今月15日、EAは『Star Wars バトルフロント II』を正式発表した(関連記事)。前作にはなかったシングルプレイ・キャンペーンモードが収録され、帝国軍インフェルノ隊の指揮官アイデン・ヴェルシオを主人公とする知られざる物語が描かれる。そしてもちろん、おなじみのスターウォーズ・キャラクターでプレイする大規模なマルチプレイも健在だ。
そのマルチプレイに関連して、本作を開発するDICEのクリエイティブ・ディレクターBernd Diemer氏が、15日の発表の前におこなわれた海外メディアMashableとのインタビューの中で「本作ではシーズンパスを販売しない」と発言している。本作の予約受付はすでに始まっているが、確かにシーズンパスは販売されておらず、「Deluxe Edition」にも収録されていない。Diemer氏は前作『Star Wars バトルフロント』を振り返ってみて、このタイプのゲームにシーズンパスをリリースするのはベストなやり方ではないと感じたそうだ。
前作ではシーズンパスが発売され、それぞれ1400円ほどで発売された「デス・スター」や「ローグ・ワン」などの追加マップ・ゲームモードなどがカバーされていた。しかし、マップやゲームモードを有料で販売することにより、購入したプレイヤーとそうでないプレイヤーが生まれ、マッチングにも影響を及ぼす結果となった。Diemer氏はそういったコミュニティの分断は望まないと話しているため、「シーズンパスを販売しない」ということは「追加マップなどを有料で販売しない」と受け取れる。なお、このDiemer氏の発言についてEAは、まだ確定した計画ではないとしている。Diemer氏も、詳細についてはまだ話せないが、コミュニティを分断することなく、プレイヤーにより長く本作を楽しんでもらうための方法を準備しているとしている。
ゲームの発売後にマルチプレイマップなどが追加販売されるようになり、そしてそれらを割安に事前購入できるシーズンパスもいつしかおなじみとなったが、コミュニティの分断は常についてまわる問題だ。昨年発売されたEAの『Titanfall 2』では、まさにその問題に対応するためにシーズンパスを排し、すべての追加マップ・ゲームモードを無料配信している。有料で販売するのは機体のペイントなど装飾的なものに限っている。Ubisoftの『For Honor』では、ヒーローの追加や新マップへの早期アクセスなどが含まれたシーズンパスを販売しているが、追加マップ・ゲームモードなどについては同じく無料提供している。やはりマルチプレイのコミュニティとマップ・ゲームモードは密接に繋がっているため、少なくともこれらを全プレイヤーに提供することがコミュニティの分断への解決策となるようだ。
一方で、バンダイナムコの『鉄拳7』では、コミュニティ分断の問題と開発コストとの板ばさみが透けて見える。『鉄拳』プロジェクトディレクターの原田勝弘氏は海外メディアEDGEとの2012年のインタビューで、「キャラクターと技はチェスの駒のようなもので、格闘ゲームには不可欠なものです。それらを個別に販売することはしないでしょう」と語っていた。対戦格闘ゲームにおいてはキャラクターは前述の追加マップに近い存在で、実際『鉄拳』シリーズでは無料提供されてきた。しかし、今年6月発売予定の新作ではシーズンパスを導入しており、ゲームの発売後に配信予定の3つのDLCパックがカバーされる。それには新ゲームモードやプレイアブルゲストキャラクターが含まれる。また、予約特典のキャラクター「エリザ」も、予約しなかったプレイヤーのために後日販売予定だ。
原田氏は過去の作品において、予算の関係で発売からわずか2か月でそのアップデートとサポートを打ち切らざるをえなかったことがあったと振り返り、シーズンパスを販売することで向こう1年間の開発コストを確保することができると説明する。ただし、過去の『鉄拳』キャラクターを販売することはせず、有料DLCは特殊なコンテンツに限るとしている(言い換えると、ファンになじみがある過去キャラクターが追加される場合は無料で提供すると受け取れる)。新ゲームモードの詳細は不明だが、こちらも原田氏なりのファンへの配慮がある内容になるのだろう。
このように、コミュニティの分断はプレイヤーにとってもメーカーにとっても不幸でしかないが、無料提供されるコンテンツにも開発コストがかかっており、それをあらゆる形で回収しようと各メーカーが模索を続けているわけだ。『Star Wars バトルフロント II』ではどのような施策を打ち出すのか、EAは近く発表するとしている。