『LoL』世界大会グループステージ第2週。広州への切符を賭けた戦いの結末は

今年の『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』世界大会「World Championship 2017」もいよいよ折り返し地点を迎えた。先週までの2週間では、全16チームが中国は武漢にて戦いを繰り広げた。先の長い世界大会、グループステージではノックアウトステージへ向けて手札を隠しているチームも多い。

今年の『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』世界大会「World Championship 2017」もいよいよ折り返し地点を迎えた。先週までの2週間では、全16チームが中国は武漢にて戦いを繰り広げた。先の長い世界大会、グループステージではノックアウトステージへ向けて手札を隠しているチームも多い。だが、あっと驚く戦術や粘り強さで格上をねじ伏せたチームもある。例年の世界大会でもっとも「見ていて面白い試合」が起こるグループステージを、さっそく第2週の試合を中心に振り返っていこう。

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グループB

画像説明:第1週の絶望的な結果から再起し、ノックアウトステージ進出を決めたFnaticメンバー。画像出典:LoL Esports Photos
最終順位
1位:LongZhu Gaming (6勝0敗)
2位:Fnatic (4勝4敗・3-wayタイブレーク2勝)
3位:GIGABYTE Marines (2勝5敗・3-wayタイブレーク決勝敗退)
4位:Immortals (2勝5敗・3-wayタイブレーク敗退)

第1週を圧倒的な戦績で折り返したLongZhu Gaming(LZ)、悪くないスタートを切ったImmortals(IMT)、隠し持った牙の鋭さで視聴者を魅了するGIGABYTE Marines(GAM)、まさかの全敗で窮地に陥ったFnatic(FNC)という状況でスタートした第2週。真っ先に会場を沸かせたのはまたしてもGAM。IMTに対して隠していた秘密兵器を披露して主導権を奪い、みごと北米の強豪を打倒して見せた。さらにはLZに対してすら序盤に大きなリードを築いたものの、終盤のゲームメイクで力及ばずに逆転負けを喫することとなった。そしてもう一つのドラマを生み出していたのがFNCだ。第1週の全敗でグループ突破が絶望的だったこのチームだが、IMTがGAMに敗北したことによりLZ以外が勝敗数で完全に並ぶこととなったのだ。ここで奮起したFNCはLZ以外のチームに勝利を収めて浮上することに成功した。LZが圧倒的な力を見せ、GAMがジャイアントキリングを繰り返した結果、LZ以外の3チームは6試合を終えて2勝4敗で同率4位となり、2位をめぐる3チームのタイブレークが行われることとなった。勝利した試合の試合時間が短いGAMがシード権を得て有利な状況だったものの、この日の勢いはFNCにあり、FNCはタイブレーク戦においてIMTおよびGAMを撃破。劇的なカムバックによりグループステージ突破をもぎ取ることに成功した。

お勧めの試合IMT vs GAM
今大会のGAMが関わる試合は全て最高と言いたい。その中でも対IMT戦は第一試合から会場を熱く盛り上げてくれた。

 

グループC

自身の悲願である優勝を目指すUzi選手。過去2回決勝戦まで進み、いずれも韓国チームとの対戦で敗退している。 画像出典:LoL Esports Photos
最終順位
1位:Royal Never Give Up (5勝1敗)
2位:Samsung Galaxy (4勝2敗)
3位:G2 Esports (3勝3敗)
4位:1907 Fenerbahçe Espor (0勝6敗)

第1週を全勝で折り返し、中国第一シードのEDGに代わって大きな期待を背負うRoyal Never Give Up(RNG)、RNGにこそ敗れたものの強豪国の実力を見せたSamsung Galaxy(SSG)、アジアの壁に苦しむ欧州王者G2 Esports(G2)、マイナー地域代表として厳しい戦いに挑み続ける1907 Fenerbahçe Espor(FB)というラインナップのグループC。まず先陣を切ったのはFNCの劇的な勝ち抜けに奮起したG2だった。第1試合で初週無敗だったRNGに土をつけることに成功したのだ。しかしSSGの牙城を崩すには至らず、最終戦績は3勝に留まりグループステージ突破はならなかった。一方、初戦で思わぬ敗北を喫したRNGだったがその後の試合に響くことはなく、宿敵SSGとの直接対決を見事に制して1位でのグループ突破を確たるものにした。FBはFrozen選手やPadden選手が要所で見せるシーンこそあったものの、1勝という結果を残すことなく大会を去ることとなった。

