『ロックマンメーカー』『マリオ64メーカー』海外で生まれ続ける二次創作ゲーム、止まぬ声援が作品を生む


任天堂から『スーパーマリオメーカー』が発売されて以来、有名IPを使った「IP+メーカー」という二次創作ゲームが生まれ続けている。一昨年には『ゼルダメーカー』というファンメイド作品が公開され、任天堂による申し立てによって公開停止となったが、この事件後も「~メーカー」をリリースするファンの活動は止まっていない。

生まれ続ける二次創作ゲーム

ひとつめは、日本では「ロックマン」で知られる「Megaman」を使った『Mega Maker』。同作には『ロックマン』シリーズ初代からナンバリングタイトル「7」までのアセットが含まれており、敵は46種類、29種類のオブジェクト、12種類のボスなどを組み合わせて、自分だけの『ロックマン』を作ることができる。開発チームはWreckingPrograms氏を中心とした8名のスタッフにより構成。インターフェースはやや『スーパーマリオメーカー』に近く、直感的にステージを作成できる。マウスを使って配置をおこない、パッドでプレイすることを想定しているようだ。

https://www.youtube.com/watch?v=XNZk4ggJkcc

ふたつめは、『スーパーマリオ64メーカー』だ。同作はタイトルのとおり、オブジェクトや足場を設置し「スーパーマリオ64」のステージを自分で作るというもの。『Mega Maker』はアセットなどを再構成したソフトウェアとして配布されていることに対し、こちらは「.64」というエミュレーターのみで開ける拡張子で配布されており、非公式の改造に近い。『スーパーマリオ64』の改造文化は歴史が長く、自作ステージを遊ぶプレイ動画を見ることも少なくない。『スーパーマリオ64メーカー』ではテクスチャや挙動などをいくつか変更しつつも新たな罠などを追加しており、よりカジュアルにステージを作成できるようにする意図があるようだ。

こうした二次創作を見てあまりいい気がしないユーザーもいるのではないだろうか。この2作品については検証する余地もなく、オリジナルタイトルのアセットを使用していることは明らかだ。ゲームタイトルを使用するだけでなく、さらに根深い部分で各タイトルのIPの権利を侵害している。

『ゼルダメーカー』

またこうしたファンゲームタイトルにおいては、集金活動にも言及しなければいけないだろう。『Mega Maker』開発者は同作の配布前に、サーバー代をまかなうという名目でPatreonにて寄付を募っていた。一定の金額が集まった直後には「これ以上お金は必要がない」とPatreonの募集を取りやめている。『スーパーマリオ64メーカー』開発者は、現在はそれほど熱心ではないものの、過去にPatreonを使った支援を呼びかけていた。『ゼルダメーカー』の開発者は現在オリジナルゲームを制作しているが、「『ゼルダメーカー』を開発していた」という肩書でやはりPatreonにて募金を求めている。

声援がIP“侵害”作品を生む

こうした問題点は弊誌でも幾度も指摘してきたが、意外にも海外ではこれらの行為が周囲から糾弾されるような様子は見られない。たとえば『メトロイド2』をリメイクする『Another Metroid 2 Remake(以下、AM2R)』が任天堂の申し立てによって公開停止になった際、Eurogamerのコメント欄は「任天堂はこのチームを雇うべきだった」という批判に染まっている。先日「ポケモン」を『マインクラフト』内に導入する「Pixelmon」が公開停止を受けたと報じたが、この件についてもredditでは「IPを守る任天堂の立場は理解できるが、Modの公開停止はありえない。ポジティブよりもネガティブを生む愚かな判断だ。」というコメントがもっともupvoteされている。

これらのコメントは一例に過ぎない。IPが絡んだファンゲームについて報じるメディアやSNSのスレッドは公開停止を要請した企業への批判で埋め尽くされる。もちろん、コメント欄には企業の判断を支持するファンも存在するが、公開停止に理解を示すコメントを見つけるのは難しいといっていい。むしろ“声援”の方が圧倒的に多いのだ。

『AM2R』

『AM2R』の開発者が弊誌インタビューで述べていた「ファンゲームはオリジナルゲームを邪魔しない」というスタンスが浸透しているように見える。“ぶっこ抜き”やIPを使って二次創作ゲームを作るという行為が咎められず、それを堂々と宣言しPatreonで募金をしてもそれほど批判を受けない状態にある。実際に『ロックマンメーカー』『スーパーマリオ64メーカー』のトレイラーのコメント欄は批判は少なく、賞賛や公開停止を心配する声で埋まっている。

海外のゲームコミュニティには、こうした二次創作ゲームの誕生を抑止する機能はないと考えられる。そうした経緯を考えると、今後もファンゲームや二次創作は生まれ続けることが予想できる。IPを侵害するようなファンゲームを許容される背景には、PCゲームを発祥としてMod文化があるのか、国民性にあるのか、はっきりとした根拠は見つけづらい。ただこうした声援が海外で存在する限り、ファンゲームや二次創作をめぐる任天堂を中心とした国内企業の苦慮は続くだろう。