える。

デビルエッグとは本来スパイシーなゆで卵料理のことらしく、香辛料や調味料に決まりはなく、アメリカでもさまざまなものが使われているようだ。とはいえ、このレシピの珍しいところは味噌が使われているところだろう。日本のデビルエッグのレシピを眺めてみても、味噌を使ったレシピはあまり見かけない。にもかかわらず、海外(しかもVaultの中!)のレシピに味噌が使われているあたり、ゲーマーの想像力をかきたててくれるレシピに仕上がっている。また、料理好きな方には説明するまでもないと思うが“コリアンダー、クミン、ターメリック、マスタード、カイエンペッパー、フェンネル”というスパイスは、マスタードをガラムマサラに変えるだけでおいしいカレーが出来上がる。したがってヤムヤム・デビルエッグの味はおそらく、「マヨネーズと味噌のソースにカレー風味を加えたゆで卵」といったところだと思われる。

完璧に保存されたパイ

ここまで読んでいただいた方の中には「2品ともゲームの再現料理じゃないよね?」とお気づきの方も多いだろう。ご安心いただきたい。レシピ本にも掲載予定の“完璧に保存されたパイ”や“ソールズベリーステーキ”、“ウェイストランド・オムレツ”などは前述のウェブページに公開されており、見た目の再現度も高い。気になる方はぜひそちらをご覧いただきたい。

今回のレシピには入っていないようだが、筆者は以前から“ヌカ・コーラ・クアンタム”を目にするたびに、一度でいいから飲んでみたいと思っていた。過去に飲料メーカーから商品化されたそうだが、あのチェレンコフ放射を思わせる怪しげな輝きは、きっと美味に違いない。筆者同様、終末世界の味覚に魅惑されていた方は、この機会に「禁断の味」を味わってみてはいかがだろうか。
Amazonによると「Fallout: The Vault Dweller’s Official Cookbook」は、2018年10月23日発売予定。価格は日本円で3947円となっている。

Masahiro Yonehara
Masahiro Yonehara

ゲーム世界の散策とスクリーンショット撮影を趣味にしています。コア、カジュアルを問わず、ハードルが低く奥が深いゲームに惹かれます。

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