Nintendo Switch/PS4版『フォートナイト』アカウント連携の制限によりクロスプレイの議論が再熱。任天堂/SIEともに騒動に言及
【UPDATE 2018 6/16 19:20】
Epic GamesアカウントとPlayStation Networkのアカウント連携について、仕様を説明するためスクリーンショットを追加。
【原文 2018/6/16 10:00】
「E3 2018」にて発表され、6月13日に配信が開始されたNintendo Switch版『フォートナイト バトルロイヤル』(以下、フォートナイト)。同作はXbox One/PC/Mac/モバイル版とのクロスプラットフォームプレイ(以下、クロスプレイ)に対応しているが、PlayStation 4とのクロスプレイは除外されている(関連記事)。ここまでは『ロケットリーグ』『マインクラフト』など他のクロスプレイ対応タイトルと同じだが、『フォートナイト』ではクロスプログレッション(共通プレイヤーデータの使用)に必要なアカウント連携機能まで利用プラットフォームにより制限されてしまうことから、海外のメディアやフォーラムにて議論の的となっている。
SNSでの反対運動も
PlayStation 4版『フォートナイト』は、PlayStation Network(以下、PSN)とEpic Gamesアカウントを連携させることで、他プラットフォームと同じプレイヤーデータで遊ぶことができる(Xbox Oneは除く)。ただしPlayStation 4とNintendo Switchでは、一度に片方しか連携できない仕様となっている。つまりPSNに紐づいたEpic Gamesアカウントがあると、Nintendo Switch版では連携できず、新しいアカウントをつくることになる(Epic Games公式ヘルプ)。逆にEpic GamesアカウントとNintendo Switchの紐付けを行うと、PSNとEpic Gamesのアカウント紐付けはブロックされる。
この仕様はPlayStationユーザーからも反感を買っており、海外メディアIGN時代からPlayStationの動向を追い、自身もPlayStationファンとして活動している現Kinda FunnyのGreg Miller氏は、PlayStation公式アカウント宛に以下の投稿を送っている。他プラットフォームにプレイヤーが流出しないようアカウントをブロックしているのだと思われるが、その考え方はズレており、むしろ『フォートナイト』のためにPlayStationからXboxに鞍替えしようかと考えてしまうほどだと述べている。
.@PlayStation, fix this.
Not allowing me to sign-in to Fortnite Switch with my Epic account because it's linked to PS4 is tone deaf and points more to fear than market dominance.
It does the opposite of what you want — it makes me think about moving to Xbox for Fortnite. pic.twitter.com/D9xqv9aWdF
— Greg Miller (@GameOverGreggy) June 12, 2018
PlayStation 4とXbox Oneの間でのアカウント連携はあまり大きな話題とならなかったが、同じコンソールという括りでも、据え置き機・携帯機の両方として機能するNintendo Switchユーザーの中には、PlayStation 4と2台持ちしている方が相当数いるのだろう。これまで以上に大きな反響を呼ぶこととなった。なおクロスプレイに対応しているXbox OneとNintendo Switchの同時紐付けは問題なく行える。
アカウント連携の制限が発覚したのち、海外フォーラムResetEraのユーザーSKOL氏の投稿をきっかけに、PlayStation 4のクロスプレイ対応解禁を呼びかけるSNS運動が始まった。「#PScrossplay」「#FreeThePlayers」を使い、PlayStation公式およびソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)ワールドワイド・スタジオのプレジデント吉田修平氏やSIE AmericaのプレジデントShawn Layden氏のアカウントにクロスプレイ対応を求める投稿を送るというものだ。
ハッシュタグを使った投稿には、SIEの姿勢はアンチ・コンシューマーであるというものや、クロスプレイを有効化するよりもクロスプレイを拒否する方が顧客離れに繋がるだろうという意見が見られる。またクロスプレイはまだしも、Xbox One/Nintendo Switchとのアカウント連携を阻害するのは悪いビジネス・プラクティスだという声もある(該当ツイート)。
上記の運動とは関係のないところでも、SIEの対応を好意的に受け止めていないことを示す投稿は多い。偽Kaz Hirai(SCE時代の元代表取締役社長兼グループCEOである平井一夫氏のフリをして、ゲーム業界内の話題・イベントを題材にジョークを連発する名物Twitterアカウント)に至っては、「新しいコンソール独占タイトルを発表します。あなたの『フォートナイト』アカウントです」と茶目っ気たっぷりのジョークを飛ばしている。
Today we revealed another big console exclusive: your Fortnite account.
