『Cities: Skylines』などParadoxタイトルがSteamサマーセールを前に告知なく値上げ。ユーザーの反発を受けてセール後にもとの価格へ
Paradox Interactive(以下、Paradox)が自社タイトルの多くをSteamにて告知なく値上げし、ユーザーから反発を受けている。こうした値上げは約1か月前の5月なかばから順次おこなわれていることが、ParadoxのフォーラムParadox Plazaにて報告されている。
告知されぬ値上げ
値上げが実施された国は日本を含めた20か国以上で、『Europa Universalis』『Hearts of Iron』『Magicka』シリーズ、『Stellaris』『Cities: Skylines』『Pillars of Eternity』など、Paradoxの誇る主力タイトルのほぼすべてが値上げされている。いずれの価格情報もSteamdbから該当タイトルを検索し、データベースの「Prices」の部分から確認できる。くわえて、こうした値上げはSteamだけなくGOGでも実施されているという。PCゲームのマーケットの中心ともいえる北米は対象国に含まれていないので、それほど大きく取り沙汰されてこなかったが、情報が集まりつつある今、ユーザーから強く問題視されている。
具体的には『Cities: Skylines』は2980円から3388円、『Stellaris』は3980円から4518円へと値上げされている。日本は10~20%程度の値上がりとなっているが、トルコやロシアでは50%以上価格が上昇しているタイトルが存在していると報告されている。問題となっているのは、こうした値上げが告知なしにおこなわれていることだ。通常Steamコミュニティでは早期アクセスタイトルなども含めて、値上げする際には告知などがおこなわれる。ファンベースを重視するParadoxほどのメガパブリッシャーが、このような告知をおこなわず値上げを敢行したというだけでも、ユーザーにとってのショックは大きい。特に1か月前からおこなわれているとはいえ、Steamサマーセールを前に急ぐように値上げしたことも非常に心証が悪い。
批判の声は、『Grand Theft Auto V』や『Two Worlds II』の時の同様に、Steamレビューという形で反映される。この問題はメディアに大きく取り上げられてはおらず、認知度が高くないので批判の母数は多くないものの、各タイトルのレビュー欄では、価格(price)ついて糾弾するレビューが散見される。
約1か月後の釈明
こうした批判を受け、ParadoxのCEOであるFredrik Wester氏は6月18日に公式フォーラムにて今回の騒動を釈明した。氏は、今回の値上げはグローバルに価格を統一するための行為であり、数年前から話し合っていたことであると語り、ほかの多くのパブリッシャーもやっていることであるとも説明。一方で、こうした値上げをする前にコミュニティについて経緯と意図について話さなかったことは大きな間違いであったと謝罪している。またコミュニティはParadoxの一部であり、Paradoxと企業の間で意見の相違があった時も、(ファンがParadoxの)誠実さと意図を疑わないように環境を作るべきであるとも述べ、意思疎通ができていなかったことを重ねて謝罪している。
また6月22日に、同じくWester氏は値上げされたタイトルの価格を元に戻すことを約束。ご存知のとおり、今はSteamサマーセールの真っ最中だ。セール中に価格を変更することは難しく、価格はサマーセール後である7月5日以降に戻るとのこと。Wester氏は現在のサマーセールでの販売分をふくめ、値上げ後の価格で購入したユーザーに対する返金を受け付けるほか、差額を超える価格のゲームをギフトするといった対応や、もしくは差額を倍額にして難民問題を扱う機関UNHCRに募金するといった計画を用意していくとのこと。
一見、Wester氏の対応と提案は筋が通っているように思えるが、気になるのは、Paradox側が今回の件について事実関係を整理していないことだ。どのリージョンにどのような値上げをおこなったかにはふれておらず「いくつかのマーケットでおこなってきた価格改定」とあいまいな表現をしている。まずどのような国においてどのようなタイトルを対象にどのような値上げを敢行したかという事実関係を、Paradox側が提示する必要があるのではないだろうか。
さらに今回の値上げは公式フォーラムにて1か月前から騒ぎになっていたという点も気になる。同フォーラムの値上げを指摘するスレッドにおいて5月19日には、フォーラムマネージャーであるTinyWiking氏はこの疑惑を「ゲームの価格を各国において平等にするため」だと認めている。この時点で、値上げの問題をParadox側は把握しているわけだ。この問題は今月6月17日のredditのスレッドにて大きく取り上げられ、それを読んだユーザーがWester氏のTwitterへこの件を訊ねたことで対応へとつながった背景がある。Wester氏は事前にこの件を把握しており、騒ぎが大きくなってから対応したのか、Twitterでの返信によってこの騒動を知ったのかは不明であるが、いずれにせよもっと素早い対応ができたのではないかと思わざるをえない。
This has been planned for some time so I agree to poor timing and poor communication, while "shitty" is a bit too general in its description
— Fredrik Wester 🚐 (@TheWesterFront) June 17, 2017
つまり、現在日本向けにSteamサマーセールで販売されているParadoxタイトルの価格は、のちに定価が下げられるということになる。同パブリッシャーは、歴史ゲームを中心として魅力的なタイトルが並んでいるが、購入に際しては価格の事情を考慮したほうがいいだろう。
一昨年にはSteamオータムセール直前に自社ゲームを値上げするパブリッシャーで出たことが話題を呼んだが、今回のParadoxはセール直前の価格改定によりユーザーからの信頼を失ってしまった。また、1か月前以上から発生していた騒動に対するParadoxの対応は遅く、意図的に値上げしたままSteamサマーセールへと突入したと思われても仕方ないだろう。なぜなら、コミュニティニュースも読まない、この騒動を知らないユーザーは、Steamセールで自分が購入したゲームがセールの前に値上げされていたことも知らないままで、返金要求することもないからだ。『Cities: Skylines』『Stellaris』などは今回最安値を更新しており、値上がりの影響を受けていないが、『Pillars of Eternity』などはそうしたあおりを受けている。
不満が集まる一方で、返金を含めた事後対応については、フォーラムのコメントや各Steamページでの報告にはサムズアップが寄せられいる。Wester氏のメッセージに対して納得しているファンも存在しているが、Paradoxが失ったものは少なくない。