『LoL』グループステージへ突入する世界大会。各地のトップチームが繰り広げる華麗な戦いへ
今年は中国各地を巡って開催される『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』世界大会。1週間にわたって繰り広げられた、苛烈なプレイインステージの戦いも終わり、いよいよ五大リーグのトップチームを交えたグループステ―ジが始まる。例年のグループステ―ジでは、事前の予想を覆すドラマティックな試合展開や予想外の大金星が発生しており、世界大会で最も観戦の楽しいステージともいわれているほどである。本稿ではそんなグループステージに参戦するチームを紹介していこう。
『LoL』World Championship 2017 シリーズ記事
・World Championship 2017がやってくる! 『リーグ・オブ・レジェンド』ゲーム内関連イベントも開催
・世界大会に挑むマイナー地域たちの前哨戦。『LoL』プレイインステージ第1週
グループA
LPL第1シード:Edward Gaming
中国においてなんといってもトップチームとして名前が挙がるのがこのEdward Gamingだ。SKT以外のチームで唯一春夏間の国際大会「MSI」を制覇した実績を持ち、LPLでも常に上位を占め続けている。とかく積極的に戦闘を仕掛けていく傾向があるといわれる中国リーグの中でもEDGは戦略を重視し、高度なゲームコントロールを行えるという点でも一つ抜けた位置につけているのは間違いない。奇しくも第2シード枠となったSKTと同じグループでの開幕となったが、今大会におけるアジア地域内の力関係を図る試金石となる組み合わせとみてよいだろう。
LCK第2シード:SK Telecom T1
世界大会優勝3回、2015~2016シーズン連覇という『LoL』プロシーンにおける金字塔ともいえるチームがこのSKTだ。世界最高のミッドレーナ―との呼び声も高いFaker選手をはじめとする世界最高峰の才能を育て上げ、今大会は前人未踏の三連覇を目指すことになる。とはいえ今年のSKTは過去2年間と比較すると、ゲームバランスとチームのバランスの間に齟齬がみられ、夏の韓国リーグ制覇を逃しているのも確かだ。世界大会では圧倒的な強さを誇るといわれるこのチーム。果たして今年も彼らはその恐るべき本性をあらわにするのだろうか?
LMS第2シード:ahq e-Sports Club
台湾より参戦するのは、グループDのFlash Wolvesと台湾の覇を競いながら世界大会常連として名を連ねるahqだ。今年は看板ミッドレーナ―だったWestdoor選手はサブ登録。彼に代わってチームの屋台骨となるのは、シンガポールにその人ありと知られた名選手であるChawy選手だ。アサシンを得意としているWestdoor選手よりもよりさまざまなチャンピオンを使いこなす彼は、多種多様なチャンピオンを使いこなさなければならない今大会の環境でも活躍してくれるだろう。国際的なビッグチームが並ぶ厳しいグループではあるが、かつて台湾が世界を取った時もそんな予想を立てたものはいなかった。研ぎ澄まされたLMSの牙を是非とも魅せて欲しい。
NA LCS第3シード:Cloud9(プレイイン勝ち上がり)
チーム結成以来常に北米リーグの上位争いに食い込み、世界大会に出場し続けているのがこのCloud9だ。新チームの躍進が著しい『LoL』ではすでに古豪にカウントしてもよいかもしれない。とはいえ北米勢は歴史的に世界大会での結果が振るわず、ノックアウトステージへの進出も苦しいという状況が続いてるのも事実だ。2013シーズンにSKTの一員として世界を制したImpact選手や、新たな戦力としてチームに新風を吹き込んだContractz選手と共に、次のステップへと進むことができるのか。チームの歴史に新たなページを書き加えるための挑戦が始まる。
グループA総評
五大リーグの中でも抜きんでた実績を残しているSKT・EDGという2チームが激突することになったのがこのグループAだ。ahqとC9にとってはなかなかに厳しいグループというのが実状だ。しかし、C9ファンは2015シーズンの世界大会グループステージ第一週の奮戦ぶりをおぼえている。昨年のAlbus Nox Lunaのような「まさか」があるのもグループステージの醍醐味だ。思い思いの予想を立て、何が起こるのかを大いに期待しながら開幕を待つことにしよう。
グループB
LCK第1シード:Longzhu Gaming
2016シーズンまで下位グループに甘んじていたこのLCKチームは、2017シーズンを迎えるにあたってROX TigersのボットレーンコンビだったPray選手とGorillA選手を獲得して補強を行った。Spring Splitはそれでも結果を出せず7位と苦しんだが、さらなるメンバーの変更によってSummer Splitは別チームのようなパフォーマンスを発揮。レギュラーシーズン1位、プレイオフはSKTとの直接対決を勝利して制覇という実力の証明をもって世界大会への切符を勝ち取った。シーズン中の結果を問わず世界大会では圧倒的に強いといわれるSKTが三連覇を目指す中で、最も有力な対抗馬がこのチームということになるはずだ。
