『スプラトゥーン2』になり「イラスト投稿者」の環境はどう変化したか?描き手から見る進化と課題

広場の「イラスト」は『スプラトゥーン』を語るうえで欠かせない要素だ。ゲーム内の広場に投稿されるイラストは、賑やかな雰囲気を作り出すことに大きく貢献している。すでに発売後から広場ではさまざまなイラストがゲームをにぎわせているが、実際にイラストの描き手は前作から『スプラトゥーン2』の変化をどのように感じているのだろうか。

広場の「イラスト」は『スプラトゥーン』シリーズを語るうえで欠かせない重要な要素だ。ゲーム内の広場に投稿されるイラストは、世界観と一体化しており、賑やかな雰囲気を作り出すことに大きく貢献している。イラストなくして『スプラトゥーン』なしといっても過言ではないだろう。

前作『スプラトゥーン』のイラスト投稿は、任天堂の提供するSNSであるMiiverseのサービスのひとつとして機能していた。『スプラトゥーン2』ではこうしたイラスト投稿システムは独立している。すでに発売後から広場ではさまざまなイラストがゲームをにぎわせているが、実際にイラストの描き手は前作から『スプラトゥーン2』の変化をどのように感じているのだろうか。そこで弊誌は前作『スプラトゥーン』からイラスト投稿を続けるTwitterユーザー複数名に話をうかがった。特にわかりやすく解説していただいたとらねこ氏の話を中心に「イラスト投稿」の現状をお伝えしたい。なお、これらの意見はあくまで「一部のイラスト投稿者の声」であることを留意してほしい。

まず『スプラトゥーン2』のイラストを投稿するうえではニンテンドースイッチを用いる以外の手段は基本的にはない。デバイスを最大限使い、タッチパネルに絵を描かなければいけない。そうしたうえで、前作と比較において言及しなければいけないのは、ハードウェアの変化だ。

『スプラトゥーン』ではWii Uゲームパッドを使って絵を描くことが求められた。Wii Uゲームパッドのタッチパネルは抵抗膜方式とも表現される感圧式を採用している一方で、ニンテンドースイッチのタッチパネルは静電式となっている。「押し」を求められる感圧式に対し、「触る」だけでいい静電式は、より高度なタッチパネルとされている。しかし、イラスト投稿においては、この方式の変化は必ずしもよいことばかりではないようだ。

精度は高く、困難も多く

感圧式のメリットはそのシンプルさだ。押さなければ反応しないという仕組み。静電式は指を含めた対象物が画面にふれると反応する。とらねこ氏は、ある種感圧式に“最適化”され感度が高い静電式のニンテンドースイッチのタッチパネルにて、『スプラトゥーン』の「線」を描くのに苦労しているという。また線の強弱を考慮せず位置を読みこむ仕様にもまだ慣れていないと話す。くわえて、前作は画面全体がキャンバスであったことに対し『スプラトゥーン2』は中央部分がキャンバスとなる。中央部分に位置するメリットもあるが、中央部分以外にふれてもデバイスは反応するので線を描くのが難しくなるという。

一方で『スプラトゥーン2』になり向上した点としては、ドット打ちが容易になったという点が挙げられている。『スプラトゥーン2』ではボタンでも絵をかくことができる。それゆえにJoy-Conのボタンを使って1ピクセルの微調整ができるようになった。細かいピクセルの調整も直線引きもボタンならば楽。さらにはトーンが高速で貼れるようになったとのこと。ズーム機能が実装されたことにより細かい修正がおこないやすく、こちらの機能もドット打ちを助けるようだ。

そしてもっとも嬉しい機能としては、製作中のイラストを保存できるようになったことであるようだ。『スプラトゥーン』では一度キャンセルボタンを押してしまうとすべて消えてしまう仕様だったが、今作では描きかけのイラストであっても保存される仕様となっている。いつでも中断できていつでも再開できるというのは、描き手にとって嬉しいオプションだろう。

Miiverseというつながりなき世界

『スプラトゥーン』のイラストコミュニティについてと訊ねてみたところ、それぞれのユーザーは「やや弱い」というニュアンスで回答した。というのも、今作は広場のイラストは「イカす」を多く押された作品が残る一方で、そうした仕様が影響して新規作品に注目が集まりにくい傾向にある。さらにMiiverseがなくなってしまったがゆえに、イラストへの反応が見られなくなったというのが難点としてあげられている。人気のものにより注目が集まり、新しいものは見つけられにくい。そしてフィードバックの場所を失ったことによりイラスト投稿者にとってのモチベーションを得られる場所が減ってしまったというわけだ。ほかにも、前作では作品が投稿から1時間で広場に表示されるというメカニズムがあったものの、今作では表示される時間もバラバラであるがゆえに、コミュニティ内で時間とお題を決めて絵を描くという遊びもやりづらくなっているという。

筆者が思うに、イラストを描く時にどのような点に価値を置くかは描く人によって異なるものの、Miiverseの消失やシステムに変更によって、前作において重要な意味を持っていたつながりが薄れたことは、描き手にとってもユーザーにとっても寂しいのではないか。Twitterを中心としたSNSでのつながりは依然として存在するが、Miiverseはダイレクトにユーザーと描き手をつないでいただけに、代替のシステムをほしいところだろう。

『スプラトゥーン2』は全体的にパワーアップしており、その独自性をさらに強めている。さまざまな要素が大幅に進化しているがその一方で、課題を残す部分もある。イラスト投稿はそのひとつだ。ハードウェアの特有のクセについては、描き手の工夫や慣れ次第で今後向上していく余地が存在するが、コミュニティの面についてはユーザーだけではどうにもできない部分が多い。『スプラトゥーン2』のイラスト投稿コミュニティがさらに発展していくには、開発者側の歩み寄りが不可欠だ。これまで柔軟にユーザーの声に耳を傾けてきた『スプラトゥーン』開発者の対応に注目したい。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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