お勧めの試合:RNG vs SSG
RNGにとって負けられないSSGとの対決。ディスエンゲージ能力に問題があるSSGの弱点を見事に突くRNGの構成が光る。

 

グループD

画像説明:生え抜きのWEトップレーナ―である957選手。彼のランブルは機動力に乏しい終盤特化型のADCにとって大きな脅威だ。 画像出典:LoL Esports Photos
最終順位
1位:Team WE (5勝1敗)
2位:Misfits (4勝3敗、タイブレーク勝利)
3位:Team SoloMid (3勝4敗、タイブレーク敗北)
4位:Flash Wolves (1勝5敗)

北米王者のTeam SoloMid(TSM)、中国第3シードのTeam WE(WE)、欧州の新鋭Misfits(MSF)、台湾の雄Flash Wolves(FW)と予想の難しい組み合わせとなったグループD。このグループはFWを除く3チームが2勝1敗で第1週を終えるという全てのチームの気が抜けない状況で第2週スタートとなった。このグループでは第2戦のWE vs TSMにおいて、グループステージで初めてケイトリンが使用された。スキルによる補正を除いた状態で全チャンピオン中最長の通常攻撃射程を誇る彼女は、大会前の弱体化によってプロチームの選択肢から消えたと考えられていた。しかし再び表舞台へと戻ってきたケイトリンはチャンピオン同士の打ち合いではなくレーンのコントロールにおいてその強さを発揮し、早い時間帯でのタワー破壊、そしてそこで得た資金でアーデントセンサーの購入を含めたゲーム展開を加速していくという戦略を実現させることとなった。この新戦略で直後のFWも制したWEは勢いをそのままに2週目を全勝し、グループ1位を確保した。MSFは2週目WEおよびTSMに敗北してしまいグループ突破が危ぶまれたが、TSMがFWに対してあまりにもあっけなく敗北したことで3勝3敗同士によるタイブレークが発生、最後の試合を制してFNC同様に見事なカムバックを遂げた。TSMは初週と同様の戦略しかなかったことと、序盤の組み立てがちぐはぐで失った差を取り返すビジョンが無かったことが致命的な敗北を招き、またしても第2週の失速でグループステージ突破を逃すこととなった。

お勧めの試合WE vs TSM
WEのMystic選手が今大会初となるケイトリンを選択した一戦。通常攻撃の射程の長さで序盤のボットレーンを支配している。

 

グループA

SKTで最も有名なのはFaker選手だが、恐るべき逆転劇を演出するのはキャプテンのWolf選手だ。 画像出典:LoL Esports Photos
最終順位
1位:SK Telecom T1 (5勝1敗)
2位:Cloud9 (3勝3敗)
4位:Edward Gaming(2勝4敗)
4位:ahq e-Sports Club(2勝4敗)

あらゆるチーム、選手からの敬意と敵意を集めてやまないSK Telecom T1(SKT)がその実力を見せつけて全勝する一方、中国第1シードとしての期待を背負うEdward Gaming(EDG)がまさかの全敗で終わった第1週。巻き返しを図るahq e-Sports Club(AHQ)と、北米第2週の呪いを跳ねのける唯一の希望として残されたCloud9(C9)が広州への最後の切符を奪い合う戦いが、グループステージ最終日に行われた。初戦のAHQ vs SKTにおいてAHQのWestdoor選手が、代名詞ともいえる得意チャンピオン「フィズ」でSKTを撃破したのを皮切りに、EDGも第1週の結果からは信じられないパフォーマンスを発揮してAHQとC9を一蹴すると会場は一気に沸き立った。続くC9 vs AHQではC9がグループステージ第2週に適応した戦略でAHQに引導を渡し、いよいよ最後のSKT vs EDGの結果によってすべてが決まる状況が整えられた。EDGが勝てば3勝3敗となってC9と2位を賭けたタイブレークに臨めるが、負ければグループステージ脱落となる最終戦である。この日2連勝で勢いに乗るEDGはSKTに対して圧倒的なリードを序盤から作り上げることに成功し、中国第1シードとしての期待に応えることができるかに思われた。しかし再びSKTの隔絶したゲームメイクがEDGを絡めとり、観客の悲鳴にもにた喚声の中でEDGのネクサスは爆発四散。Cloud9は奇しくも昨年と同様にSKTの勝利によってグループステージ突破を決め、EDGはグループステージでの敗退が決定した。