— Ex-CEO Kaz Hirai (@KazHiraiCEO) June 12, 2018
デベロッパー・プレイヤーにとっての最適解とは
米国任天堂の社長レジー・フィサメィ氏は、「競合相手がどのような対応を取るか、それは彼らが決めることだ」とした上で、『フォートナイト』に限らずとも、デベロッパーのビジョンを実現すること、ファンのニーズに応えることが、ゲームにとって最も好ましい対応だと米国IGNに答えている。
『フォートナイト』開発元のEpic Gamesも、任天堂と似た思想を持っている。Tim Sweeney社長は弊誌インタビューにて、クロスプレイを好まないプラットフォームホルダーについて、「エンゲージメントが高まれば、全てのプラットフォームが恩恵を受ける」とし、「全てのユーザーがつながれるよう互いに協力し合う方が、つながりをブロックするよりも価値のあること」だと答えている。
ソニーの声明
今回の騒動を受け、SIEはBBCに対し以下の声明文を送っている:
「私たちはプレイヤーのゲーム体験を向上させるため、PlayStationのコミュニティが何を求めているのか、常に彼らの声に耳を傾けています。また『フォートナイト』はPlayStation 4の大ヒット作品であり、すぐに手に取ってオンライン上で遊べる、本当の意味でのF2P体験を提供しております。PlayStation 4の全世界売上台数は7900万台、PlayStation Network(以下、PSN)の月間アクティブユーザー数は8000万人以上。私たちは、『フォートナイト』や他のオンラインタイトルを一緒にプレイできるゲーマーが大勢集う、巨大なコミュニティを形成することができました。『フォートナイト』はPC/Mac/モバイルとのクロスプレイにも対応しており、PlayStation 4の『フォートナイト』ファンが、他のプラットフォームにいる沢山のプレイヤーと遊べるようになっております。現時点では、これ以上付け加えることはありません」
オンラインマルチプレイゲームにおいては、ユーザーベースが大きければ大きいほど、マッチングのスピードや品質の向上が見込まれる。デベロッパーやユーザーがクロスプラットフォームを望む大きな理由の一つはそのためだが、PlayStation 4に関しては既に十分に多くのユーザーを抱えている。上記の声明を読み解くに、SIEが自ら進んで優位性を削ぐ必要はないということなのかもしれない。
なお先述した吉田修平氏は2016年、クロスプレイ対応について技術的にはクリアできるだろうとしたうえで、プラットフォームのポリシーやビジネス的な問題があると発言している(2017年時点でのクロスプレイ問題まとめ記事)。SIEグローバルセールス&マーケティングヘッドのジム・ライアン氏も2017年6月にEurogamerのインタビューに応じ、クロスプレイに関する質問に回答。SIEはクロスプレイに反対するような思想は持ち合わせておらず、デベロッパー/パブリッシャーとの対話に関して門戸を閉じることはないとコメントしている。
当時議論の対象となっていた『マインクラフト』のクロスプレイ対応については、同作が若いプレイヤーを多く抱えていることから、SIEが責任を負えない外部の影響に晒されることについて慎重に判断しなければいけないと語っていた。若いプレイヤーが多いという点では『フォートナイト』も同じ。こちらは既にPC/モバイルとのクロスプラットフォームに対応している。「外部の影響に晒される」という懸念に関しては、現在はクリアになったということだろうか。
技術的には実現可能
『フォートナイト』では2017年9月、開発元Epic Gamesの設定ミスにより一時的にPlayStation 4/Xbox Oneのクロスプレイが有効化されたことがある(関連記事)。つまりクロスプレイに対応しないのは、技術的な問題ではないことが確認できている。Xbox One/Nintendo Switchのクロスプレイを実現した『ロケットリーグ』の開発元Phyonixも、PlayStation 4と他プラットフォームのクロスプレイは「技術的には可能」であり、「チェックボックスにチェックを入れるだけ」で実現すると答えている。仮にセキュリティポリシーの問題であれば、条件を満たすための労力を惜しまないつもりであるが、SIE側が求める条件は教えてもらえない状態だという。クロスプレイを有効化できないのはシンプルに「PlayStationの許可が下りない」からだ(Polygon)。
またCD PROJEKT REDのCEOであるMarcin Iwiński氏は『グウェント ウィッチャーカードゲーム』について、クロスプレイに対応する準備は整っており、あとはSIEからのゴーサインを待つだけだとクローズドベータ開始前に語っていた(IGN)。「マイクロソフトは既にXbox One/PCだけでなく、他プラットフォームとのクロスプレイ対応も承認してくれました」。相手のプラットフォームホルダーが許しさえすればクロスプレイが実現するという。
さらにマイクロソフトは『フォートナイト』のクロスプレイについて、「Xbox One/Switchのクロスプレイを実現するため任天堂と密接に連携してきました。PlayStationのプレイヤーのためにも、同様の努力を続けています」とコメントしている(Kotaku)。Xbox OneとNintendo Switchのクロスプレイ対応タイトルは徐々に増えており、2017年11月にNintendo Switch版を発売した『ロケットリーグ』はPC/Xbox One版とのクロスプレイを実現している。今年6月にNintendo Switch版を発表した『Paladins』も、Xbox One版とのクロスプレイを計画しており(関連記事)、Nintendo Switch版『マインクラフト』に関してはクロスプレイに向けた「Better Together」アップデートが6月21日配信予定となっている。
パワーバランスの変化
実は2011年の段階では、クロスプレイを拒んでいたのはマイクロソフトの方だった。MMO三人称視点シューター『Defiance』において、「我々がゲームデベロッパーに求めるオンライン体験の水準は高く、そのクオリティを保証できない、もしくは他コンソールやネットワークにおけるプレイヤー体験の品質を我々の方で制御できないため」クロスプレイは許容できないと回答していた(Kotaku)。現世代とは違い、Xbox 360の米国販売台数は2011年から2013年にかけてPlayStation 3を上回っていた(gameindustry.biz)。クロスプレイのブロッカーがマイクロソフトからSIEに変わった背景には、PlayStationとXboxの販売台数・パワーバランスが逆転したことが、ある程度は関係しているのだろう。
クロスプレイに対応するかどうかはプラットフォームホルダーの自由だ。現時点では、SIEのプラットフォームポリシーやマーケットリーダーとしての優位性を崩してまで応じるメリットは見当たらない。だが『ロケットリーグ』『マインクラフト』『フォートナイト』とメガタイトルが続々とXbox One/Nintendo Switchのクロスプレイを実現させている中、果たしてPlayStationだけ独自路線を貫き続けられるのだろうか。各プラットフォームホルダー、クロスプレイ対応に取り組んでいるデベロッパー、クロスプレイを望んでいるプレイヤー。業界内の各方面からプレッシャーをかけられていることが周知の事実となりつつあるSIEは、現状のまま次世代機に突入したとしても、販売台数に影響は及ばないという見通しができているのだろうか。「For the players(プレイヤーのために)」と謳うSIEの反応やいかに。