『LoL』世界大会決勝は連覇成らず。伝説は語り継がれ不滅となる

7週間にわたって続いた『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』世界大会にも、ついに終わりの時が来た。全世界から集まった24のトップチームの中から決勝戦会場である北京国家体育場、通称「鳥の巣」にたどり着いたのはたったの2チーム。二者の内一者は世界最強の称号を手にするが、もう一者は必ず敗者となる。

7週間にわたって続いた『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』世界大会にも、ついに終わりの時が来た。全世界から集まった24のトップチームの中から決勝戦会場である北京国家体育場、通称「鳥の巣」にたどり着いたのはたったの2チーム。二者の内一者は世界最強の称号を手にするが、もう一者は必ず敗者となる。ウサイン・ボルトが金メダルの走りを見せた競技場で、ふたたび繰り広げられた世界最高の戦い。2017シーズンの結末を、君は見届けたか。

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SK Telecom T1 vs Samsung Galaxy

ついにたどり着いたこの場所で、ついに手にしたこの優勝カップ。画像出典:LoL Esports Photos

昨年の連覇に続いて、『LoL』史上初の三連覇に挑むSK Telecom T1(SKT)と昨年の世界大会決勝戦でSKTに敗れたSamsung Galaxy(SSG)が対峙することとなった。昨年の再戦である。「また韓国チーム同士の決勝か」とうんざりする声も、もちろんあったろう。しかし、互いに譲れないものを守り勝ち取るために長い道のりを進んできた2チームだ。序盤に不利を背負いながらも見事な逆転劇と適応力の高いピック&バンでトーナメントを勝ち上がってきたSKT。揺るぎない戦いで相手を圧倒して再び決勝へと戻ってきたSSG。この2チームがここでが王座を賭けて激突するのはただ「必然」の結果である。

第1試合から仕掛けたのは青側のSSGだった。ミッドレーンのCrown選手が早いピックでマルザハールを選択し、トップレーンはSKTのHuni選手がナーを選んだのに対してCuvee選手がケネンで対抗する形を選択。チーム全体としてディスエンゲージ能力に欠けるSKTのメンバーを順に捕まえる形で、試合の主導権を奪って第1試合に勝利した。続く第2試合ではSKTがピック&バンで不利とされる赤側をあえて選択、最後のピックでCuvee選手のナーに有利を取れるヤスオをHuni選手に与えて、トップレーンからの巻き返しを図った。その意図は半ば成功しかけていたが、ドラゴン前の集団戦に敗北したことで主導権をSSGに奪われ、そのままSSGが2試合目も勝利した。そしてついにSSGが王手をかけた第3試合、SKTはミッドのFaker選手にカルマとアーデントセンサーを託した。さらにボットレーンはサポートのWolf選手にレオナをピックさせて序盤からプレッシャーをかけ、トップレーンはHuni選手にアンチタンク筆頭のトランドルを取らせて両側のレーンで有利となれる形を取った。しかしSSGはSKTの攻勢を耐え抜き、SKTのダメージ源として奮戦していたBang選手を捉えて一気にSKTを追い詰めた。決勝までのSKTの戦いぶりからすると、あっけないとすら思えるような試合展開を経て、SKTのネクサスがついに3度目の爆発四散を遂げ、そしてSSGのブースが熱狂の渦に包まれた。SKTの三連覇は阻まれ、新たな王者が誕生したのだ。

 