お勧めの試合SKT vs EDG
この試合は第1週の試合ではない。SKTがもはや伝説的と言える所以を見せつける恐るべきゲーム。

 

グループステージ第2週と北米の呪い

グループステージ第2週は、第1週で行われた試合の結果を元に各チームごとに新たなチャンピオン選択や試合に対するビジョンを用意できるかが問われる週となる。分かりやすい例としては、グループDのWEが披露したケイトリンによるシージ構成が上げられるだろう。最長射程の通常攻撃でレーンを圧迫し、タワーにダメージを与え続けることでゲーム展開を加速して、直近の弱体化による攻撃速度の低さはアーデントセンサーで補うという戦略だ。装備さえ整えば試合をひっくり返す能力を持っているトゥイッチやコグ=マウに対しても、序盤を有利に進めることで彼らの本領を発揮させる前にゲームを終わらせるつもりで主導権を取りに行くことになる。また、現在選択肢に上っている「中盤に強さのピークを迎えるADC」であるザヤにはレーンで一方的な有利を取ることが可能だ。

集団戦の志向も変化が見られ、ADC同士が十分な装備を整える後半はアーデントセンサーを持ったサポートを真っ先に狙うことで、敵チームのADCの能力を低下させることを狙った構成がみられた。ここで選択されていたのは一瞬で敵を倒せるルブランやフィズといったアサシンチャンピオン、あるいは「ワシの奢りじゃ!」で戦闘から無理やりサポートを追い出すグラガスだ。このような変化に適応できなかったり、あるいは自ら変化を生み出すことができなかったチームは第2週を勝ち抜くことはできなかった。この点がはっきりと表れているのが、北米チームの明暗と言える。TSMやIMTは第2週に入っても戦い方に変化がなく、相手の新たな戦略に対応することにも失敗している。一方でC9は自らもケイトリンを用いた構成で戦い、AHQを破ってグループステージ突破に必要な3勝目を手にした。「NA week 2」と呼ばれる北米チームの2週目における失速は、2015年の世界大会以来繰り返される呪いとみなされており、2週間の戦いを勝ち抜くための隠し玉や1週目をふまえた適応力の点で北米リーグは改善の余地が大きいのかもしれない。

さて、各グループの上位2チームがブラケットを戦う「ノックアウトステージ」もこの週末から開始となる。舞台は内陸だった武漢から一転して港湾都市・広州となり、準々決勝の生配信は日本時間で10月19~22日の17時より開始予定。公式の勝敗予想大会「Pick’em」も大絶賛予想受付中だ。公式配信・試合情報はLoL eSports JPを参照されたい。西洋のチームは果たしてアジアのチームを打ち破ることができるのか。SKTの世界大会三連覇を阻むチームはいるのだろうか。

[執筆協力:ユラガワ]

Sawako Yamaguchi
Sawako Yamaguchi

雑食性のライトゲーマー。幼少の頃からテレビゲームに親しむが、プレイの腕前は下の下。一時期国内外のTRPGに親しんでいたこともあり、あらゆるゲームは人を楽しませるだけでなく、そのものが出発点となって人と人を結びつけ、新しい物語を作る力を持っていると信じている。2012年から始めた『League of Legends』について、個人ブログやTwitterにて日本語で情報発信を続けている。

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