EAが開発中の「自己学習型AI」、兵として『バトルフィールド1』のマルチプレイでの立ち回りを勉強中。将来的なBOTとの置き換えを目指す

Electronic Artsの技術研究開発部門SEEDは3月22日、現在「自己学習型AIエージェント」を開発していることを明らかにした。SEEDは、インタラクティブエンターテインメントに活かせる技術を長期的な視野に立って研究している。今回発表された自己学習型AIエージェントでは、『バトルフィールド1』のマルチプレイを学習させている。

Electronic Artsの技術研究開発部門SEED(Search for Extraordinary Experiences Division)は3月22日、現在「自己学習型AIエージェント」を開発していることを明らかにした。SEEDは、インタラクティブエンターテインメントに活かせる技術を長期的な視野に立って研究している。

今回発表された自己学習型AIエージェントでは、『バトルフィールド1』のマルチプレイを学習させている。学習させようとしたきっかけとしては、囲碁プログラム「AlphaGo」で知られるAI「DeepMind」が、Atariのレトロゲームを自ら学びプレイしたことにあるという。『バトルフィールド』シリーズの開発元DICEに在籍した経験があり、現在SEEDでテクニカルディレクターを務めるMagnus Nordin氏はこれに触発され、最新のより複雑な大作FPSを自己学習型AIに学習させることに興味を持ち、チームを組んで研究・開発を始めたそうだ。

開発では、まずはシンプルな3D FPSを制作し、アルゴリズムのテストとネットワークへの学習をおこない、ここで良い結果を得たのち、DICEと協力して『バトルフィールド1』にAIを適用させていったという。ゲームをプレイさせる前には、人間のプレイを30分間観察させて、基本の動きのコンビネーションを模倣学習させている。上のデモ映像は、開発中の自己学習型AIと従来のBOTとを戦わせ、AIに約300日分のプレイ経験を積ませた結果である。ちなみに緑色の箱はヘルスパック、茶色の箱は弾薬箱で、学習用に特別に配置されている。

バトルはおおむね成立しているが、敵への直線的な動きが目立つ。現段階では、AIは自ら予定立てて行動することがあまり上手くなく、敵や隠れる場所を探すことができない。そのため視界内から目標がなくなると、その場でグルグルと回って目標を探す不自然な行動を取ってしまうという。こうした点は学習を重ねるにしたがって改善される見込みだが、『バトルフィールド1』の環境はAIが理解するには複雑すぎるということは課題として残っているようだ。

*SEEDが公開した模倣学習のデモ映像

この自己学習型AIは、ゆくゆくは現在あるBOTやNPCと置き換えられることが期待されている。現時点では、人間のプレイヤーと対戦した場合、AIが勝つことは難しい段階だそうだ。『バトルフィールド1』のマルチプレイでは、マップや兵科、装備などの知識、またチームワークも重要で非常に複雑なため、AIにはさらなる拡張が求められている。ただ、プレイテストではAIプレイヤーを見分けられるように明確にマークして欲しいとの要望があったそうで、一目に判別できるような稚拙な行動を取っている段階ではないことをうかがわせる。『バトルフィールド1』やその他の作品に近い将来導入されるというわけではないだろうが、期待したい技術である。

一方短期的な目標としては、このAIを使ってDICEでの品質管理とテストの拡充を支援することにあるという。作業量が多く人手のかかるプレイテストにおいてはすでに実用化された例があり、またUbisoftは先日、プログラマーのミスを指摘するAIを発表していた(関連記事)。ゲーム開発現場へのAIの導入は各社研究を進めており、EAもまた模索しているようだ。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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