中世RPG『Kingdom Come: Deliverance』Steam版のプレイヤー数が95%減少と報道。シングルプレイゲームの傾向から、この数字を考える
今年2月に発売された中世RPG『Kingdom Come: Deliverance』のSteam版のプレイヤー数減少が著しいことを、Githypが報じている。Githyp は、SteamやTwitchのデータを分析するメディアだ。これまで数々のタイトルのプレイヤー数の増減を報じてきたが、今回は『Kingdom Come: Deliverance』のプレイヤー数の推移を提示し「発売2か月で95%のプレイヤーを失った」と掲載。Githypは、シングルプレイゲームはプレイヤー数が減少するものだとしながら、『ウィッチャー3』や『The Elder Scrolls V: Skyrim』など人気タイトルは、依然として多くのプレイヤーが遊んでいると指摘している。
「プレイヤー数95%減少」というショッキングな数を添えて、数々のメディアがGithypのこのデータを引用している。こうした報道に異論を唱えたのが、『Kingdom Come: Deliverance』を手がけたWarhorse Studiosの共同設立者であるDaniel Vávra氏だ。Vávra氏は、特にPC Games Insiderの報道に対して抗議。実際の数値をSteamChartsと照らしあわせファクトチェックを始めた。まず数週間の平均が3600とされたプレイヤー数は、2週間前が7000を上回っており、数日前には5000を上回っていると指摘し、それゆえに95%減少したわけではない、劇的な減少ではないとコメントしている。さらにVávra氏は、「『Kingdom Come: Deliverance』は他の多くの有名タイトルよりも遊ばれているとし、『アサシン クリード オリジンズ』などと比較し、人口はほかのシングルプレイゲームと変わらない」と強調。見張るべき数字ではないと、報道を退けている。
There is an article about "dramatic drop" of concurent KCD players by 95% to 3500 average in last couple weeks. Lets do little fact check. Its not dramatic, its normal. Its not 3500, it was above 5000 two days ago, 7000 two weeks ago. So its not 95%. Plus they got my name wrong. pic.twitter.com/R7vTU6fMoD
— Daniel Vávra ⚔ (@DanielVavra) May 2, 2018
Githyp およびPC Games Insiderの指摘は、誤っていたのだろうか。結論からいえば、誤っているというわけではなさそうだ。認識のズレは、平均かピークタイムか、どちらを基準にするかの点で生まれている。Vávra氏はピークタイムを基準としているようだが、GithypとPC Games Insiderは平均プレイヤー数を基準としている。それゆえにズレが生まれているのだろう。ちなみに補足として整理してみると、Githypは各日の深夜12時を基準とし、その日の1時間の平均プレイヤー数を算出している。『Kingdom Come: Deliverance』は2月17日には66438を記録しているものの、最近ではその数は3000程度になっている。ここから95%という値を弾き出したのだろう。ちなみに弊誌でもSteamChartsを使い調査してみた。『Kingdom Come: Deliverance』の発売月である2月の平均プレイヤー数と、直近30日の平均プレイヤー数を比較すると、減少率は88%であった。減少は著しいが、90%を上回る数字ではない。
Vávra氏はこの数字の正確さの是非を論じているが、そもそもなぜ『Kingdom Come: Deliverance』が論われているのだろうか。考えられる理由としては、『Kingdom Come: Deliverance』は、10日足らず100万本を売り上げ、一時は『ウィッチャー3』を超えるプレイヤー数を記録していたことを前出のGithypが報じていた。こうした人気タイトルがその後どうなったかという経過を考察する上で、報告したのだろう(関連記事)。
ただ、シングルプレイゲームのプレイヤー数減少は、『Kingdom Come: Deliverance』に始まった話ではない。前出の『ウィッチャー3』も発売3か月後には平均プレイヤーが8割減少している。いくらかのマルチ要素もあるが『ダークソウル3』もまた発売3か月で平均プレイヤー数は9割減。2月に発売された盤石の評価を獲得した『Into the Breach』も、2か月で平均プレイヤー数は83%減少している(いずれもSteamChartsを利用し、発売月とその後の月で比較)。
人気タイトルは平均・ピークタイムともに高水準を記録しやすく、同時に“飽きっぽい人々”も呼びやすい。Githypは『ウィッチャー3』や『The Elder Scrolls V: Skyrim』をあげて、魅力的ならばユーザーは遊び続けると言わんばかりの主張をしているものの、『The Elder Scrolls V: Skyrim』は例外とも言えるタイトルで、また『ウィッチャー3』は前述したように発売3か月時点での人口8割減を経験している。
さらにプレイヤー数減少はシングルプレイの宿命であり、人気タイトルほどその落差は強まる傾向にある。『Kingdom Come: Deliverance』のプレイヤー人数が減っているのは事実であり、リアリティ志向のクセの強いシステムを持つゆえに賛否両論のある作品であるが、「プレイヤーの支持を失い人々が遊ばなくなってしまった」という文脈で報道をするのは酷な話でもある。平均プレイヤー3000人は決して少なくない数で、ほかのシングルプレイヤー向け作品と同じというVávra氏の指摘は同意できるだろう。また前述したように月単位での平均プレイヤー数の比較でいえば、減少率は88%で多いことは多いが、シングルプレイタイトルにおいては特別に珍しい数字ではない。
プレイ人口がマッチングという核の要素に依存していくマルチプレイヤーゲームと比較すると、シングルプレイヤーゲームは人が減ったとしてもゲームプレイへの影響はない。ただ、プレイ人数が多いということは、人々の心を捉えて離さないという証であり、人数の減少は飽きやすいゲームということを示唆する一面もある。Steamはプレイヤー数が数値として可視化できるということもあり、弊誌も含めてメディアが発売後のタイトルの動向を追う資料になる。一方でこうしたデータにおいては、今回のように平均とピークタイムの数を混合しがちで、また期間を限定することで“衝撃的な数字”を出しやすい危うさもある。
『Kingdom Come: Deliverance』のプレイヤーが、発売日と比べて著しく減っているのは事実と言える。Modコミュニティでも、4月に入ってから投稿が少なくなっており、勢いを失っている部分はある。ただしそれらは、シングルプレイゲームのある種の宿命。『No Man’s Sky』も同じような道筋を辿ってきており(関連記事)、もっといえば『ウィッチャー3』も発売後のDLCやアップデートを経て徐々に数字の水準を上げていった経緯がある。すでに、追加コンテンツの導入が発表されている『Kingdom Come: Deliverance』。同作の今後は、すでにゲームを所有しているユーザーを、追加コンテンツによって呼び戻せるかにかかっているだろう。