『Overwatch』チートツール販売元に850万ドルの損害賠償命令、著作権侵害が認められ原告の勝訴
カリフォルニア連邦地方裁判所は、Blizzard Entertainment(以下、Blizzard)がチートツール販売業者Bossland GmbH(以下、Bossland)を著作権侵害および不正競争の理由で提訴していた件について、原告の訴えを全面的に認める判決を下した。Blizzardの著作権に抵触する4万件を超えるチートツール販売に関して、被告に対して850万ドルにのぼる損害賠償と法的費用の全額支払いを命じている。加えて、これまでBosslandがBlizzard社のゲーム向けに販売してきたすべての不正外部ツールを、米国内で販売することを禁止した。これにより今回で2回目となる両社の法廷闘争は、原告側の勝訴で一旦は決着がついた形となる。
著作権侵害およびコミュニティへの悪影響を断罪
Bosslandは、主に『World of Warcraft』や『Hearthstone』『Heroes of the Storm』『Overwatch』といったBlizzard社のゲーム向けに、不正外部プログラムの開発を数多く手がけるドイツのソフトウェア開発会社。中でも『Overwatch』で障害物の向こう側にいるプレイヤーの位置や残り体力といった、通常の仕様では見えない情報を可視化できるチートツール「Watchover Tyrant」は、同作におけるチート行為が短期間で広く蔓延する要因になったと言われている。『Overwatch』が正式リリースを迎えた当初の段階で数千人のプレイヤーによる使用が報告された。
これを受けてBlizzardは昨年7月、複数のケースにおける著作権侵害、不正競争、およびデジタル・ミレニアム著作権法に基づく迂回商行為活動の禁止条項に抵触するとして、カリフォルニア連邦地方裁判所に訴訟を申し立てた。しかし、Bossland側は米国内の裁判所に司法権はないと主張。音信不通になったまま原告の呼びかけに応じる姿勢がなかったことから、先月Blizzardはついに被告不在の欠席裁判へ踏み切った。米国内のユーザーへ向けた4万件を超えるチートツール販売に対して、850万ドルにのぼる損害賠償を求めている。
先日、カリフォルニア連邦地方裁判所は原告の訴えを全面的に認め、Blizzardの著作権に抵触する4万2818件のチートツール販売に関して、被告に対して計856万3600ドルの法的賠償と、17万4872ドルの法的費用の支払いを命じた。加えて、Blizzard社の全タイトル向けに開発された不正外部ツール「Honorbuddy」「Demonbuddy」「Stormbuddy」「Hearthbuddy」「Watchover Tyrant」を米国内で販売することを禁止した。著作権に関する情報を扱う海外メディアTorrentFreakによると、裁判所は判決(リンク先はPDF)の中で、被告がリバースエンジニアリングによってBlizzardの不正防止技術「Warden」をバイパスしたと説明。ゲームプログラムの改ざんをユーザーに促した事実に疑う余地はないとしている。
Blizzardはコミュニティ運営においてフェアプレイの理念を前面に掲げており、チートツールにみなされる外部プログラムの使用が判明したユーザーを、文字どおり永久追放に処するという不正行為への対応方針を徹底している。これまでBosslandによる不正ツールの検出にも莫大な費用を投じてきたとされる。この点についても裁判所は言及しており、被告による明らかな営業妨害を断罪した。また、チート行為の蔓延によってゲーム環境を台無しにされたユーザーの不満が、プレイ人口の減少やBlizzardに対する悪評につながったことについても異論はないとしている。これにより両社の法廷闘争に一応の決着がついた形となるが、決してコミュニティからチート行為がなくなるわけではないだろう。