『メトロイド』ファン、シリーズの存続を願い新作の「買い支え」を呼びかける #OperationSamusReturns 作戦を展開中


【UPDATE 2017/8/10 10:00】
今回のキャンペーンを呼びかけるMightyRengar氏は弊誌に対し「今回の作戦は購入を強制するものではなく、あくまで『メトロイド』フランチャイズへの関心を呼びかけるものだ」とコメント、さらに『メトロイドプライム フェデレーションフォース』の不買運動に関与していたのではないかという噂について「まったく事実ではない。」と否定している。

【原文 2017/8/1 17:33】
大好きなゲームタイトルがあるが、新作はなかなか出ない。そんな葛藤を抱くユーザーは少なくないだろう。『メトロイド』ファンは、今年のE3にて2本の新作が発表されるという幸運に見舞われた。特に『メトロイド サムスリターンズ』に関しては、リメイクではあるものの、13年ぶりの横スクロール型の『メトロイド』の新作となる。まさに歓喜の瞬間だったといえるだろう。しかし『メトロイド』ファンは「新作が発表されたことに喜ぶ」だけにとどまらなかった。この新作を次へとつなげるための“作戦”を開始したのだ。

オペレーション・サムスリターンズ

ファンが開始した作戦名は「#OperationSamusReturns」。この名前は、9月に発売されるリメイク作品『メトロイド サムスリターンズ』のタイトルからとったものだ。この作戦の発祥はチリのユーザーMightyRengar氏とされており、7月頭には作戦が“開始”されている。作戦の最終目的は「多くのユーザーに『メトロイド サムスリターンズ』を買ってもらい、フランチャイズ史上最高の300万本の売上に到達すること。」これまでのシリーズでもっとも売れた作品は『メトロイド プライム』の278万本。これを上回る過去最高の売上を記録すれば、新作がコンスタントに出るようになるだろう、そのために行動しようという考えだ。

メトロイドプライム

最終的な目的を果たすためにおこなわれているのは、ハッシュタグをつけてつぶやきを投稿し、コミュニティに活気があることをアピールすること。投稿の内容はそれほど問われず、ようするに『メトロイド』界隈が盛り上がっていると印象づけることが重要であるとされている。作戦内容自体はかわいらしいものであるが、その盛り上がりはなかなか侮れない。決して認知されているキャンペーンではないが、Twitter上ではコンスタントに#OperationSamusReturnsというハッシュタグのついた投稿が寄せられている。投稿の内容は、全く関連を感じさせない意味不明な風景写真から、子供が描いたであろうイラストまで多種多様なものがあり、微笑ましくもある。『メトロイド サムスリターンズ』の発売まで1か月以上残されているにもかかわらず、TwitterやYouTubeでこのタグがシェアされており、コミュニティは世界中の『メトロイド』ファンの声援を請けて、大きく膨らんでいっているのだ。

このキャンペーンには『メトロイドII RETURN OF SAMUS』を非公式にリメイクするというファンゲーム(のちの公開停止)『Another Metroid 2 Remake(以下、AM2R)』の開発者も参加しており、「#OperationSamusReturnsを展開する人々に敬意を表します。『メトロイド』への関心を喚起するというのは『AM2R』が目指してきた同じゴールでもあるんです。」と応援のメッセージをおくっている。

鍵を握るのは「売り上げ」

パブリッシャーに好きなゲームの新作を出すよう求めるべく、署名を集め、訴えかけるといったキャンペーンは時折見かけるが、ユーザーに対して「買い支え」を呼びかけるキャンペーンはあまり前例がない。通常会社が仕掛けていく販売促進活動を、ユーザー側からおこなうのはある種異例ともいえるだろう。こうした活動の方針の根本にはやはり「最終的には売上が鍵を握る」という思想があることがうかがえる。ビデオゲーム産業は、売れれば続編を出しやすくなり、売れなければ出しにくくなるという皮肉なほどシンプルな世界だ。近年の作品の売り上げが芳しくない『メトロイド』ファンだからこそ、そういった世界の“ルール”を念頭に置いているのだろう。

公式のプレイムービーより

ただ、一方でこうした活動を過激と見るファンも存在しており、逆にキャンペーンを展開することが敵を増やしフランチャイズを衰退させるのではないかと危惧する声がある。Redditユーザーabrinck氏は「過剰な販売促進は、友人をゲンナリさせるんじゃないかと思う。宗教の宣教師によく見られることだ。『メトロイド』ファンが白熱しすぎているというネガティブな視点も生まれつつあるように見える。」とキャンペーンに熱中しすぎるファンに警鐘を鳴らしている。確かに直接的ではないものの「買い支え」を呼びかけられた際に、不快感を抱くユーザーがいるだろう。実際にそうした“迷惑な勧誘”は存在しないが、そういったことに配慮する必要性が生まれるほどオペレーション・サムスリターンズの規模が拡大しつつある。

現実的に考えて、発売プラットフォームであるニンテンドー3DSの市場はゆるやかに終わりへと向かっており、『メトロイド』が任天堂のフランチャイズのなかでニッチともいわれるシリーズであることを考えると、新作が300万本の売り上げを達成するのは困難と言わざるをえない。しかし、プロデューサーの坂本賀勇氏が言及したように「メトロイドヴァニア」というジャンルが大きく盛り上がっていること、そしてファン待望である2Dメトロイドの久々のリリースであることを考えると、可能性は決してゼロではない。『メトロイド』ファンの熱い声援は売り上げという結果に結びつくのだろうか。ファンたちの愛するシリーズの存続をかけた死闘は、発売を前にしてすでに始まっているのだ。