調査会社NPD Groupは北米における4月のビデオゲームの売上データを、Venture Beatなど海外メディアを通じて発表した。ソフトの売上ランキングでは『マリオカート8 デラックス』の好調さが目につくが、特に注目してほしいのは2位に『ペルソナ5』がランクインしていることだ。
『ペルソナ5』の売上は、昨年リリースされた日本でも絶好調であったほか、今年4月4日にリリースされた北米版と欧州版も快調なスタートを切り、4月6日には出荷本数が全世界累計で150万本を突破していることも明かされていた。今回のNPD Groupのデータはそういった好調さを裏付けた形だ。『ファイナルファンタンジー』といった世界的に人気のあるタイトル以外の国産のRPGが、名だたるタイトルを押しのけて、北米の月間ゲームチャートの2位にランクインする状況は珍しい。『ペルソナ5』はMeta Scoreを例にあげて、海外で非常に高い評価を受けていることを報じたが、ゲームが高く評価されているほかにも、インターネット上のゲームコミュニティをうまく巻き込んでいる。
「語りたい」を引き出したコンテンツ
『ペルソナ5』は海外で発売されて以来、とにかくメディアに取り上げられている。傾向としてあげられるのは、単純なリリース情報やDLC情報だけでなく、ゲーム内容に踏み込んだメディア独自のコラムや企画が多い点だ。DualShockersは『ペルソナ5』にまつわる非公式の大規模アンケートをおこない、ゲームに対する満足度やこだわりのほか、キャラクターの人気投票まで実施する入れ込み方だ。同様に『ペルソナ5』への熱を隠そうとしていないのが、大手メディアのKotaku。『ペルソナ5』の恋愛関係の複雑さに関する考察記事や、ライターが独自にキャラクターをランク付けする記事を投稿している。EurogamerやDestructoidといったほかの大手メディアも『ペルソナ5』の記事を多く投稿している。
本作で特に語られているのは、やはりキャラクターとのキャラクターに付随するコープだろう。どのキャラクターが好きか、どのコープに思い入れがあるか、多様なキャラクターに対する自分のこだわりを聞いてほしい、そうした願望を引き出すほど魅力のあるキャラクターが『ペルソナ5』には多く存在している。こうしたキャラクターの人気はグッズ展開への関心にもつながっており、日本で発売される『ペルソナ5』はフィギュアのリリースもまた、海外メディアに報じられている。こうしたキャラクター人気は、副島成記氏が描くキャラクターデザイン、すなわち「外観」の魅力と、ゲーム内のキャラクターの「内面」の魅力が相乗して生まれたものだろう。
『ペルソナ5』は国産RPGではあるが、ほかのビッグタイトルのように、読み手にとって需要があるのだろう。ニュース記事や攻略記事、考察記事が頻繁に投稿されており、海外において『ペルソナ5』はクチコミが盛り上がっていることを示す、いわゆる“Buzz”状態にある。
一方で、こういった好意的な内容に反する批判的な意見が、けっして出ていないわけではない。たとえばEurogamerは、『ペルソナ5』のローカライズは日本語から英語への翻訳は、ぎこちなく正確さに欠いていると厳しく批判している。『ペルソナ5』のローカライズに不満を呈する声は、メディアだけでなくSNSを中心にプレイヤーからも伝えられている課題だ。Twitterでは、テキストの違和感を指摘するという画像付きの投稿が後を絶たない。
ほかにもアトラスUSAが『ペルソナ5』のゲーム実況の配信や投稿を全面的に禁止していたことも批判を受けていた。のちにアトラスUSAは方針を転換し、ゲーム内の日付11月19日までの配信もしくは投稿を公式に認めている。この問題は大々的に各メディアに取り上げられていた。国内でも同様の規制が敷かれているが、Twitchなどゲーム実況コミュニティの規模が日本よりも大きい欧米では、特に反発が強かったようだ。しかし、そういったネガティブな点も含めて、『ペルソナ5』は話題を生み出していった印象を受ける。
高まる世界人気
もともと『ペルソナ』シリーズは国内外で評価の高いタイトルであったが、『ペルソナ5』の注目度は段違いだ。Googleトレンドで「Persona」「Persona game」といったキーワードで調べると2017年4月を境に注目度が急激に上昇していることがわかる。『ペルソナ4』の北米版の発売日は2012年11月、欧州版は2月である点を意識してグラフを見ると、その勢いの違いがわかるだろう。ビジュアル面で大きく進化したことや、プラットフォームであるPlayStation 4が世界的にヒットしていること、そして前述したようにBuzz状態にあることなど、注目を集める理由は幅広く存在する。しかし、こうした人気を根本的に支えるのは、やはりゲームの完成度の高さだろう。
こうしたプレイヤーとメディアが生み出した熱量の後押しを受けて、『ペルソナ5』は一歩先のステージへとあがったといえる。『ペルソナ』ブランドは国内だけに留まるものではなくなりつつある。いまや『ペルソナ』シリーズの動向を、全世界のプレイヤーが注目している。