大手会社2K Gamesのメディアレビューへの干渉が騒動に。『NBA 2K18』に対する低評価レビューが“企業との議論”のうえで撤回

 

Take-Two Interactive傘下のゲーム会社大手2K Gamesによるメディアのレビューへの干渉が騒動になっている。NeoGAFユーザーNHale氏が、レビュー集積サイトOpencritic
『NBA 2K18』の欄から海外メディアThe Sixth Axisによる低評価レビューが消えていると報告したことが発端だ。

議論の上での撤回

The Sixth Axisは同ゲーム内に導入されている少額課金(マイクロトランザクション)を理由にあげ、『NBA 2K18』に対して10点満点中3点をつけていた。『NBA 2K18』はゲームのメディアからの評価は非常に高く、同Opencriticの平均点は84点にもおよぶ。そうしたなかで異彩を放つ点数をつけていたThe Sixth Axisのレビューだけが消えたことになる。The Sixth Axisは同レビューページにおいて、点数を撤回したこと、そして同作の発売元である2K Gamesとの話し合いをおこなったことを認めている。

[perfectpullquote align=”full” cite=”” link=”” color=”” class=”” size=””]2K Gamesと議論した結果、批判的な点数の声明を暫定的に削除しました。点数については、後日また掲載する予定です。私達の掲載した点数は、ゲームプレイ内に導入されている、VC(仮想貨幣)と少額課金に対する抗議することを目的とした、誤ったものでした。[/perfectpullquote]

掲載されていたレビューでは、ゲーム内容について認めていたが、課金コンテンツを抗議するうえで低い点数をつけていた。それはレビューとして誤っているので、後日正しい点数をつけるというのがThe Sixth Axisの主張だろう。それ自体には問題はないものの、もっとも大きな問題はそこに『NBA 2K18』の販売会社である2K Gamesとの議論が存在していたことだ。実際はどうかわからないものの、海外レビューはゲーム会社から独立した批評として人気を集めている。そこにゲーム会社が介入し点数が変更になるというのは、もしその指摘が真っ当だったとしても、レビュー自体の意義を損なわせかねない。NeoGAFには当該レビューをThe Sixth Axisに投稿したレビュアーが“降臨”し、その経緯を語っている。

[perfectpullquote align=”full” cite=”” link=”” color=”” class=”” size=””]レビューが掲載された後、僕自身は2Kとコンタクトをとっていない。ただ編集部が(2Kの)PRと連絡をとっていたみたいだ。僕が知っているのは、そのうち2Kが提起された問題について何か声明を出すということだけ。アップデートがあるんだろうね。僕自身の意見は変わらない。2Kはかなり怒っているのは明らかだ。[/perfectpullquote]

一連のレビュー見直し騒動が問題になっているのは、メーカーの介入によりレビューの意義が問われるということだけでなく、課金コンテンツを批判するThe Sixth Axisのレビューに賛同するユーザーが多いということもひとつの原因だ。

影を落とすマイクロトランザクション

『NBA 2K18』のゲームの定価は約60ドルも及んでおり、さらにゲーム内課金コンテンツが用意されている。主要なコンテンツとなるのは仮想貨幣。キャリアモードに導入されているキャッシュだ。同ゲームをクリアするためにこの仮想貨幣を集める必要があり、課金することでこのキャッシュを買うことができるという。キャッシュという形をとっているが、貨幣を集めるとレベルが上がるので、実質的には経験値に近い。ゲーム内で稼ぐことができるので、無理に課金する必要はなく、いわゆる時間をお金で買うという発想だろう。一方でKotakuの記者によると、20ドルのキャッシュをためるには数時間をかける必要があり、ゲーム中は常に残高を意識しなければいけないので、ついつい課金を意識してしまいという。記者はこうしたシステムに疑問を呈している。

こうしたゲーム内の少額課金は一般的にはゲーマーからはあまり歓迎されてはいない。フルプライスでゲームを購入したのちに、一般的なDLCのような買い切りコンテンツではなく、消費型のアイテムの課金コンテンツを導入するという取り組みには根強く反対する声がある。コスチュームを中心としたものは装飾型の少額課金はそれほど批判を受けていないが、ゲームプレイ自体に影響のあるものについては批判を受けやすい。『NBA 2K18』は定価60ドルのタイトルで、かつコスチューム課金を用意しており、そのうえで高レベルになると経験値がたまりにくい仕様のなかで経験値を購入できる課金形態を導入したことがユーザーの心象を悪くしたのだろう。そうした仕様を批判していたからこそThe Sixth Axisのレビューが賛同を得ていたわけだ。

つまり、この問題には2K Gamesが圧力ともとられなかねないレビューへの干渉をおこなったことと、レビューが多くのユーザーから賛同を得ていたこと。この2点が複雑に関係しているわけだ。一説では2K Gamesはすでにこうしたゲーム内課金システムの変更に着手しており、そうした変更が間近に迫っているがゆえにThe Sixth Axisの主張に待ったをかけたのではないかという推測もある。レビュアーの話と照らし合わせると、理に適った主張にも思える。しかしもしそうだとして、アップデートを待たずして干渉してしまったこと、そしてThe Sixth Axisが「2K Gamesと議論した」と公表してしまったのはかなりの悪手であると言わざるをえない。NeoGAFではレビューに対して干渉した2K Gamesへの批判だけでなく、The Sixth Axisはお金を(2K Gamesから)受け取って黙ることを決断したのではないかと指摘する声もあり、メーカーとメディア両方に対して疑いの目が向けられている。

メディアの評価とは対照的に、辛辣な言葉が並ぶMetacriticのユーザーレビュー

今回2K Gamesが行動を起こしたのには、レビュー集積型サイトの存在が関係していると思われる。これらのサイトは加重平均値システムを採用しているものの、ひとつ悪評レビューが点数の平均値を大きく下げることはままある。構造などに疑問を問う声はあるものの、いまだSteamストアにこうしたサイトの点数が掲載されているなど一定の価値を持つ。

抗議のためのレビューが点数を改めることは、平均値の精度を上げることになるが、メディアが介入したことで平均値が上がったという観点からはレビューおよび集積型サイトの意義自体が問われる。かといって投稿の気軽さがメリットでもデメリットでもあるUser Reviewもまた必ず信用に足るとは言い難い。点数だけでなく、内容を読んでいくことがひとつの解決策だろう。ややケースは異なるものの、Steamレビューもまた同様に課題を抱えており、これからの時代は読み手にも「レビューを読む」力が求められる時代になりそうだ。