海外学生による『光神話 パルテナの鏡』を3D化する自主制作ゲーム『Kid Icarus』無料配布中。弓矢で戦うピットをUE4で表現

デジタルメディア教育センターの学生らが、3Dアクションゲーム『Kid Icarus』をitch.ioを通じて無料配布している。「Kid Icarus」とは、1986年に任天堂がファミコン向けに発売した『光神話 パルテナの鏡』の海外名で、本作はそれを独自の解釈で3Dリメイクした作品だという。

カナダ・ケベック州モントリオールにあるデジタルメディア教育センターNAD, School of Digital Arts, Animation and Designの学生らが、3Dアクションゲーム『Kid Icarus』をitch.ioを通じて無料配布している。「Kid Icarus」とは、1986年に任天堂がファミコン(ディスクシステム)向けに発売した『光神話 パルテナの鏡』の海外名で、本作はそれを独自の解釈で3Dリメイクした作品だという。

オリジナルの『光神話 パルテナの鏡』は、主人公の少年天使ピットが、光の女神パルテナから与えられた弓矢で戦い、闇の女神メデューサを倒すことを目指す2Dアクションゲームだ。今回の3Dリメイク版『Kid Icarus』でもピットが主人公となり、プレイヤーは弓矢で敵を倒しながら進んでいく。ステージは天空に浮かぶ島のような場所で、ギリシャを思わせる建物があったり、石化した人の姿があったり、あるいは足を踏み外してステージから落下するとゲームオーバーになるなど『パルテナの鏡』を意識した要素はあるものの、ステージ構成自体は新規に作られている。

本作は、フル作品でいうと導入部分だけを切り出したような形で、いくつかのパズル要素と敵とのバトルで、およそ10〜20分程度の内容となっている。パズルは、光る的に矢を当てると足場が動き出すというもの。弓を引くと狙っている方向に青い矢印が現れ、右スティックで的(あるいは敵)に狙いを定めて、矢印がピンク色に変わった時に矢を射れば命中する。狙いがきっちり正確でなくともピンク色に変わる範囲には遊びがあり、矢がホーミングして命中するあたりは良い配慮である。ピットは2段ジャンプが可能で、ジャンプ中にボタンをホールドすることでわずかながら滑空することもできる。そうした技も駆使しながら、足場を飛び越えていく。

道中での敵とのバトルは、一定のエリア内で規定数の敵と戦う形で、バトルを終えないと先には進めない。そのバトルエリアは合計4か所あり、2種類の敵が登場する。オリジナル版に登場したシーマムのような青いヘビと、ケロンのような一つ目の空飛ぶモンスターだ。どちらの敵も矢を2回当てると倒せるが、弓矢には溜め攻撃が用意されており、画面内の敵を一発で一掃することもできる。溜め攻撃は撃つとエネルギーを消費し、エネルギーは敵を倒すたびに入手できる。

また、道中で鏡の盾を入手していると、敵の攻撃を防ぐことができるようになる。この盾は構えてからしばらくのあいだ光っており、その間にケロンが撃ってくる弾を防ぐと、弾き返して倒すことが可能。そうして倒した場合は、エネルギーを通常よりも多く入手できる。

この『Kid Icarus』はUnreal Engine 4で開発されており、12人の学生が7週間で完成させたという。カメラ位置のせいか足場の位置関係が分かり難かったり、敵の弾が壁をすり抜けたり画面外から撃ってきたり、いくつかバグが残っていたりと調整不足な面があることは否めないものの、天空のステージは美しく目を見張るものがある。またゲームプレイはシンプルながら、ゲームの導入部分という設定であることを考えれば、この先の展開を期待させる役目は十分に果たしている出来であるように思う。

ただし、いうまでもなく「 パルテナの鏡・Kid Icarus」は任天堂のIPである。また任天堂も2012年にニンテンドー3DS向け新作『新・光神話 パルテナの鏡』を発売している。開発した学生は、もともと小規模な学生プロジェクトだったこともあるが、デリケートな領域であるため、このままの形でさらに開発を進める考えは無いという。学生が既存IPを“勝手リメイク”した例でいうと、最近では『魂斗羅』をリブートした『Contra 2028』があった(関連記事)。こちらの作品もUnreal Engine 4を使用して開発された。同作は現在も配布が続いているが、どちらも権利者が訴え出れば中止せざるを得ないだろう。とはいえ、一般のファンゲームとは異なり、学校で学んだ成果を表現するためという観点からすれば、彼らの目的はすでに達成されているのかもしれない。

*Wii U バーチャルコンソール版『光神話 パルテナの鏡』のトレイラー

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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