アメリカの州議会委員が、暴力ゲームの規制計画を発表。銃乱射事件との関連が探られ続けるビデオゲーム
アメリカ、ロードアイランド州の州議会員であるRobert Nardolillo氏が州議会に対し、同州で販売されている「Mレート」(国内で言うCERO DおよびZ相当、対象年齢17歳以上)のゲームに対し10%の税金を上乗せする計画を発表した(PCgamer)。その計画を要約すると、「暴力的なビデオゲームから幼い子供たちを遠ざけることで彼らが将来暴力的な行動に打って出ることを抑制し、追加分の税金による収入によってさらなるカウンセリングなどの精神医療に対する投資を行う」というものだ。
Nardolillo氏の計画は「幼い頃の暴力的なビデオゲームに暴露された子供たちは、そうでない子供たちよりも積極的に行動する傾向がある」というAPA(American Psychological Association)が2015年に発表した研究結果(pdfリンク)を論拠に立てられたものだ。しかしこの研究はあくまで「関連性が存在するか否か」という研究であり、暴力的表現が含まれるビデオゲームをプレイした子供が実際に暴力的行動を起こすという因果関係を証明するものではない。また、2016年にはイギリスの研究チームが、幼少期における暴力的なゲ―ムのプレイと青年期の行為障害には相関関係が無いという研究結果を発表し、2014年にアメリカにて完了した同様の調査においても関連性が認められなかったとされているなぜ税金を上乗せする形で販売の抑止を行うのか、という疑問に対してNardolillo氏は「アメリカの憲法によって暴力的なゲームを合法的に販売禁止することが出来ないからだ」と答えている。
現在アメリカでは銃乱射事件の発生が連続して止まない。2017年10月にラスベガスのコンサート会場で発生した事件ではその場にいた58名が銃によって殺害され、11月に起きたテキサスの協会での乱射事件では26名が犠牲になった。今年の2月14日にフロリダ州のパークランドで発生した乱射事件では17名が亡くなっている。
一方で銃規制が進まないという現状もまた、アメリカ社会には横たわっている。先日弊誌の記事内で語られたように、銃はアメリカの文化的、経済的、地理的など様々な文脈に深く絡みついており容易に外すことはできないのである。そのため、上記の暴力的事件の要因が銃以外の別の所にあるという考え方が生まれるのは半ば必然的と言えるだろう。フロリダの銃乱射事件の翌日、トランプ大統領は事件に対する声明の中で、精神疾患への取り組みの強化が必要というコメントに続き、暴力的なビデオゲームや映画が子供たちに悪影響を及ぼしていると語った。
肝心の銃規制に関しては購入年齢を21歳以上に引き上げるという内容に止めている。その姿は、2013年に暴力的なビデオゲームが若者の心に及ぼす影響に関する調査に資金を提供することを議会に依頼し、問題の本質をつかもうと試みたバラク・オバマ元大統領のものとは対照的に映るだろう。