現在Steamにて『Human: Fall Flat』が、ヒット街道を駆け抜けている。『Human: Fall Flat』はNo Brakes Gamesが開発し、Curve Digitalが販売する3Dアクションゲームアドベンチャーだ。ぐにゃぐにゃとした粘土のようなキャラクターを操作し、ステージのクリアを目指す。1月22日現在、Steamの全世界売上ランキング上位に君臨し、ヒットタイトルとも呼べる存在になりつつある。ただ本作は最近発売された作品ではない。『Human: Fall Flat』が発売されたのは2016年7月なのだ。約1年半前に発売されたタイトルが、突如ヒットタイトルとなった理由は一体なんなのだろうか。
埋もれていた宝石
『Human: Fall Flat』は発売後からしばしば対戦アクションゲーム『Gang Beasts』との比較を受けた。『Human: Fall Flat』はステージを探索し、クリアすることを目的とするキャンペーンモードがメイン。『Gang Beasts』は他プレイヤーとの乱闘がメイン。趣旨はまったく異なるが、物理演算が導入されており、ぐにゃぐにゃとした粘土のキャラクターを操作するという類似点により、比較をされていたのだろう。
ただ、『Gang Beasts』は多人数にてオンラインで楽しめることに対し『Human: Fall Flat』はあくまでオフラインで楽しむことがメイン。画面分割のローカル協力プレイには対応していたものの、オンラインプレイは技術的な部分により難しい、かつ実際に友人の隣で遊んでほしいとされていた。作品自体の評価は高く、推薦するプレイヤーも多かったが、あくまで基本的に遊ぶのはひとり。その作品の魅力を伝えきることは難しいタイトルでもあった。しかし2017年10月に最大8人に対応するマルチプレイが実装されたことにより状況は激変。このオンラインモードの実装により、プレイヤーの人口は爆発的に増加し始めた。
ポテンシャルが開花
SteamSpyのデータによると、12月22日には約58万人の所有者(Owner)がいたことに対し、1月22日現在の所有者は約168万人となっている。単純に計算するだけでこの年末年始でゲームを所持しているユーザーが3倍になっているわけだ。実装日は10月31日であるので、オンラインの実装前と今の数字を比較するとさらに劇的な違いが生じていることを予想できるだろう。Steamの全世界売上ランキング上位に常連入りしたことにより、2018年においてもさらに売り上げが伸びていくことは間違いない。
もちろん、ただオンラインに対応したから『Human: Fall Flat』がヒットしたというわけではない。『Human: Fall Flat』の面白さをオンラインマルチプレイが引き出したからこそ、クチコミを呼びヒットしたのだ。『Human: Fall Flat』の魅力はその事故性だ。操作しているプレイヤーですら予測不能な動きを繰り出す。さらにステージ上にはさまざまなオブジェクトやギミックが存在しており、オブジェクトを絡めてさらなるアクシデントが発生する。また操作も『Gang Beasts』よりはいくらか容易であるほか、ステージのゴールへと至るルートが複数容易されており、アイディアの数だけ突破口が生まれる。自由度が高いアクションゲームなのだ。
ゲームとしても完成度が高く、そこに多人数で遊ぶことにより生まれる事故性が絡むことで、さらに上のレベルへとゲームの面白さが昇華されたのだ。また対戦ではなく協力がメインとなるので、邪魔し合うことも可能であるものの、友人との一体感を生みやすい点も人気のひとつであるようだ。
『Human: Fall Flat』は評価こそ高かったが、セールスという点では伸び切らない印象も強かった。8月にはHumble Jumbo Bundle 9にて1ドル枠として販売されており、現実的に考えてCurve Digitalも同ゲームがこれほど売れることはまったく予想していなかっただろう。しかしながら、数ヶ月の間に安売りされていたタイトルは、値引きせずとも売れ続けるヒットタイトルの仲間入りをした。こうした現象が起きることこそが、Steamにてインディーゲームを販売する醍醐味でもあるだろう。
No Brakes Gamesは、オンラインプレイの実装にともないSteam ワークショップの仕切り直しを予告。Modを使った遊びをさらに掘り下げていくことを誓っている。『Human: Fall Flat』はPlayStation 4/Xbox One/ニンテンドースイッチ向けにもリリースされているが、こちらはオンライン機能が実装されていない。PC版のヒットを見る限りでは、コンソール版のオンライン対応も期待できるかもしれない。