NA LCS第2シード:Immortals
昨年結成されて以来北米シーンを揺るがし続ける新鋭チーム。登場当初もHuni選手やReignover選手を獲得するなど驚くべきメンバーを揃え、2016シーズン中は圧倒的な強さを見せつけていたチームだ。2017シーズンに入ってミッドのPobelter選手以外のスターティングメンバーをすべて入れ替えたが、チームとしての勢いは衰えることなく、むしろプレイオフを含めて安定した結果を残すことに成功した。メンバーの変更やゲームバランスの変化に対応しながら勝ち続けられるということは、選手のみならず戦略を研究・構築するスタッフにも充実した人材を揃えていることを意味する。その組織力を世界大会という場で披露する機会がようやくやってきたのだ。
GPL第1シード:GIGABYTE Marines
世界で最も攻撃的な地域リーグのひとつGPLから、MSIにおけるめざましい活躍によって出場権を獲得したのがこのGIGABYTE Marinesだ。もちろん地域の王者としてGPL Summer seasonも制覇している。参加チームの中でも最もアグレッシブなプレイスタイルを誇る彼らは、時に強豪であってもその勢いで飲み込む可能性を秘めている。今大会で最も結果の読めないチームの一つとみてもいいかもしれない。
EU LCS第3シード:Fnatic(プレイイン勝ち上がり)
第一回世界大会優勝チームにして、以来ヨーロッパで存在感を示し続ける名門。全世界にファンを抱える人気チームがFnaticだ。欧州が不振だった2014シーズン終了後に中心メンバーが脱退したものの、2015シーズン開始前に当時無名だったHuni選手と、LCKの下位選手Reignover選手を発掘して見事に復活を遂げた。そのままアジア勢と互角に渡り合って世界大会ベスト4という結果を残している。その後もメンバーの入れ替わりは続いているものの、看板選手のRekkles選手を中心に才能ある若手を育て上げて再び世界大会へと挑んできた。さらに上を目指す戦いへの準備は万全だ。
グループB総評
現在最も勢いのあるチームの一つであろうLZが第1シード枠で参加しているのがこのグループBだ。ほかのチームはまずLZに対してどのように挑むか、そして他のチームに対してどんなカードを切って戦うのかが重要になるだろう。グループステージの第一週に隠し玉を披露してしまうと、翌週以降の試合で対策を取られて失速することもある。2015シーズンのC9は他のチームに先駆け、最新の戦略で一週目の試合をことごとく勝利したが、その後は対策されて結局ノックアウトステージに進むことができなかった。目の前の試合とその先を見据えた情報戦、二つの厳しい戦いを勝ち抜けるチームだけが次のステージへ進むことになる。
グループC
EU LCS第1シード:G2 Esports
欧州において4スプリット連続優勝を飾り、押しも押されぬ欧州王者として君臨するのがこのG2だ。昨年までは国際大会での結果が振るわず、内弁慶との評価もあった。しかし今年のMSIではその評判を払拭する見事な活躍を見せてくれている。欧州のチームにおいて最も鮮やかなローテーションを得意とし、他のチームを寄せ付けない強さを誇る。その戦略がアジアの強豪に対してどこまで通じるのか、国際大会における欧州の復権は彼らの活躍にかかっている。
LCK第3シード:Samsung Galaxy
2014シーズンにおいてSKT不在の世界大会を制覇したチーム「Samsung White(SSW)」は、その後の韓国人選手の大量流出によって事実上解体された。その後改めて再編されたチームがこのSamsung Galaxy(SSG)だ。再編から2年目の2016シーズン世界大会においては決勝戦までコマを進め、SKTに対してあと一歩のところまで迫って見せた。サモナーズカップを再び手にするまであとわずかだった彼らはこの1年間を雪辱のために費やし、ドリームチームと称された「kt Rolester」を地域代表選抜戦の最終戦で粉砕し、再び世界大会へと帰ってきた。そのKTでミッドを務めていたのが世界制覇時のSSWに所属していたPawn選手だったのは、運命の皮肉だろうか。生まれ変わってから二度目の世界大会へと臨むこのチームは、かつてない意志をもって栄冠への道に再び挑もうとしている。
LPL第2シード:Royal Never Give Up
2014シーズンにおいて世界大会決勝まで進み、SSWによって優勝を阻まれた中国の強豪「Star Horn Royal Club」を前身としているのがこのRoyal Never Give Up(RNG)だ。中国において絶大な人気を誇るADCのUzi選手は、過去2回の世界大会決勝進出経験があり、いずれも優勝を韓国チームに阻まれた記憶がある。Edward Gamingによる2015年のMSI制覇以後、国際大会での活躍に乏しい中国チームにとって、世界大会での優勝は悲願と言ってもいい。常に貪欲かつ攻撃的に戦うスタイルと、世界大会制覇への飢えは、あらゆるチームにとって大きな脅威となるだろう。
TCL代表:1907 Fenerbahçe Espor(プレイイン勝ち上がり)
