『LoL』欧米トップリーグLCSの2018年フォーマットが発表。持続可能なプロシーンへ向けて大きな変更に踏み切る


『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』の開発運営会社Riot Gamesは10月30日、公認の欧州リーグ「EU LCS」の2018シーズンフォーマット概要を発表した。同じく公認の北米リーグ「NA LCS」についても同様のフォーマット概要を9月30日に発表済。両リーグともに最大の変更は、世界的にBo3(2本先取)になっていたレギュラーシーズンの対戦がBo1(1試合のみ)に戻る点で、業界やファンの間にさまざまな論議が起こっている。

ファンとチームを支えるための変更

2018シーズンからフランチャイズ化を果たし、二部リーグへの降格がなくなることが6月に発表されていたNA LCS。先月末の発表では、ダブルラウンドロビン(総当たり戦で同じ組み合わせが2回)で行われているレギュラーシーズンの対戦が、来年春よりBo1になることが明かされた。日程等の詳細は未発表だが、これにともない毎週の配信も1チャンネルになる。

EU LCSもNA同様Bo3で行われてきたレギュラーシーズンが、来年春よりBo1となる。また2017シーズンは全10チームを5チームずつ2グループに分けて進行してきたが、これも廃止されて10チームによるBo1ダブルラウンドロビンに戻ることとなる。配信日もこれまでの木金土配信から、金土配信へと移行する。参加チームにとっての最大の変更は、2018シーズン中の春夏スプリット間の降格廃止だろう。さらに新制度として、2018シーズンの配信における総獲得視聴者数からチームに対してボーナスが支給される。また、現在の二部リーグである「EU CS」を廃止し、ヨーロッパ各地域で開催されているリーグを勝ち抜くことで出場権が得られる「全ヨーロッパ大会」を年2回開催する形で調整しているという。

降格が(一時的にでも)なくなることで、チームが競技に打ち込みやすくなるのはもちろんだが、ファンも応援するチームが3か月ほどでトップリーグから姿を消す心配をする必要がなくなるだろう。北米より市場規模が小さいヨーロッパのチームは金銭面での苦労も大きいことが知られている──コミュニケーションを同じく英語で行う北米と、選手やコーチングスタッフの取り合いをしなければならないのだ。視聴者数ボーナス制度はこうした金銭面でのチーム経営の助けになると同時に、ファン獲得のためのチーム独自コンテンツ制作を促進することにもなるはずだ。

ドイツ・ベルリンにあるEU LCSスタジオ。EUのチームはチームが発信する独自コンテンツに欠けるという批判もあった。画像出典:LoL Esports Photos

Bo1フォーマットの長所と短所

コミュニティや業界人の間で最大の論点となっているのはBo3からBo1への移行だ。かつてNA LCSは2016年春までBo1を採用していたが、同年夏よりBo3を採用して以降の3スプリットをBo3で実施してきた。当時のフォーマット変更アナウンスでは「Bo1はエンターテイメント性が高くスケジュールも固定できるが、Bo3にはBo1にないスリルと達成感を視聴者にもたらすことができ、参加チームにとってはプレイオフや国際大会後半での連続試合の練習にもなる」とBo3採用の利点が説明されていた。

一方、今回の変更アナウンスではBo3を採用したことで起こった負の影響が説明されている。曰く、NAとEUの双方でBo3への移行後は確かに期待していたメリットが得られたのだが、視聴者の半数以上は配信中の試合のチームを気にすることなく視聴しており、特定のチームを応援するためにBo3の最初から準備して視聴するファンは予想よりも少なかったようだ。またほとんどの視聴者が、時間がかかるBo3の観戦時間を作ることに苦慮しており、平均的なファンからすると観戦しづらいシーンになってしまったという。こういった要因から、今後Bo3を続けると視聴者数やプロシーンの盛り上がりに大きな影響が出かねないというのがリーグ運営の判断になるのだろう。

確かにBo3は「Best of 3」という表現どおり、結果が出るまでに最大3試合かかってしまう。『LoL』における1試合の時間は平均でおよそ35分、長引けば1時間近くかかる試合もあり、配信スケジュールの時刻表示にも常に「およそ」がついている程度には試合開始時刻がずれ込むことが多い。その日の最初の対戦こそ時間どおり始まるものの、2対戦目以降となると相当あやしいというのは筆者の経験でもある。Bo1であればその後のスケジュールに影響するのは1試合の進行だけで、その後の進行を追うのも楽になるはずだ。

舞台袖で前の対戦終了を待つPhoenix1のメンバーたち。同日の対戦に出場するチームメンバーたちには、前のBo3対戦がいつ終わるかわからない中で待たなければいけない負担もあった。画像出典:LoL Esports Photos

収益と名声のはざまで

他方で業界人やプロ選手たちが懸念するのは、Bo3とBo1では求められる競技力が違ってくる点にある。Bo1では事前準備が対戦に大きな影響を与え、練習試合などで出していないチャンピオンをいきなり使っていわゆる「初見殺し」を狙うような戦略が通用してしまう。Bo3では複数の試合を進めながら相手の出方をうかがうことになり、ドラフト戦術から試合中の駆け引きまで、対戦中のチームの適応力も試される。ただしBo3では「最初の試合は様子見で捨てるがあとは取る」といった戦略も通用する。Bo1かBo3かで、チームが試合に対して取る戦略が大きく変わることになるのだ。

レギュラーシーズンがBo1になることで心配されることには、欧米チームの国際競争力が落ちることもある。NA LCSフォーマット変更告知では「Bo1に戻ることで減ってしまう試合数については、選手協会と話し合いを持ち練習やスクリム(練習試合)を効率化することで解決する」と言及されている。しかし当のプロ選手たちからは「スクリムがBo3の代わりになることなどない」と批判する向きもある。2013年以来『LoL』世界王者の座を占め続けている韓国チームは、競技シーン初期からBo2やBo3を採用してその強さを育んできたといえよう。ただ、現在もレギュラーシーズンBo3を採用する韓国トップリーグ「LCK」は夕方からの2対戦配信を週5日実施しており、シーズン中の選手たちのスケジュールは常にタイトなものになっている。LCKは英語でのグローバル配信も実施しており、世界中のファンからも親しまれていることから、ここ数年は『LoL』プロシーン同士でファンの観戦時間を奪い合っている状況といっても過言ではなかった。そういった市場規模の増大にともなう収益化が、欧米のBo1回帰の一因になったというのはある種の皮肉といえるかもしれない。今年の世界大会では欧米のチームが大きな健闘を見せたが、Bo1移行によって両地域の国際競争力がどうなってしまうのか、非常に不安が残る。

なお、11月中にはNA LCSの来シーズンチームラインナップや選手協会に関する発表などがおこなわれる見込みだ。選手の移籍など、毎年恒例のオフシーズン中の動きも始まった。欧米LCS 2018 Spring Splitの開始日は、EU LCSについては未発表だがNA LCSは来年1月20日予定となっている。