絶対王者のいない、新たな世界へ

『LoL』における強さの象徴として、頂点に君臨していた伝説の終焉。画像出典:LoL Esports Photos

決勝戦の戦いを見てから今大会を振り返ると、SKTは不安定なチーム状況で戦っていたという印象が強くなる。彼らが多くのマッチで劇的な逆転や第5試合までもつれ込むことが多かったのは、序盤の主導権を失うゲームが多かったことの裏返しでもあったのだ。一方のSSGは相手チームに対する研究と準備が非常に丁寧で、特に同じ韓国リーグのチームに対してはノックアウトステージではいずれも圧勝という結果を残している。SKTのFaker選手はこの決勝戦でも不利な対戦とされた組み合わせで、常にCrown選手よりも序盤のレーンで有利な状況を作ってはいたものの、他のレーンで負った不利が大きすぎてチーム全体としては主導権を取ることができなかった。そして試合が中盤にさしかかったところでバロンやドラゴン回りの戦闘で決定的な敗北から試合を落とす結果となった。今大会はとにかくアーデントセンサーを活用できるチャンピオンがチームに必要で、チームによってはサポートの選手の得意とするスタイルとかみ合っていなかったことも影響していたかもしれない。Wolf選手がラカンやレオナを用いてワンポイントのプレイで逆転劇を演出する一方で、ルルなどでは序盤のレーン戦に苦戦していた様子もそれに通じるだろう。

今年の世界大会は例年にもまして話題に事欠かない大会で、公式テーマソングのタイトル「Legends Never Die」にふさわしく、観客の予想を裏切る多くのドラマが繰り広げられた。GAMの活躍、EDGの攻勢とそれを覆すSKTの逆転劇、FNCの驚くべきカムバック、例年通りのNA Week2、ノックアウトステージでSKTを追い詰める各地の強豪チーム、そして何よりもSSGの優勝。今大会のSSGはいくつもの物語とともにあった。Season 4(2014年)当時のチームであったSamsung Whiteは世界大会に優勝したものの、KRエクソダスと呼ばれる国外への選手流出に伴って解散してしまった。その後、再結成されたチームが世界大会に進んだのが2016年だったが、決勝戦で相対したSKTに2勝まで迫るも敗退。そして当時のメンバーそのままに再びSKTに挑み、ついに勝利したのが今大会なのだ。また選手同士にも因縁ともいうべきものが存在していた。SSGのジャングルを務めるAmbition選手は、もともとミッドレーナ―だったのだが、SKTのFaker選手がデビューを果たした試合において対戦相手として叩きのめされたという過去があったのだ。魔王、もしくは神と呼ばれた選手の伝説の始まりに記された対戦相手と、その君臨に終止符を打った対戦相手が同じ人物というのは、なかなかにドラマティックな筋書きだ。

さて、圧倒的な強さの象徴としてSKTが君臨していた時代は終わった。では彼らはもはや過去のチームなのだろうか? この問いに対する答えはただ一つ、「Legends Never Die」だ──伝説は死なず、当事者と目撃者の中に刻まれる。この公式テーマソングはゲーム内のチャンピオンの偉大さを歌っているが、偉大な伝説を築き上げてきたという点ではワールドクラスのトッププレイヤーも同じだということをも、高らかに歌い上げている。SKTが敗北に塗れるのは初めてのことではなく、2014年はそもそも世界大会出場を逃している。そしてそこから2015~2016年と圧倒的な強さを発揮して世界に君臨したという実績を持つのがSKTなのだ。それに新シーズンが始まるとなれば、「昨シーズンがどんな結果に終わったかはもう関係ない」。己の名前を伝説として刻むためには、ただひたすらに目の前に立ちふさがる相手に打ち勝つのみ。2018シーズンから再び始まる全世界の挑戦者たちの軌跡がどのような絵を描き出すのか、新たな世界への期待が高まるばかりである。

[執筆協力:ユラガワ]

Sawako Yamaguchi
Sawako Yamaguchi

雑食性のライトゲーマー。幼少の頃からテレビゲームに親しむが、プレイの腕前は下の下。一時期国内外のTRPGに親しんでいたこともあり、あらゆるゲームは人を楽しませるだけでなく、そのものが出発点となって人と人を結びつけ、新しい物語を作る力を持っていると信じている。2012年から始めた『League of Legends』について、個人ブログやTwitterにて日本語で情報発信を続けている。

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