「Steam版を買ってください」Steam/Nintendo Switch向けアクション『Mr. Shifty』開発元の発言が波紋を呼ぶ、SNSでの対応が裏目に

見下ろし視点のアクションゲーム『Mr. Shifty』のNintendo Switch版に技術的な問題が発生している。問題とは、ゲームプレイ中にフレームレートが低下するというものであるが、こうした不具合よりも、「SNSでの対応」が大きな注目を集めてしまっている。

tinyBuildとTeam Shiftyは4月14日に『Mr. Shifty』をリリースした。『Mr. Shifty』は見下ろし視点アクションゲーム。プレイヤーは瞬間移動の能力を持つ「Mr. Shifty」となり、スパイ任務の遂行を目指す。PCに加えてNintendo Switch向けにリリースすることが発表されていたタイトルだ。

そのNintendo Switch版で技術的な問題が発生している。具体的な事象としては、フレームレートの低下だ。画面内に多くのキャラクターが存在し、さらに爆発エフェクトなどが発生した際にフレームレートが低下するというもの。通常、プレイしている際に頻繁に遭遇する問題ではないが、Mr. Shiftyは敵の攻撃を受けると一撃で死んでしまうがゆえに、一瞬の判断が勝負を分ける。こうしたゲームデザインによって、フレームレートの低下が発生した場合、死んでしまうことが批判を受けている。

複数の機種でリリースした際に、特定のハード上でだけフレームレートが低下するという事象はそう珍しいものではない。たとえマルチプラットフォーム化を念頭に置いたゲームエンジンを利用していたとしても、各ハードのスペックがまったく同じではない以上、動作は多少なりとも必ず異なるのだ。そこでリソースや納期の問題が発生し最適化が完了しないと、特にフレームレートで顕著な問題が起きることが多い。

たとえば今回の『Mr. Shifty』の件においては、同様の例が3Dアクションゲーム『Yooka-Laylee』においても起きていた。フレームレートを中心とした技術問題が発生し、発売前に批判を受けていたが、現在は開発側の取り組みによって徐々に解決されつつある。『Mr. Shifty』開発元のTeam Shiftyも同様に、フレームレート低下問題について修正していくと明言している。

こうした流れを見ると、そう騒ぎ立てる問題ではないように見える。おそらく、ゲーム以外の部分である「SNSでの対応」が注目を集めてしまったのだろう。Team ShiftyはTwitterにてユーザーに「フレームレート問題は解決されるのか」と問われた際に「できる限りやります。ハードはまだ初期段階にあり、ゼルダですら同様の問題が起こるのです」と答えた。

問いかけたユーザーは「ゼルダは君のゲームと違ってオープンワールドであるし、のちに改善された」と指摘すると「われわれは小さなチームです。ゲーム体験を損なわせないためにオブジェクトを減らすのではなく、フレームレートを落としました。Unityの改善を望みます。」と告げた。熱くなったユーザーは「金曜日にゲームを買おうと思っていたのに、フレームレートが落ちちゃうんじゃ買う気にならない」と返信したところ、「Steam版がありますよ。」と答えた。Nintendo Switch版の改善を望むユーザーに、Steam版を遊んでと薦める対応が怒りをかってしまったようだ。

https://twitter.com/teamshiftygames/status/851939541430657024

注目を集めている原因は、「Steam版がある」という発言だけではないだろう。Team Shiftyは、フレームレート低下について、他タイトルと同様に起こり得る問題であり、取捨選択の結果であり、Unityの問題であるという責任転嫁ともとれるような発言していたことも不評を買っている。

またTeam Shiftyは、Twitterで今回の問題を発生させる前に、redditのなかでも任天堂ユーザーが多く集まるr/nintendoにてユーザーからの質問に答えるセッションAMAを実施していた。このAMAでもNintendo Switch版の移植はパブリッシャー主導であり、開発機材も持っていないので関知していないと発言、技術問題に対する問いかけが多くなると途中で姿を消してしまった。こうしたSNS上での、誠実とはいえないユーザー対応が問題の大きくしてしまったというわけだ。

一連の発言はTwitterのみならず、さまざまなコミュニティやメディアに取り上げられ、話題を呼んだ。こうした状況を重くみたのか、パブリッシャーであるtinyBuildのCEO Alex Nichiporchik氏がredditのr/nintendoswitchにて、一連の騒動の経緯を説明した。『Mr. Shifty』の移植は時間に制限があり困難を極めたこと、早い時期に任天堂から開発機材が提供されハードウェアやツールには恵まれていたこと、FPSがやや低下することを認識していたが大きく低下するとは思っていなかったことなどを述べ、最後に「ユーザーを巻き込んで、こうした状況を生んでしまったことを謝罪します。言うべきでないことを言い、うまくコミュニケーションがとれなかったことが申し訳ないです。パッチは早急にリリースします。」と語っている。パブリッシャーのCEOが経緯を細かく説明したことにより、redditユーザーは理解と同情を示し、問題は収束した。

近年では、世界中でTwitterアカウントを利用した企業の広報活動がおこなわれている。Twitterの言動によっては企業イメージの向上につながることもあるが、Hello Gamesにおける『No Man’s Sky』の一件のように、対応を誤れば製品そのもののブランドイメージを低下させることもあるのだろう。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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