もっとも五大リーグに近い地域として毎回世界大会のワイルドカード枠を争うトルコだが、プロサッカークラブが抱える『LoL』チームの多いリーグでもある。かつてワイルドカード地域大会に出場したBeşiktaş、今年より『LoL』部門を創設したGalatasaray、そしてこのFenerbahçe。豊富な資金を背景に、欧州や韓国から外国人選手を招くことにも熱心なトップチームを作り上げている。プレイインステージでは果敢な判断とここ一番での実行力でライバルたちを圧倒し、LMS第3シードのHong Kong Attitudeを抑えてグループ1位を獲得した。続くエリミネーションマッチでは、ワイルドカード地域のライバルであるブラジルのTeam oNe esportsを下してここまで上がってきた。その爆発力で下馬評をぜひとも覆してほしい。
グループC総評
SSGとRNGという、奇しくも前身となったチーム同士に深い因縁があるチーム同士が争うことになった。さらに、昨年は思うように結果が出せなかったものの、2017のMSIで決勝戦に進み雪辱に燃えるG2が加わる構図となっている。いずれのチームもあと一歩のところで国際大会制覇の栄冠を逃した苦い敗北を乗り越えて戦いに望んでいる点では共通しており、かなりの混戦が予想されるグループと言えるだろう。
グループD
LMS第1シード:Flash Wolves
2016春夏と2017春夏の4スプリットを連続優勝で飾り、堂々たる台湾/香港/マカオ地域王者として今回の世界大会に参加してきたのがFlash Wolvesだ。台湾/香港/マカオ地域が東南アジア地域から分離する以前より、地域の強豪の一角として地域の覇権を争い、国際大会でも注目すべき結果を残してきている。特にトップのMMD選手、ミッドのMaple選手、サポートのSwordArt選手は世界大会での経験も豊富であり、昨年以来盤石の体制を築いて世界大会へと再び戻ってきた。LMSの名を再び世界の頂点に刻むための準備は万端だ。
EU LCS第2シード:Misfits
2017シーズンのSpring Splitより昇格を果たし、トップリーグ参戦1年目にして世界大会へと乗り込んできた新鋭チームがMisfitsだ。昇格に際して、当時欧州有数の若きミッドレーナ―として才覚を見せながらもチームにフィットせず不遇の身にあったPower Of Evil選手をOrigenからサルベージし、その実力を引き出すことに成功した。今回が初の世界大会参加ということで厳しい戦いになることは否めないだろうが、だからこそ野心的な戦いで思わぬ結末を残してくれるかもしれない。世界大会で最も意外な結果を期待させてくれるのがグループステージなのだから。
NA LCS第1シード:Team SoloMid
プロシーン黎明期から北米にその名を刻み、以来世界大会の常連なのがこのTeam SoloMid(TSM)だ。とはいえここ数年の北米チームは結果が振るわず、昨年の世界大会ではグループステージ突破を賭けたタイブレークをSSGと戦ってあと一歩及ばず敗退という苦い経験をしている。その敗北から立ち直ったTSMは昨年と同じメンバーで再び世界の舞台に戻ってきた。北米の雄としての意地を見せられるのか、今年も試練の季節がやってきたといえるだろう。
LPL第3シード:Team WE(プレイイン勝ち上がり)
2017 Spring Splitを制覇しながら、Summer Playoffの不振から第3シードでの世界大会出場となったため、プレイインステージからの勝ち上がりを余儀なくされた中国チームがTeam WEだ。プレイインステージでは中盤以降の展開力においてその他地域との圧倒的な違いを見せつけ、危なげなく勝利を収めて「本番」へとやってきた。ここまでの前哨戦ほど簡単にはいかない戦いが待っているが、EDGにも比肩するその実力を披露する場をようやく得られた。そう、ここからが本番なのだ。
グループD総評
各リーグの強豪が並んでおり、かつ圧倒的な王者と呼べる実績を残せていないチームがそろった格好なのがこのグループDだ。TSM・FW・WEはいずれも世界大会出場経験はあるものの、ここ数年の間に目覚ましい結果を残せているわけではない。Misfitsは初出場ということで、まずは自分たちのゲームをするための入り方ができるかが焦点になりそうだ。昨年の欧州は初参加チームが多く苦戦しており、その二の舞は避けたいところである。とはいっても、かつて初戦を劇的な勝利で飾って一気に波に乗ることに成功したOrigenというチームの例もある。各チームともに、いかに自分たちの流れを作り出していけるかという神経戦が繰り広げられそうなグループである。
試合配信情報
グループステージが幕を開けるのは、プレイインステージの閉幕から6日後となる10月5日だ。10月第1・2週の木~日曜、計8日間を使ってダブルラウンドロビン(同チームの組み合わせが2回ある総当り戦)が行われ、16チームが8チームに絞られることとなる。日本時間では各日16時よりの開始となっており、公式日本語配信も全試合予定されている。LJL公式サイトでも随時配信スケジュールと結果が更新される。昨年のグループステージでは強豪地域のトップチームが意外なチームに負ける展開が見られ、全勝で抜けたチームはひとつもなかった。今年は一体どんな戦いが見られるだろうか。
[執筆協力:ユラガワ]